『玻瑠の家』松本寛大(講談社)
Mar
17
小説の舞台は日本ではなく、ボストン郊外のコーバンという町を設定、イギリスから清教徒が移住した300年以上前にさかのぼる事件が伏線として描かれています。
3ヶ月前に交通事故に遭った11歳の少年<コーディー>は、事故の後遺症で人の顔が認識できない「相貌失認症」になり、コバーンの資産家であった<リリブリッジ>家の放置され朽ち果てた屋敷に忍び込みますが、そこで死体を焼く犯人を目撃してしまいます。
事件を担当したコーバン市警の<パロット>警部は、スタッブズ大学で「目撃証言の心理的研究」を行っている日本人の<トーマ>に助力を求め、<コーディー>との会話を通じて事件の真相に迫っていきます。
<リリブリッジ>家にまつわる300年前の魔女裁判、70年前に起こった列車事故で妻<マリオン>は失明、義理の妹とその娘が死亡し、一卵性双生児の弟<クロフォード>の射殺事件、40年前のヒッピーが屋敷内でLSDを過剰摂取で死亡した事件、そして今回の事件を絡めながら、心理学に関する博識な知識を駆使し、重厚な作品が楽しめました。