ピアノの黒鍵と白鍵のシンプルな表紙ですが、内容はなんとも複雑な構成で、驚愕のラストが待ち受けていました。
本書は、ミステリーの範疇だと思いますが、間違いなく音楽家<シューマン>の音楽論もしくはシューマン論かと思わせる展開が続き、読み終った段階で入念な伏線としての構成に驚かされました。
不幸な事故により中指を失った天才ピアニスト<永嶺修人>が、海外でシューマンの協奏曲を弾いていたとの手紙を受け取る主人公<里橋優>の<修人>との思い出が語られていき、読み手はシューマンに傾倒していた<修人>の音楽背景が理解しながら、中指がどうなったかの大きな疑問を持ちながら読み進めていきますが、事件の確執に触れることなくシューマン論が展開されていきます。
7割ほど読み進んだ頃、30年前の高校生時代に起こったプールでの女子高生の殺人事件が語られ、ようやくミステリーらしく展開していくのですが、やはり根底には<修人>との関係が綴られ、二転三転の混沌とした結末を迎えます。
ネタバレになりますので細かいことは書けませんが、「小説らしい小説」を読んだとの印象は残りますが、音楽評論的な細かい描写は少しばかりミステリー作品としてはくどさを感じさせ、好き嫌いが分かれるかもしれません。
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