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導入部は、同棲していた男と女が分かれることになり、明日は別々のところに引っ越す前夜、家具もない部屋で最後の時間を過ごす場面から始まります。
読み進むにつれ、1年前にS山地に一緒に出向いた際、現地のツアーガイドが事故死で亡くなっているのは、お互いに相手が殺したのではないかと考えているのがわかりだします。
亡くなったガイドは、二卵性双生児として生まれた男<高橋千浩>、女<高橋千明>が生まれる前に離婚した父親であり、彼は自分の子供がいることは知りませんでした。
<千浩>と<千明>が一年前の事故を振り返りながら交互に語る構成で組み立てられていますが、家族や兄妹などの愛情がいかにもろい綱渡りの上に成り立つのかという、疑心暗鬼の世界が垣間見れる一冊で、心理描写の巧みさに最後まで一気に読み通せました。
主人公である<柴崎令司>は36歳、警視総監直属の筆頭課である総務部企画課の係長をしていましたが、部下の拳銃自殺事件の責任を取らされ、足立区の綾瀬署の警務課の課長代理へと左遷されてしまいます。
出世を望む上昇志向を持ちながら、上司の<中田>課長はお咎めもなく、嵌められた立場で綾瀬署に出向きながらも、本庁に返り咲く手段として<中田>課長の弱みを探り始めますが、所轄で起こる様々な事件と遭遇していきます。
現場捜査に出ることが無かった<柴崎>ですが、警察学校時代の上司<助川>が副署長としており、事務仕事だけでない分野での経験を、積み重ねていかざるを得ませんでした。
本書は連作短篇で7話が納められており、ひとつひとつの事件を通して慎重な行動の<柴崎>の成長がみてとれ、この先の展開が楽しみな構成でした。
雑貨品が好きな24歳の<和子>は、代官山のフリーマーケットで体長15センチほどの「あみぐるみのクマ」を買って帰り、<ミル太>と名付け部屋に飾りますとなんと「クマ」が喋りだしました。
話しを聞いて見ると<ミル太>には、惣菜工場を経営していた夫婦が、5歳の子供を残して借金を苦に心中自殺した事件が気にかかり、再度現場を捜査中に崖から落ちて死亡した59歳の刑事<天野康雄>の魂が乗り移っていました。
現在無職中の<和子>は<天野>の指示のもと、デコボココンビで事件解決に向けて、馴れぬ聞き取り調査を始めていきます。
<ミル太=天野>の声を聞えるのは<和子>だけですので、周囲からは不振がられながらも、ユーモラスな会話の中にも温かみがある二人の軽快な行動が、ほんわかと心をゆさぶられる一冊でした。
<豆腐小僧>は、江戸時代の草双紙や黄表紙、怪談本などに多く登場する妖怪で、本書の主人公として登場してきます。
江戸郊外の廃業した豆腐屋の廃屋に住みついていた<豆腐小僧>ですが、たまたま現れた家をギシギシと軋ませる妖怪<鳴屋>から、自分の妖怪としての存在価値を問われ思い悩んだ<豆腐小僧>は、その理由を求めて旅に出かけます。
道中色々な幽霊や妖怪などと出会いながら、自分の父親は「見越し入道」と呼ばれる妖怪の総大将であり、姉は「ろくろ首」だと知り得ていきます。
全11話の連作で構成されており、すべての文章が講談調のノリで滑稽さと笑いを基本として語られ、知らぬ間に700ページを超す大作を読み切っておりました。
高校を卒業して「アヒルバス」の観光バスガイドとして5年目の<高松秀子>を主人公に据えた、いわゆる業界モノです。
色々な企画ツアーの添乗員として事故もなく無事に見送るまでの裏方としての気苦労を知ると共に、居ながらにして東京の街のガイドブックとしても楽しめました。
新人研修担当の<三浦先輩>は、ヘッドハンティングで北陸の鉄道会社に転職、後任はできちゃった結婚で、新人5人のの研修役が<秀子>に回ってきます。
「鋼鉄母さん」こと<戸田夏美>の厳しい上司を中心に、同期の<中森亜紀>達と織りなす、笑いあり感動ありのバスガイドの裏部隊が楽しめる一冊でした。
ギャンブル好きの家から出て行った父親の借金を母は勤めながら返済している家庭から小学校の教師になるべく大学に進んだ大学3年生の<宮瀬恵介>ですが、学費が払えなくなり一年休学して実家に戻ってきます。
弟<春人>とよく子供の頃に観に行った映画館「銀映館」に出向くと、自給二千円の映写技師のバイトを見つけ応募しますが、支配人の<南川>からは、技師長<杉本ルカ>に関して、「過去については質問をしてはいけない」・「月曜日はそっとしておく」・「恋愛はご法度」の3つの言い渡しがあり、21歳の<ルカ>は3年間一歩も映画館から出ることなく、閉じ込まったままの生活を続けていました。
