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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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雨のレヴェランス

thread
縦をなぞる雨
風なき空の下では
水たまりにぽつんぽつん

純粋の音を響かせながら
お茶目に踊っています

波紋は続き
時計より楽しく時を刻みます

いつか君が
両手をひろげていた
バレエのレヴェランスを
想い出していました

さよならの挨拶だったのですね
君は最後まで微笑んで

雨の中
すっと手を差し出すと
手のひらで君は踊りました

ありがとうを
ぜひ素敵な君へ

#詩

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汚れた花

thread
バン
バンバン

迂闊に咲いた花なら
笑えばいいだろ

バン
バンバン
負け犬の花びらなら
よだれのかわりに
血を流すだけさ

バン
バンバン

へっへっ
バンバン

エゲツなく絡まった花なら
笑えばいいだろ

バン
バンバン
孤独を愛せる本物の花
砕け散る
粉々がお似合いなのさ

バン
バンバン

へっへっ
バンバン

クギャーアアアアアー

#詩

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福利厚生なき時代

thread
定年して嘱託で仕事を続け
健康であれば保障がイマイチでも
収入源は枯渇はしないだろう
それも仕事があればの話だ

危うい未来はもう現実になって
日本はヤバイと呑気に言ってはいられない

自分の身を考えると
身体の麻痺が年々酷くなる
そして死ぬまで頑張ろう
捨て身な感じになって

俺の腕が足が動けなくなり
使いものにならなくなったら
楢山節考みたいに
山に捨ててもらって生命保険が
家族の未来へ繋いでくれたら

本気でそんなことを思ったりする

家族がどうにか生きていくのに
代償があるのならば喜んで行くよ
山だろうが川だろうが海だろうが

#詩

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勝手に価値観を押しつけんなよ

thread
進めと言われ
止まりたくなる心情

俺はずっと批判的精神
うまく生きれないのは本望
それが全てであるように納得すれば

後悔しているんだろ

って、すぐ奴らが反応する

一体何なんだ
ゴミを漁るカラスがカーカーと
鳴いているだけみたいな眼で
ひとを見ないでくれよ

はいはい、と流れて行くのは
俺にとってはクソ人生なんだよ

世間からしたら下手くそで
意味のない人生かもしれないが
価値観なんてそれぞれだろ
うるせえんだよ

ああ、はち切れてえなあ
ああ、もっと馬鹿やりてえな
ああ、壊れてえ

俺は途切れやしねえ
絶対にノーにイエスは言わねえ
たった一度の人生じゃないか

なあ、わかるだろ、あんた

#詩

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灰色に咲くを聴く

thread
私の気分に合わせているのか
私がそんな気分にされているのか
飛び出そうとすれば抑えられそうな
雲の切れ目も見えない浸透した空

今日も島崎藤村の本を取り出し
開かずに詩をしたため出す
窓からは流れるひと
液晶画面からは郷土ニュース
一瞬にして音のない世界が広がる

感化されやすい詩の世界
雰囲気に色を染めてゆく
灰色の空気に灰色の空
灰色の図書館では
灰色のひとたちが本の音を聴く

そろそろ本を開いてみる




初恋


まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり


やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり


わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな


林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ




薄紅を聴く
遥かな恋は色づき
灰色はいとも容易く慄いて

#詩

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暗闇

thread
俺はどうやらバスに乗って
何処かへ行こうとしている
乗客は顔のない連中ばかり

でも子どもの頃のように
