女性署長の登場としては、<安東能明>の 『出署せず』 や 『広域指定』などの<阪元真紀>警視がいますし、<堂場瞬一>の 『錯迷』 には、不審死を遂げた<桜場里佳子>署長が登場していますが、副所長という立場での主人公は初めてではないでしょうか。
階級順位と何期生なのかが幅を利かす縦社会の警察組織において、副署長という微妙な立場が見事に生かされてました。著者の<松嶋智左>は、元女性白バイ隊員という経歴の持ち主だけあって、男社会といわれる警察組織と警察署をうまく舞台として描き切っています。
主人公の<田添杏美>警視は、美人とは言い難い容姿で、独身です。33年間警察官として勤務し、とある県の小さな日見阪署に副所長として赴任して半年ほどの夏の日に台風が直撃するという夜に、警察署内の敷地内で、地域課の「鈴木」係長がナイフでの刺殺体として発見されます。
大雨に打たれた現場では証拠の採集も期待できない中、犯人はまだ署内にいる警察官と思われ、「田添」は、所轄の名誉にかけて本庁の手を煩わせることなく、殺人捜査のベテランである刑事課長の「花野」と対立しながらも犯人を挙げることに奔走します。
署内の殺人事件を柱として、台風の夜に起こる、警察署としての救助活動や、留置場内での不祥事、所内でのトラブルなどが絡み合い。複雑な群像劇が展開して行きます。犯人として警察官が逮捕されるのですが、著者はさらなる展開を見せつけ、台風一過の嵐の夜の一夜を巡る濃厚なミステリーを描きます。続編を期待したい、出来ばえでした。
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Posted at 2020-06-18 05:29
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Posted at 2020-06-18 11:49
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