本書『純喫茶「一服堂」の四季』は、 『謎解きはディナーのあとで』 で2011年本屋大賞を受賞した<東川篤哉>による、喫茶店を舞台にしたユーモアミステリーです。
タイトルの「四季」が表すとおり、春夏秋冬4つの事件が納められています。密室で十字架に磔にされた大学教授「第一話 春の十字架」。農家の納屋で首に蛇が巻き付き磔にされた地主「第二話 もっとも猟奇的な夏」。浴室で頭と両手首のない状態にされた作家のアシスタント「第三話 切りとられた死体の秋」。完全に施錠された家屋で惨殺された兄弟「最終話 バラバラ死体と密室の冬」。
古都鎌倉にひっそりと佇む喫茶店「一服堂」の美人店主<ヨリ子>は、客が入店したのを察知した途端に赤面し、どもる恥ずかしがり屋で、極度の人見知りでアガリ症ですがオーナーとして客の前に立ち続けます。だが、未解決事件の話を聞けば態度が豹変し、並外れた推理力で4つの事件の謎に迫っていきます。
雑誌記者<村崎蓮司>、独身女<天童美幸>、売れない作家<南田五郎>、女刑事<夕月茜>が<ヨリ子>のもとに事件を持ち込み、彼女の前で事件の真相解明を試みます。ところが、彼らの推理を傍らで聞いていた<ヨリ子>は突然客を睨みつけ、「甘いですわね!まるで『一服堂』のブレンド珈琲のように甘すぎますわ。もう少し苦みの利いた推理をお聞きしたかったのですが、わたくし、すっかり失望いたしました!」と、客の推理と自ら淹れた珈琲の味に毒舌を吐く。「安楽椅子」と書いて「アンラクヨリコ」と読ませる彼女の名探偵ぶりが、そこから発揮されます。
何と言っても、エプロンドレスのメイド姿をした美しい<ヨリ子>の豹変ぶりが強烈。キャラの設定、会話のやりとり、トリックの斬新さと言い、サクサクとテンポよく、飽きることなく楽しませてくれます。事件の被害者の描写は凄惨であるにもかかわらず、笑えるポイントが散りばめられています。
本書を読みながら、<岡崎琢磨>のユーモアミステリー 『珈琲店タレーランの事件簿』 や、<折口良乃>の 『汐汲坂のカフェ・ルナール』 を思い出していました。
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Posted at 2018-07-19 05:53
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Posted at 2018-07-19 06:05
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