今年の読書(18)『オフマイク』今野敏(集英社文庫)
Mar
22
継続捜査を担当する捜査一課特命捜査係の「黒田裕介」は、二課の同期「多岐川幸助」から20年前のイベントサークル幹部だった大学生「春日井信之」の自殺事件についての洗い直しを依頼されます。その死が、現役大物政治家の贈収賄と関わっている恐れがあるというものでした。
聞き込みを行ううちに、「黒田」はこの事件を「ニュースイレブン」の報道記者「布施」も追っていることを知ります。いつもふらふらと飲み歩き、飄々としたスタンスで人間関係を築く「布施」の取材能力に対して一目置く「黒田」でした。その「布施」の情報から、「黒田」は事件のカギとなる人物はITで財を成し、政界のフィクサーとして名を流す「藤巻清治」だと目を付けます。やがて「藤巻」はイベントサークルの主宰者であることがわかります。ときを同じくしてニュースイレブンの人気キャスター「香山恵理子」が、放送時間に出社せず突然失踪します。
全く接点のの見えない自殺事件と失踪事件でしたが、その背後にはテレビ業界や警察組織さえも迂闊に手を出せない、闇が潜んでいました。
いつもながらの記者「布施」と「黒田」刑事の異色コンビが活躍する「スクープ」シリーズでした。国会で「放送法」の問題が取りざたされている背景もあり、面白く読み終えれました。