江戸時代を舞台に、庶民や下級武士の哀歓を描いた時代小説作品を多く残した<藤沢周平>〈1927年(昭和2年)12月26日~1997年(平成9年)1月26日〉ですが、<松尾芭蕉>や<与謝蕪村>と並び「江戸三大俳人」と称される<小林一茶>を主人公にした『一茶』を、文藝春秋社から 1978年に刊行していますが、2009年4月に文庫本となっています。
子どものあどけない様子や、カエルやスズメを読み込んだ俳句より、穏やかな性格をうかがわせますが。その素朴な作風とは裏腹に貧しさの中をしたたかに生き抜いた男としての実態をあからさまに描いています。
俳人としての名誉欲、継母が生んだ弟との10年に渡る家と田畑の遺産相続への執念、晩年52歳で娶った「菊」(28歳)、「雪」(38歳)、「やを」(32歳)の若妻三人との荒淫ともいえる夜の営みを過ごした晩年等、貧しさの底辺で俳諧師として30年江戸を拠点に全国を回ったしたたかな男の貌を描き出しています。
俳諧は、「一茶」にとって喰うための手段でしたが、それ以上に芸であったと、65歳で亡くなるまでを締めくくっています。
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