今年の読書(15)『帆神』玉岡かおる(新潮社)
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著者<玉岡かおる>は、兵庫県三木市生まれということで、大正から昭和初期にかけて日本一の年商を誇った商社・鈴木商店を、女主人<鈴木よね>の視点で描き織田作之助賞を受賞した『お家さん』、皇室御用達百貨店「高倉屋」の礎を築いた女主人の人生を追った『花になるらん―明治おんな繁盛記―』など、関西発祥の企業を題材にした経済歴史小説や阪神間の話題や出来事の著作『神戸ハートブレイク・ストリート』や『タカラジェンヌの太平洋戦争』などがあり、兵庫県・淡路島在住の<湊かなえ>さんと同様に気になる女性作家の一人です。
本書『帆神』は、2021年8月26日に単行本として(新潮社)より刊行され、2023年11月29日に文庫本として発売されています。
江戸後期、姫路藩・播州高砂の漁師から身を起こし、兵庫津で廻船問屋を営む海商にまで上り詰めた「松右衛門」は、千石船の弱点である帆に目を付けます。帆の改良で船が速くなれば流通が盛んになり、民の生活が潤います。「松右衛門」は試行錯誤の末、板のように強く、羽のように軽い「松右衛門帆」を発明します。
仕事とは金のためでなく、世のためにするものだの信念のもと、現在の神戸市兵庫区で廻船問屋として北前船を駆る一大海商に成長する物語です。その船を駆って蝦夷に行き、ロシアから領土を守るために、択捉島の埠頭や箱館のドックを築造します。
「新巻鮭」を発明したのも「松右衛門」だと言われています。日本海運の革命児「工楽松右衛門」を描いた痛快な物語でした。