17日、「第170回芥川龍之介賞・直木三十五賞」の選考会が、東京・築地の料亭「新喜楽」で行われ、芥川賞に<九段理江>氏の『東京都同情塔』(『新潮』十二月号)が選ばれています。
今作は、<ザハ>の国立競技場が完成し、寛容論が浸透したもうひとつの日本で、新しい刑務所「シンパシータワートーキョー」が建てられることから物語が始まります。犯罪者に寛容になれない建築家「牧名」は、仕事と信条の乖離に苦悩しながら、パワフルに未来を追求します。ゆるふわな言葉と実のない正義の関係を豊かなフロウで暴く、生成AI時代の預言の書となっています。
直木賞は<河崎秋子>さん(44)の『ともぐい』(新潮社)と<万城目学>さん(47)の『八月の御所グラウンド』(文芸春秋)に決まりました。
<河崎秋子>さんは候補2度目での受賞。作品は明治末期の北海道を舞台に、山中で獲物の狩りを続ける孤独な猟師の波乱に満ちた生きざまを描いています。
<万城目学>さんは候補6度目での受賞。作品は京都が舞台の2編を収め、真夏に草野球に駆り出される大学生と、真冬に駅伝を走る女子高生の不思議な体験を描いています。