今年の読書(39)『銀の猫』朝井まかて(文春文庫)
Jun
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<朝井まかて>は、江戸の庭師一家を扱った『ちゃんちゃら』を読み始めとして、江戸時代を舞台とするお気に入りの作家のひとりで、江戸の青物問屋を舞台とする『すかたん』・植物学者<シーボルト>を主人公に据えた『先生のお庭番』・江戸娘三人の「お伊勢参り」を描いた『ぬけまいる』など面白く読んできました。
今回の『銀の猫』は、江戸の町を舞台として、妾奉公を職業とする母「佐和」がこしらえた借金が原因で離縁された25歳の「お咲」が、元夫に借金を返済するために高齢者の介護をする介抱人としての務めを通して江戸に生きる人間模様を描いています。
現代社会にも通じる老人介護の問題を、「五郎蔵」と「お徳」夫婦が切り盛りする介抱人の口入屋「鳩屋」と「お咲」の住む甚平長屋を舞台として、手助けの必要な老人の日常を描きながら、「お咲」の成長が描かれています。
表題にある「銀の猫」は、離縁された夫の義父から譲り受けた根付が「銀の猫」であり、介抱人として働く「お咲」の心の支えになっているとともに、長屋に出入りする「猫」が物語の伏線としていい味わいを出していました、