『耳をふさいで夜を走る』石持浅海(徳間文庫)
Sep
18
緻密な計画を練りつつ、完全犯罪を狙う準備を進めなければと決意し始めているとき、恋人の<あかね>が平日にも関わらず<並木>の部屋に訪れ、男女の営みを始めようとしたときに<あかね>は隠し持っていたナイフで<並木>に襲い掛かり、反対に彼に殺されてしまいます。
<並木>は、3人のうち誰かが「覚醒」したものと考え、時間的余裕がないのを悟り、今晩中に3人の殺害を実行しなければと、まずは<仁美>の家に出向いていきます。
読者は<並木>という男の立ち場も「覚醒」という言葉の意味も分からないままただただ殺人者<並木>の心の葛藤に付き合わされていきますが、物語が進むにつれて3人の女性は冤罪が晴れないまま拘置所で父を亡くした過去を持ち、<並木>は「冤罪被害者支援団体」でボランティアとして活動、<あかね>は臨床心理士で、彼女たちの心のケアーを担当していましたが、世の中はすべて敵であるという思想を彼女たちに植え付けるいびつな実験を実行していました。
人間の命の倫理観や尊さ、正義感などを無視した記述が全編を貫き、最後は驚愕の結末を迎えることになります。