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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(36)『にらみ』佐伯泰英(新潮文庫)

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今年の読書(36)『にらみ』佐...
歌舞伎の世界では、「成田屋」のお家芸「にらみ」をタイトルトする<新・古着屋総兵衛>シリーズも 『虎の尾を踏む』 に次ぎ本書で第14巻目です。

6回目の「古着大市」の開催を目前に、大黒屋に「古着大市」を取りやめないと客を殺戮するとの脅迫状が届きます。

裏の貌の影<九条文女>との密談の帰り、総兵衛一行は怪しげな艾の煙と小道具を使う集団に襲撃され、総兵衛は情報網を駆使して、脅迫状の送り主を探し出します。やがて許婚<桜子>の母親<坊城麻子>から朝廷と公儀の繋ぎ役の人物が浮かび上がり、「古着大市」開催前に敵を抹殺してしまいます。

読み終った多くの読者はタイトルの「にらみ」の意味に「なるほど」と唸ったことだと思います。
#文庫本 #読書

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今年の読書(35)『ゼロと呼ばれた男』鳴海章(集英社文庫)

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今年の読書(35)『ゼロと呼ば...
ほんしょは1993年集英社から発刊され、その後文春文庫にしゅうろくされていましたが、再度集英社文庫として発行されています航空アクション小説です。

元航空自衛隊二等空尉の<那須野治郎>の回想録的に物語は始まります。

F-4EJのパイロットであった<那須野>は、自衛隊勤務時にソ連の「死の商人」と呼ばれたパイロットが操縦するステルス偵察機に対し、命令を無視して発砲、その際に後部乗務員の同僚を死なせてしまいます。

米軍に派遣されたことがあり、ケンガクニイスラエルに出向きますが、1973年10月8日の<Dデイ・ヨム・キップルの戦い>に参戦、エジプト空軍の戦闘機を撃墜するも、別の敵機に撃墜された過去を持っています。

彼のコールサインは<ジーク>と呼ばれ、第二次世界大戦中、米軍が「ゼロ戦」につけたあだなが、<ジーク>で、<茄子野>が日本人であること、また名前の「治郎」が英語で発音するときに「ゼロ」の発音と似ているところから、名付けられています。

戦闘機パイロットの熱い熱気が伝わり、そう快感を感じさせてくれる一冊でした。
#文庫本 #読書

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今年の読書(34)『血に花・下』帚木蓬生(集英社文庫)

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今年の読書(34)『血に花・下...
<小林鎮水>の元で医者の修業を積んでいた<庄十郎>ですが、生まれ故郷の井上村の近くで、先任の医者が亡くなり跡を継ぐ形で18年間の修行を終え、<高松凌水>として、診療所を構えます。

二十何年ぶりの飢饉がおこり、農民たちは一揆の覚悟で集まりますが、元家老の<稲次>のように藩の体制を見直す家老もおらず、一揆の見せしめに庄屋や農民たちに処刑がいいわたされ、<庄十郎>の兄<甚八>も見せしめのために処刑され、<高松家>は途絶えてしまいます。

不作・飢饉・増税に苦しみながらも、強く生きぬく農民たちの姿を細かく描き、市井の医者としての職務を全うする<庄十郎>の複雑な心の変遷を絡める、歴史的大作に感動を覚えました。
#文庫本 #読書

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今年の読書(33)『天に星・上』帚木蓬生(集英社文庫)

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今年の読書(33)『天に星・上...
本書の著者である<帚木蓬生>は、医学部出身の作家として医学の世界を舞台とした、『賞の棺』 や 『エンブリオ』 ・ 『インターセックス』 など楽しめる作品が多く、本書のような歴史小説は、異色の分野に思えましたが、主人公<庄十郎(凌水)>を在野の医者に据え、彼の目線を通して、人間の生き様を見事に描いています。

