映画好きの人にはまず読んでいただきたい、と言うよりは、読まなければいけない感動の一冊でした。
映画に対する登場人物たちの真摯な言葉や姿勢に涙する場面が多々あり、ひとつのことに情熱を燃やすことの素晴らしさを教えてくれています。
39歳で独身の<歩>は、17年勤めていた開発会社の課長職を捨て辞職、折しも麻雀と映画が趣味の79歳の父<丸山郷直>が緊急入院、多額の借金が発覚します。
父親の入院中、マンションの管理人の仕事を代替わりする<歩>ですが、父が70年間見続けた映画の記録を眺めるうちに、<歩>も自分が手掛けていたプロジェクトの関係で、なにげなく父親のノートに自分の映画への想いを書き込んだ紙を挟み込んでしまいます。
ある日「映友社」の編集長<高峰好子>から電話があり、父が<歩>の文章を投稿したブログが彼女の目に留まり、<歩>は編集部に就職することになります。
やがて「映友社」は、ホームページの改編の際、『キネマの神様』なるタイトルで、映画評論の場をブログとして開設するのですが、このブログの場面が秀逸でした。
どうしようもない遊び人の父と娘の関係を主軸に、数多い名画を通しての人間関係が交錯するなか、映画の持つ力の強さを改めて感じさせてくれる素晴らしい物語でした。
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