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- 今年の読書(78)『刑事さん、さようなら』樋口有介(中公文庫)
埼玉県警本庄中央署を舞台とし、東京にも群馬にも近い地域の特性を生かした物語でした。
主人公は捜査一課に所属している警部補<須貝>、41歳で建売住宅に妻と子供がいるごく平凡な男ですが、交通課に勤務する27歳の<沙和子>と不倫関係を持ち、また身内意識の強い警察組織の一員としての行動も忘れてはいません。
ある日後輩から「結婚したい女ができた」と持ちかけられたあと、自宅で首を吊っているのが発見され、その二日後河原で風俗ライターの死体が見つかるところから、<須貝>は二つの不審死に疑問を持ち、<女A>まで辿りつくのですが・・・。
反面寂れた焼き肉屋「竹林(トリム)」に勤める<良男>の日常が<須貝>の捜査と交互に描きこまれ、やがて二つの舞台が交差するところに、タイトル『刑事さん、さよなら』の意味が分かり、読者に驚愕の印象を残す美しくも悲しき愛の物語でした。
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