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- 今年の読書(35)『俺たちは神じゃない』中山佑次郎(新潮文庫)
医者を著者とする小説は多々ありますが、現実的な記述が多く興味ある分野です。本書『俺たちは神じゃない』は文庫書下ろしとして2020年6月1日にはつばいされていますが、消化器外科医として執刀する立場だけにリアル感ある手術の描写が楽しめました。
主人公40歳独身の「剣崎啓介」は、600床の敬愛会麻布中央病院に腕利きとして知られる中堅外科医です。そんな彼が頼りにするのが「松島直武」です。生真面目な「剣崎」と陽気な関西人の「松島」。ふたりはオペで絶妙な呼吸をみせます。
タイトルとバディーの組み合わせで、アメリカ映画『俺たちは天使じゃない』(1989年・監督:ニール・ジョーダン)のオマージュを意識されているのかもしれません。
著者は、連作短編の本書を通じて外科医の医者としての本質を問うています。文中の「患者を救い傷つき、患者を失い傷つく」という短い言葉が重く心に響きました。
院長から国会議員の大腸癌切除を依頼された「剣崎」は、「松島」を助手に得意なロボット「HOKUSAI」で手術を進めますが、その行く手にはある危機が待ち受けていました。現役外科医が総合病院という組織を背景に、日夜起こるドラマをリアルに描いています。
今後シリーズ化されるのかは不明ですが、麻酔科医の「瀧川京子」のキャクターも気になる存在でした。
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