建築設計を生業としていますので、副題の「周防国五重塔縁起」という文字に興味を持って読んでみましたが、寺院建築に関しての大工と木造建築の用語が散りばめられていて、面白く読み終えれました。
本書が著者のデビュー作品であり、取材に14年、執筆におよそ4年、推敲に1年を費やし、89歳の作品と知り、驚きを隠せません。
室町時代中期に建立された香積寺の「瑠璃光寺五重塔」の解体修理にあたり、斗に描かれた「此のふでぬし弐七」の墨書きの文字から、宮大工を志す九州の隠れ里出身の青年<左右近>を主人公に仕立て、また、<新田義貞>の血を引く若狭新田家の姫<初子>の身の周りの話を平行に置き、五重塔建立に命をかける番匠たちを見事に描いています。
文中に出てくる僧侶<恵海>の、「大工たちは神の手と、仏の慈悲と忍耐を持っている。でなければ、こんなに人の心を打つ堂塔伽藍は建ちあがらぬ」という言葉が、モノ造りをする立場への戒めとして心に残る一冊でした。
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Posted at 2016-04-15 16:45
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Posted at 2016-04-15 17:23
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