初出としては、1982年と古い作品ですが、中公文庫版として読みました)『雲奔る』です。
幕末の隠れた米沢藩の下級志士「雲井龍雄」の物語です。「雲井」は著者の<藤沢周平>さんと同じ山形県出身です。江戸末期から明治へと転換してゆく時代も大きな流れに隠れた亡くなった同郷の志士に共感するものがあったのでしょう。
主人公「雲井龍雄」は、米沢藩の極貧の士分に生まれた彼は学問だけはよくできました。望んで江戸詰になり閑職の合間を縫って三計塾の「安井仲平」に師事、塾頭まで上り詰めます。
さらに藩に嘆願して京都詰めになりますが。ときあたかも幕末の煮えたぎっている時期であり、「龍雄」が悲憤慷慨している間に薩長は官軍となり会津藩は賊軍となり会津は征伐を受けることになります。「龍雄」は討薩の表を掲げて会津を救おうとしますが、薩長を結ぶ統幕連合の動きを見誤り、27歳の若さで処刑されてしまいます。
「坂本竜馬」や「勝海舟」・「西郷隆盛」といった著名人の陰に隠れた悲劇の武士に光を当てた物語として楽しめました。
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