『イン ザ クローゼット ~blog中毒~』藤原亜姫
Dec
15
田舎から15歳のときに上京してきた16歳の「アタシ」は、無教養・中卒で容姿やスタイルにもコンプレックスがあり、都会に住む富裕層の若くて綺麗な女性に憧れています。ふだんは美容師として薄給で働いていますが、あこがれの綺麗なお嬢様になるために整形手術を受けることを決意し、その費用を工面するために「レイナ」と名乗って風俗店(ホテトル)に勤務するようになります。
それと並行して「インザクローゼット」という名前のブログを開き、その中で自分の理想像であるお嬢様の「レイナ」を演じるようになり、美容院によく訪れる客である社長令嬢「中川さん」の所持品である高級なブランド品の写真をこっそり撮ってブログにアップロードするなどして必死にお嬢様を装う反面、ネット上では自作自演・荒らしをしたり、風俗店の同僚の奈美など気に入らない人の悪口を匿名で書き込んだりを繰り返します。
自身の働く美容院にこっそり放火して得た休みの間に整形手術を受けるなどしながら、「レイナ」はブログ上で知り合ったキャバクラ嬢の「マユマユ」と知り合い、それがきっかけで彼女の恋人であるホストの「ナルミ」に出会います。「ナルミ」に惚れた「レイナ」は「マユマユ」と決別し、やはりブログ上で知り合ったなお姉の家で生活するようになります。薬物依存になりながらも「ナルミ」と交際するようになりますが、彼の客であるAV女優の「舞城アリス」に嫉妬し、彼女をストーキング、その際に、彼女の住むマンションの隣人である「オカマ(マダム)」と出会い、その人となりに感銘を受けます。
そんな中「ナルミ」は交通事故にあって意識不明の重態となり、店の売掛金700万円の負債を抱え込みます。「レイナ」は、ブログで風俗店に勤務していることを暴露されるなど精神的に追い込まれながらも、金を稼いで「ナルミ」の借金を返すことを決意します。しかし、「なお姉」は「ナルミ」に「レイナ」の正体や彼女がこれまでついてきた嘘を明かし、退院した「ナルミ」を「レイナ」から奪います。「レイナ」は失意の中、これまでの嘘や悪行を懺悔した動画を撮影してブログにアップロードし、そのあと焼身自殺を遂げるのでした。
顔の見えないSNS社会ならではの事件を、ケイタイ小説として発表したことが、意味深で問題定義の意義ある 作品でした。