冒頭は、久留米藩の悪政に対して、一人立ちあがった家老<稲次因幡>の墓に月命日に欠かさず参る<庄十郎>の姿から物語は始まります。

大庄屋の二男に生まれた<庄十郎>は、14歳のときに疱瘡に罹り、母が罹患して亡くなります。これを機に<庄十郎>は病を看てくれた医師<小林鎮水>に弟子入り、大庄屋の家督は長男<甚八>が継ぎ、医者を目指します。

飢饉に苦しむなか、藩の圧政に苦しむ農民たちの現状を細かく描きながら、物語は下巻に続きます。
#文庫本 #読書

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今年の読書(32)『警察回りの夏』堂場瞬一(集英社文庫)

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今年の読書(32)『警察回りの...
<堂場瞬一>は好きな作家のひとりで、<高城賢吾>を主人公とする 『蝕罪』 で始まる「警視庁失踪課」シリーズも第10作目の 『献身』 で終わり、いまは<大友鉄>を主人公とする 「アナザフェイス」シリーズと、新米刑事として登場した<一之瀬拓真>の成長ぶりが楽しみな 『ルーキー』 にはじまり 『奪還の日』 の刑事物シリーズの新作が出るのを楽しみにしています。

本書は、著者の経歴(東京読売新聞社勤務)を生かした 『虚報』 や 『異境』 の延長線上にあるマスコミを舞台とした社会派ミステリーです。

母子家庭の幼い姉妹が自宅で殺害されているのが発見され、母親は行方不明の為、母親が犯人だとの憶測のもと、連日報道人は、発見された公営住宅や実家に張り付いています。東京本社から事件のあった甲府支局に追いやられた<南康祐>は、本社復帰を狙って、懇意にしている警察関係者のコメントの裏取りをすることなく、母親逮捕の特ダネ記事を書きます。

この特ダネ記事は誤報となり、新聞社は第三者の調査委員会を立ち上げ原因を追求していきますが、裏側には、警察組織を巻き込んだ罠が仕掛けられていました。

最後まで取材先のネタ元の人物を明かさずに、独自の調査で真実を追い求める<南>の行動は新聞記者としての矜持を感じ、改めてマスコミの「メディアスクラム」の怖さを感じさせてくれる一冊でした。
#文庫本 #読書

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今年の読書(31)『決断』小杉健治(双葉文庫)

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今年の読書(31)『決断』小杉...
芝浦のマンションで銀座の高級クラブのホステス<石本真由>の死体が発見される。現場を見た東京地検検事の<江木秀哉>は、殺人現場として奇妙な違和感を覚えます。

司法解剖の結果、被害者は妊娠3か月だったことが判明。マンションの防犯カメラから不審な男の存在が明らかになり、やがて東京地検の公金不正流用疑惑を追及する代議士の<芦田俊弥>が容疑者として浮かび上がります。

余命半年と診断され入院している<秀哉>の父は、名刑事と謳われた<江木秀蔵>で、現役時代の唯一の未解決事件は、20年前のグラビアモデル<香月美穂>殺害事件で、その時にも<芦田>の名が出ていたことが判明します。
当時、容疑者だった<戸山洋司>を訪ね、死体遺棄は時効だからと説き伏せると、<芦田>に頼まれて死体を遺棄したことを認めた。当時、<芦田>の父親が次期警視総監と目される警視監の地位にあったことから、事件はもみ消されたらしい。

<秀哉>は家庭を顧みなかった父と絶縁状態にあったが、自分自身も、東京地検の上司の圧力に屈せざるを得ない立場に置かれ、父の隠された20年間の苦悩を知り、時を経た2つの事件を絡め、親子の絆が甦る感動のミステリーでした。
#文庫本 #読書

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今年の読書(30)『ケモノの城』誉田哲也(双葉文庫)

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今年の読書(30)『ケモノの城...
著者の作品は、『ジウ』シリーズ (Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ) をはじめ、テレビドラマ化や映画化された 『ストロベリーナイト』 に始まる<姫川玲子>シリーズが好きでした。

また、農業の世界で頑張る女性を描いた 『幸せの条件』 も異色な作品で楽しめました。

今回の本書は、いやはやなんともグロテクスな描写の連続で、衝撃的な内容でした。

自ら警察に身柄保護を求めてきた17歳の少女は、全身に暴行の跡がありました。彼女の証言により監禁されていたマンションの部屋には<アツコ>と名乗る女がおり、部屋からは多数の血液反応が発見されます。

