今年の読書(47)『警察医の戒律(コード)』直島翔(ハルキ文庫)
Sep
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司法解剖の世界を描いた、<小松亜由美>の『イシュタムの手』(小学館文庫)がありましたが、本書『警察医の戒律(コード)』も司法解剖の法医学者が主人公の物語が3篇収録されており、2022年9月に刊行、2924年8月18日に文庫本が発売されています。
主人公「幕旗治郎」は、犯罪都市ニューヨークの検視局で 11年間キャリアを積んだ法医学者がですが、神奈川県警と警察医契約を結び、 横浜に戻り開業医だった父の診療所を法医学研究所として仕事を始めます。 医師が最期を確認する病死以外は〈異状死〉と呼ばれ、欧米では異状死の5割 を解剖していますが、 国内に法医学者の絶対数が少ないうえ、犯罪捜査のための解剖を行う公的機関が 常設されていないために、日本の解剖率は2割に届いていません。
重大犯罪が見逃されていないか?死者と語り、どこまでも真実に執着する警察医である法医学者として「幕旗」は新人助手の「小池一樹」と〈異常死〉事件を解明していきます。
護岸に流れ着いたミイラ化された女性の事件、トランスジェンダーの殺人事件、娘の殺人事件に取りつかれた大学教授の横浜スタジアムにての落下事故死など、多様化する性を取り巻く犯罪に立ち向かう横浜警察署の新部門の「ジェンダー班」の刑事たちと協力して、 死に隠れた謎を解き明かしていきます。
同じ司法解剖の世界を描いていますが、『イシュタムの手』よりも事件性が高いミステリー仕立ての構成で、こちらも面白く読み終えました。