キヲク。
Apr
20
君の優しさに気付かずに、何を見てたのだろう。
振り向けばいつもそこに、君がいてくれるような気がした。
失ってからやっと気づく、それはかけがえのないもの―。
単なる、失恋の曲なのかもしれない。
でも私には、別の意味に聴こえて、涙が止まらなかった。
高校の頃まで、ずっと近所に住んでいたのに、
小学校に上がってからは一緒に遊ばなくなった、一つ下の女の子。
幼稚園の頃までは、たっくさん遊んだ。
今では、アスファルトになってしまった、アパートの駐車場。
昔は本当に、砂場みたいだったから。
スコップとかを持ちよって、ふたりでよく遊んでた。
彼女の家で、人形遊びもよくした。
一緒にセーラームーンを見たり、キン肉マンを見たりした。
はるかさん(セーラーウラヌス)が男か女かでケンカもした。
好きな色を聞かれて、答えたら、その色のリボンのついたプレゼントをくれた。
小学校に入ってからは、私は同学年の子たちとうまくやっていくことで精いっぱいで、彼女とは遊ばなくなった。
それでも、集団登校だけはずっと一緒で。
私が小6のとき、班長になって、彼女が副班長になって。
私が一番前で、彼女が一番後ろ。
間に低学年や中学年の子たち。
私が歩くのが早すぎて、後ろの子たちを置いてきてしまうといけないから。
時々、振り返ったりして。振り返った先の、一番後ろに、彼女がいたんだ。
低学年の子が、転んだり、傘を持っていないのに、急に雨が降ってきたり。
私が、どうしよう・・・って迷っている間に、
彼女はすぐに手を差し伸べてあげられる、優しい子だった。
そんな彼女に、久しぶりに会いに行った。
アパートの内装工事の関係で、私も彼女も昔の棟からは引っ越していたから、
初めて入る、彼女の家。
奥に見える、すっかり大人になった彼女の笑顔。
周りを囲う、白い花たち。
こんなに簡単に、泣くつもりはなかったのにな。
玄関に置いてある、背の高い靴棚。
部屋の中の空気。額に入った大きな写真。その周りに添えられたゆりの花。
そういったものに、涙腺が反応してしまった。
何百倍も何千倍も辛い思いをしている人が目の前にいるのに。
私なんかが、泣いちゃいけないのに。
そう思っても、止まらなくて。
それから、数時間後。
ELTのライブを見に行った。
ライブの間中、心のどこかで彼女のことを考えていた。
「LIVE」という言葉の意味を考えていた。
だから、「キヲク」という曲を聴いて、たまらなくなった。
もともと、切なくて好きな曲ではあったけど、言ってしまえば、「未練がましい失恋ソング」。
そう思っていたのにな。
伝えたいコトがあった それはおかしい程 簡単で
失ってやっと気付く
それはかけがえのないもの
振り向けばいつもそこに 君がいてくれるような気がした
薄紅ノ雪が舞って今日も変わらぬ風が吹く
キヲクの中 探していた―