今年の読書(84)『開署準備室 巡査長・野路明良』松島智左(祥伝社文庫)
Oct
15
主人公の巡査長「野路明良」は、姫野署開署に向け警察署内の最終確認を行なう臨時部署「開署準備室」の総務担当に配属されて着任します。
「野路明良」は。全国大会で優勝するほどの白バイ隊のエースでしたが、同僚の運転する自動車事故で右手の指に後遺症が残り白バイから離れ異動となり、自棄になっていました。
一方、信大山にて頭蓋骨に損傷がある白骨死体が見つかり、遺留品から12年前に発生した5億円強奪事件の関係者だと判明、現金は不明のままで、くしくもその事件で服役していた「河島葵・準」兄妹が出所したばかりで、再捜査が始まります。
新庁舎の準備も終盤となり、突如、不審事が度重なります。発注外の大型什器の搬入、防犯カメラの誤作動、さらには「野路明良」の警察学校時代の恩師「山部佑」が襲われる事件が起きてしまいます。
著者自身、女性の白バイ隊員という経歴が生かされた、白バイのち密な描写、後半に右手の不自由な「野路明良」のスリリングな走行の描写という緊迫感あふれた行動は、〈警察官としての矜持〉とその後の展開と共に読みごたえがありました。
主人公「野路明良」をはじめ「山部佑」教官の元教え子の妻「山部礼美」、白バイ隊の先輩「木祖川守」など個性ある脇役もよく、副題に〈巡査長・野路明良〉とありますので、シリーズ化されそうで、今後も楽しみです。