<アツコ>は取り調べに対して、すべて<梅木ヨシオ>なる男の犯行だと言い続けますが、男の正体がつかめません。

人間は監禁状態になると「学習性無力感」という無気力な感情に陥り、無抵抗にならざるを得ないようですが、それにしても衝撃的な殺人事件を扱った作品です。怖いもの見たさの人にお勧めします。
#文庫本 #読書

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今年の読書(29)『上州すき焼き鍋の秘密』倉阪鬼一郎(宝島社文庫)

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今年の読書(29)『上州すき焼...
重たい「刑事物」が続いていますので、息抜きに時代小説を手にしてみました。

主人公は関東八洲を取り締まる役人<藤掛右京>ですが、小料理屋を構える料理人という裏の貌を持っており、店を預かっているのは、強盗の一味から抜け出した<佐吉>です。

今回の取り締まりは、「鬼瓦の喜三郎」の残党を捕まえる役目に相方の<江坂三十郎>と上州に出向きます。

宿泊に出向いた旅籠が残党一味の店で、そこで供された「すき焼き」が、仲間内の合図で、<藤掛>の暗殺の実行を意味していました。身の危険を察した<藤掛>は事なきを得ますが、「すき焼き」の具材である<牛肉>から、一味の裏の世界の繋がりを知り残党の処理を行います。

各地各地の名物料理を楽しみながら、<藤掛>一家のほのぼのとした家族に癒され、面白く読み終えれました。
#文庫本 #読書

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今年の読書(28)『自覚:隠蔽捜査5.5』今野敏(新潮文庫)

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今年の読書(28)『自覚:隠蔽...
本<隠蔽捜査>シリーズの主人公<竜崎伸也>は、第1作目の 『隠蔽捜査』 では警察庁長官官房総務課課長。階級は警視長。第2作目の 『果断』 からは警視庁大森警察署署長へ異動後も降級せず警視長。私利私欲とは無縁で、国家公務員としてあるべき姿を、そして、原理原則に忠実な官僚。周囲からは「組織の犬」「変人」と陰口を叩かれているが、逆に「自分の為」というのが無く官僚としても優秀なため、部下からも上司からも信頼は厚い。若い頃は東北地方の所轄署で署長をしていた。

本書は、大きな事件を解決するのではなく、<竜崎>を取り巻く関係者の苦悩を中心にすえた短篇集で、7つの逸話が収められています。

どの短篇も、改めて<竜崎>の計り知れない人間性を感じさせる言動と判断で、事件解決の物語以上に、楽しめる構成でした。
#文庫本 #読書

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今年の読書(27)『宰領・隠蔽捜査5』今野敏(新潮文庫)

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今年の読書(27)『宰領・隠蔽...
<隠蔽捜査シリーズ>として、第1作目の 『隠蔽捜査』 にはじまり、前作 『転迷』 に次ぐ6作目が本書です。

衆議院銀の<牛丸>が、行方不明との連絡が、<伊丹>刑事部長から連絡を受けた大森署長の<竜崎>は、空港から事務所への通り道となる大森管内ということもあり厳戒態勢を引きますが、議員の運転手の他殺死体が発見され、誘拐犯からの電話がかかってきます。

誘拐と殺人事件は警視庁の管轄下で発声していますが、電話は神奈川県内ということで、警視庁と神奈川県警の合同捜査になり、指揮を命じられたのは、大森署長の<竜崎>でした。

階級社会が顕著な警察組織の人間関係と反目しあう組織の板挟みにあいながらも、<竜神>は、自分の信念のもと事件の解決に向かいます。

ほんsyは、第1作目の『隠蔽捜査』を背景としている要素が強く、息子<邦彦>も東大受験3回目の正念場を迎え、警察官として、父親としての<竜崎>の人間性が、浮き彫りにされています。
#文庫本 #読書

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