本書には語呂合わせでしょうか、『マリオネット症候群』と『クラリネット症候群』の2編が納められており、後者は本文庫書き下ろし作品です。
『マリオネット症候群』は、ふと目を覚ますと自分の体が他人に占拠されている場面から物語が始まります。
人格転移の設定は、<北村薫>の『スキップ』や<東野圭吾>の『秘密』 、<大林宣彦>監督の映画『転校生』などがありますが、一方的に体の支配権を奪われてしまい、本人の思考は伝わることなく、また体を自由に動かせることもできません。
単なる人格転移だけに終わらせず、二重三重の思わぬ仕掛けで読者を楽しませてくれます。
『クラリネット症候群』は、高校生の<翔太>が、あこがれの<本城絵里>にクラリネット演奏を聞かせているときに悪友がクラリネットを破損してしまい、その瞬間から<ドレミファソラシド>の音が聞き取れない状況に落ち行ってしまいます。
同居している父親代わりの<関夏彦>は、やくざの梅田会がらみのトラブルで拉致されてしまい、<翔太>は<関>が残した暗号らしき譜面の解読に力を注ぎこみます。
残された暗号の解読も秀逸でしたが、読者は「 したの?」は「どうしたの?」であり、「こ 、も か た 」は「これ、もしかしたら」と、読みときながら文章の穴埋めをするという二重の謎解きもあり、暗号ミステリーが楽しめました。
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