今年の読書(60)『誤断』堂場瞬一(中公文庫)
Dec
7
業績不振に陥っている長原製薬は現在、外資系のユーロ・ヘルスと合併に向けて協議中であり、認知症予防の新薬開発のための資金援助を受けられるかどうかという大事な時期を迎えており、安城は3件が薬と因果関係のない「事故」であることを警察に悟られることなく確認してくるよう命じられます。
<安城>は、40年前に長原製薬の創業の地・畑井市で隠蔽したある薬害事件について思いを巡らせ、あの時のように上手く隠蔽できればいいがと考えていた。かつて畑井を大型台風が襲い、破損した長原製薬の廃液タンクから漏出した廃液が海に流出、多くの漁民が体の変調を訴え死亡者も出ましたが、隠ぺい工作に成功して副社長に上り詰めました。
北海道と大阪の件は警察が事故と判断していたため問題ありませんでしたが、東京の件は遺族である妻が夫が服用していたD07との関連を疑っていたものの、高額な見舞金という名の口止め料を支払うことで決着します。自社製品が原因で人が亡くなり、その隠蔽に関わってしまい心に葛藤を抱えた<槙田>は、大学の先輩で個人的に親交を深めていた長原製薬の顧問弁護士<高藤>に真実を話します。
間もなくして、畑井で代々医院を営んできた医師の<真島康二>が長原製薬の東京本社を訪れ、40年前に子供だった人々が重度の関節痛や手足のしびれによる歩行障害を発症しており、その補償を求める旨を伝える。D07の件で上手く立ち回った能力を買われた<槙田>は、再び安城の密命を受けて畑井へと向かいます。
昨今企業のモラルを問われるような不祥事が相次いでいますが、製薬会社を舞台に薬害に対する社会問題を主題に企業人としての<槙田>の行動に共感を覚えるとともに企業とは何かを問う内容でした。
Posted at 2017-12-07 17:27
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Posted at 2017-12-07 17:31
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