やがて<ルカ>の高校時代に閉じこもりの原因があるとわかり始めますが、その原因となる<レイジ>が<恵介>に接してきて、<ルカ>の悩みの核心へと突き進んでいきます。
映画館における裏方の映写の現状を横糸に絡ませながら、<ルカ>を守るべく情緒不安定なストーカー気質の<レイジ>と対峙する<恵介>に、閉ざされた<ルカ>の心もやがて開かれ、感動のラストシーンを迎えることになります。
主人公の<ザンティピー>は38歳、ニューヨークのマンハッタンで探偵稼業をしている元警官で、語学が堪能という特技を持っています。
ある日13歳離れた妹<サンディー>から、日本人の<笠島隆一>と結婚して北海道留萌小平にある温泉旅館「ゆーらっくの湯」に嫁いでいる旨の手紙を受け取り、休暇を兼ねて遊びに出向きます。
小平の町には、海岸近くに「オンジョ岩」があり、浜辺は「「御浜(おんはま)」と呼ばれていますが、どちらも足を踏み入れてはいけないという風習がありました。
愛犬<タロー>がこの「御浜」に紛れ込み、追いかけた<サンディー>は<タロー>が人骨を掘り出したのを見てしまいます。
<ザンティピー>は<サンディー>から骨の話を相談され、ひとり捜査を始めていきます。
北海道の片田舎にある伝説的な風習に絡むミステリーですが、<ザンピティー>の<ふうてんの寅さん>口調の台詞が爽快で、楽しめながら読み終えました。
いいキャラクターの<ザンティピー>ですので、続編を望みたいところです。
本書は、朝日放送(ABCラジオ)で放送されたラジオ番組『米朝よもやま噺』をもとに、編集されており、懐かしい写真も多数挿入されていました。
上方落語界の大御所として、2007年には芸能生活60年を超える三代目<桂米朝>は、1996(平成8)年、落語界から<五代目柳家小さん>に次いで2人目の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されています。
長い芸歴を通して、番組の中で自由気ままに語られた芸談集として、懐かしい芸人たちの名前とともに、一門の弟子である<枝雀>や<ざこば>、長男である<小米朝>などの裏話、自ら<八十八>の俳号を持つ俳句の話題など、幅広い分野での味わい深い話が楽しめる一冊でした。
多くの人物が登場する長編ミステリーですので、それぞれの「目線」から見た物語が展開するのかなと予見を持って読み始めましたが、小説を読み終えて犯人がわかる段階で、ようやく『目線』のタイトルの意味が理解できました。
堂島建設の社長<堂島新之助>が、65歳の誕生日会を自宅で家族揃ってお祝いをするために晩餐の準備が進められているときに、なぜか2階のベランダから転落、警察は自殺として処理します。
初七日を迎えた日、またもや集団就職で山形から一緒に東京に出てきた同郷の<宮本茂>が撲殺され、また同時に次女の<貴和子>も絞殺死体で発見され、<新之助>の運転手<松浦>が謎めいた書置きを残して自殺してしまいます。
当初から<新之助>の事故の状況から他殺ではないかと疑っていた刑事係長<津由木>は部下共々再調査に乗り出しますが、事件は昔の出来事を発端とする堂島家の愛憎劇として悲しい結末を迎えます。
28歳のOL<一礼比梢絵>が、自宅マンションの扉を開けたとき、後から暴漢に襲われ、瀕死の重傷を負いますが、運よく相手の武器である鉄アレイで反撃、一命を取り留めます。
その際<梢絵>は、相手のポケットから中学校の生徒手帳を掴み出していました。
その生徒手帳には、同じ手口で殺されていた3人の名前と<梢絵>の名前が記入されていて、連続無差別殺人事件の犯人として高校1年生の<口羽公彦>が浮かび上がりますが、行方を掴むことはできません。
事件の捜査を担当した<双侶澄樹>は、事件が起こった4年後の大晦日の日に、ミステリー作家や元刑事などのメンバーが集まる<恋謎会(れんめいかい)>のメンバー5名とともに、<梢絵>を招待して事件の推理ゲームを始めます。
メンバー5名がそれぞれ自分の推理を展開していきますが、結論は出ません。
この5人の推理場面は、わたしとしてはダラダラとした展開で読むのに疲れました。
確かに事件の真相は意外な方向でしたが、登場人物は限られてきますので、当然読者としては犯人が誰かとの予測ができてしまい、ダークな終わり方は好き嫌いがありそうです。
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