怖くなったりはしない

得体の知れない怖さも薄まり
自分の存在ほど怖くない
歳を重ねると良いこともある
開き直りの哲学だ

狭いシート
外の景色は暗闇
面白くもなんともない
俺の構成力が乏しいのか
それとも揺ら揺らしたいだけなのか

到着したらしい
運転手は目的地を知っていたのか
もうバスは動かないらしい
乗車していた連中がぞろぞろと降りだし
俺もとりあえず降りる

上着をシートに忘れ
運転手に忘れ物があることを告げ
バスに再び乗ろうとする

乗れない
バスに乗れなかった

もうバスは暗闇に吸い込まれ
姿も形もない
しかし運転手は俺を見ている
顔もないのにどうして

乗車していた連中が連なり
何処かへ行こうとして列をなす
俺も最後尾につき歩き出す

言葉もなく覇気もなく
ただだらだらと歩いている

この先の逆らえない定めに
自分から進んでいるのか
わからないが歩いている

それにしてもなんて寒いんだ
肩がとても寒い
あの上着があれば
こんな思いははしなかったのに

進む先は暗闇の暗闇
何も見えないはずなのに
見えている暗闇がある

そこに進んでいる
寒さの向こうにあろう目的地へ

#詩

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今晩はラーメン

thread
ラーメンは時間との闘い
家庭で食べる自体が
邪道かもしれない
でも今晩はラーメンと餃子だ

お湯を沸かし生麺を入れる
具は先に炒めて準備万全
汁ももちろん出汁から作って

フライパンに餃子を入れ
水をさし蓋をする

ラーメンの器にニンニクを少々
つゆを入れたところで
「ラーメンだぞ、早く集まれ」
と声をかける

よーし
麺が上がる

ちゃっちゃさっさ
麺のお湯を切り
器に波打たせ泳がし
汁に染み込ませ具を盛る

おお
みんな運んでくれ

おっと
餃子が焼けていない
台所でしばし待機

ラーメンのすする音が
聞こえてくれば幸せを感じ
時間との闘いも終わりがくる

へい
餃子のお待ち
食いねえ食いねえ

んっ
父ちゃんのラーメンのびてるなあ
まあいいか

うめえなあラーメン

#詩

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冬の備蓄

thread
寒空の下
僕らの夢は凹んじゃいない

どんなに冷たくとも
あきらめない思いは冬を越え
春に咲かせる希望の種
その時を待っている

寒空の下
僕らの夢は凹んじゃいない

忍び忍び膨らます想像
孤独を肥やしに
厳しさからの喜び
今の時を楽しんでいる

寒空の下
僕らの夢は凹んじゃいない

濃縮された可能性
誰もが生まれ持って
でかいモノを育み殻の中
勇む時にゾクゾクしている


#詩

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ロックンロール

thread
輝きたい時があるのさ
年中じゃないけど
ここにいるぜ
そんな勢いで飛び出し

ロックンロールがないと
張り合いがでねえ
そんな自分を思い出し
やってやろうじゃないか

とやかく言う奴なんて
気になんかしていられない
笑われたら笑い返し
自分を駄目にしないぜ

さあ、行こうじゃないか
晴れ舞台が待っているのさ
俺ってそういう人間だろ
なあ、自分よ

勘違いじゃない
必然のロックンロールだよ
やらなきゃ俺じゃない
声高らかに叫んでやるぜ

#詩

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肉じゃが

thread
玉ねぎ、人参を切る

胡麻油で炒めてみた
入れすぎたのか
部屋中に胡麻油の匂いが

牛肉が白くなり
砂糖、酒、醤油、みりん
味がよくわからない
砂糖と醤油を足す

お湯を入れ
ジャガイモを入れ強火、蓋

でも怖い
焦げないだろうか

気になって蓋を開け
混ぜてみる

やはり僕には度胸がない
味を何度も確認したり
蓋を開けてしまう

なんだかんだで
しらたきを入れ忘れ
仕上がる直前に入れる

そして出来上がった肉じゃがを
器に移して食卓へだす

あれっ
このしらたきずいぶん長いよ

そう言われ気づく
洗ってから切るのを忘れていた

ご愛嬌、ご愛嬌

料理も経験とセンスなのかなあ
美味しい肉じゃが
このハードルはなかなか高い

いつしか納得いく
肉じゃが出来たのなら
泣いてしまうかもしれない

肉じゃが
こりゃ奥深いぞ
僕の夢がひとつふえた

美味しい肉じゃがを完成させ
涙して食べるという
そんな夢もいいじゃないか

#詩

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