昭和7年の東京、上流階級の<花村家>の令嬢<英子>の目線を中心に据え、当時としては珍しい彼女の付き人としての女性運転手<ベッキー>(こと別宮みつ子)を推理探偵役に据えた<ベッキー>シリーズは、『街の灯』 に始まり、『玻瑠の天』 に続く3巻目の本書で完結です。
本書は三篇からの構成ですが、最後の章のタイトルともなっている『鷺と雪』で、著者は第141回直木賞(2009年上半期)を受賞しています。
第1章の『不在の父』は、爵位の序列が<公・候・伯・子・男>とあり、そのような身分社会に耐え切れなくなった子爵の市井にて自由な精神での生活に接して、「わたし<英子>」は驚かされます。
第2章の『獅子と地下鉄』は、受験を控えた良家の小学生<巧>が夜の行動をあやしまれ補導されてしまいますが、<巧>は何も喋らず「わたし<英子>」はことの真相を探るために少年の行動を調べていきます。
第3章の『鷺と雪』でもって、「わたし<英子>」と<ベッキー>の3年半にわたる物語の〆となりますが、買ったばかりのカメラに、なぜか台湾に出張している<千枝子>の婚約者が自分の背後に写っている謎解きを依頼されてしまいます。
最終章では能の演目である「鷺」を伏線に、軍国主義に向かう暗雲とした雰囲気を匂わし、「二・二六事件」を絡め、3巻を通して見事に昭和初期の時代を検証しています。
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