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- 今年の読書(5)『沈黙の詩』鏑木蓮(PHP文芸文庫)
『思い出探偵』(2009年) ・ 『ねじれた過去(思い出をなくした男・改題)』(2011年)に続く<思い出探偵>シリーズの第3作目になる『沈黙の詩(うた)』です。
失踪者や浮気現場の尾行という探偵業務ではなく、わずかな手がかりから依頼人の思い出の人や物を見つけ出すのを仕事としています。
所長の<実相浩二郎>は元京都府警の捜査一課の刑事で、妻<三千代>とは7年前に息子を亡くした過去を背負っています。署員たちもそれぞれにトラウマを抱えた人物たちでまとめられています。
今回の依頼は、28年間、戸籍がないために結婚もできずに内縁の妻として暮らしてきましたが、相手の過去を全く知らないうちに認知症状が出てきた85歳の<絹枝>の過去を探ることです。
<絹枝>の書き残していた「詩」の中の言葉を手掛かりに、岡山、倉敷、今治、名古屋、大阪、と所員たちは彼女の過去を追っていきます。
暗い昭和の歴史を背景とする<絹枝>の人生が浮き彫りにされ、せつなく・ほろ苦い探偵ミステリーでした。
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