横尾忠則大公開制作劇場@横尾忠則現代美術館
Jan
20
観客の前で作品をつくる公開制作は、<横尾忠則>がしばしば行う制作方法の一つです。人に見られることでかえって余計な自我やこだわりが消え、無心状態で制作することができるという<横尾。にとって、公開制作は「描く」という肉体的行為を再認識するための格好の手段でした。
本展では、<横尾。がこれまでに公開制作で描いてきた作品を、映像・写真などの資料とともに紹介されています。1980年代、画家へと転向したもののアトリエのなかった<横尾。が、制作できる場所を求めてやむなくとった手段が公開制作でした。
しかし、人前で描くことで逆に迷いを捨てて集中できるという実感を得た、横尾>は、アトリエが完成した後も様々な場所で公開制作の機会を持つようになります。そして2000年、横尾の代表的シリーズとなる 「Y字路」 が描き始められると、以降、公開制作において「Y字路」は一つのフォーマットとして展開し、各地の美術館で開催される個展にあわせて、その土地にちなんだ「ご当地Y字路」が次々と生み出されていきました。そこではまた、<横尾>自身が仮装して制作するPCPPP(Public Costume Play Performance Painting)も行われるようになります。
<横尾>は公開制作を演劇にたとえています。舞台の上で起こる事件=創造の現場を固唾をのんで見つめる観客と、その熱気やエネルギーを創造=事件に利用する横尾。その間には、即興的でスリリングな共犯関係が成り立っているといえるでしょう。これら事件の現場を検証することで、横尾の制作に対する姿勢や創造のプロセス、その変遷が辿れる絶好の機会です。