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- 今年の読書(59)『一朝の夢』梶よう子(文春文庫)
北町奉行所の同心<中根興三郎>は、閑職の姓名掛りを務め、趣味である 「変化朝顔」 の育種に生きがいを見出し、いつかは黄色い朝顔を作り出すことを夢見ている男です。
時代は、井伊大老と水戸徳川家の確執や、尊皇攘夷の機運が高まり不穏ですが、<中根>には関係ないことでした。
「変化朝顔」の品評会などのつながりで、<飯島直孝>を通じ<宗観>という茶人と知り合ったことから、<中根>は思いもよらぬ形で江戸幕府の政情にかかわっていくことになります。
文化期から天保期にかけて江戸で流行した「変化朝顔」の話を縦糸に、開国にまつわる世情を絡めた壮大な時代構成は、なるほど「第15回松本清張賞受賞作品(2008年)」だと納得ができる密度の高さでした。
ちなみにタイトルの「一朝の夢」は一日花としての 「朝顔」 の別名であり、「変化朝顔」については、<朝井まかて>の 『ぬけまいる』 や<田牧大和>の 『花合せ 濱次お役者双六』 などにも面白く登場しています。
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