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- 今年の読書(50)『国境事変』誉田哲也(中公文庫)
<誉田哲也>による『国境事変』は、2007年11月に単行本、2010年6月に中公文庫が刊行されていますが、時代を超えて重く心にのしかかる作品でした。
『ジウ』シリーズの三部作((Ⅰ) ・ (Ⅱ) ・ (Ⅲ))に続く、〈ジウ〉サーガの第4作という位置づけの作品で、『ジウ』三部作に登場した「東弘樹」刑事が活躍するスピンオフ作品です。
新宿の路上撲殺されたスポーツ用品商社〈東侑エンタープライズ〉の社長である在日朝鮮人〈若松吉男〉こと「呉吉男」の殺害事件を担当する捜査一課の刑事「東弘樹」は、被害者の弟「呉英男」や関係者から事情聴取をする内に、「アンドウ」という不審な人物に行き当たります。
一方、その「呉英男」を、北朝鮮絡みの情報提供者〈G4〉として運営してきた警視庁公安部の「川尻」(アントン=アンドウ)は、事件の捜査が進むに連れ、公安警察官として、ただ監視して報告するだけの生き方に迷いを感じ始めていました。
「呉吉男」の父「呉虎男」は自殺をしており、北朝鮮が絡んだ事件の匂いを嗅いだ「東」は、〈東侑エンタープライズ〉の倉庫が荒らされ、「呉吉男」あての物品が盗難にあったことを知り、弟「呉英男」を尾行し始めますが、なぜか捜査中止の命が出ますが、納得する「東」ではありません。
事件の真相は、朝鮮半島に近い対馬を舞台として、捜査一課と公安の対立の中、北朝鮮の思惑が交錯、新宿の殺人事件が起こした小さなさざ波は、国家をも巻き込む大きな事変へと変貌していきます。
対馬に在駐する自衛隊の「川口」隊長の台詞がタイトルの『国境事変』と結びついた時には、唸ってしまうほど感動を受けました。
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