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主人公は江戸の歌舞伎小屋「森田座」の大部屋女形<梅村濱次>で、幽霊や物の怪などの怨霊事が好きで、のんびりとした性格です。
ある日<濱次>は、見知らぬ娘から朝顔の植木鉢を預かってくれと頼まれ、小屋に持って帰る羽目になってしまいましたが、それは「変化朝顔」という種類でした。
<濱次>の奥役(付け人)<清助>は、金になると考えて<濱次>から世話をするということで鉢を預かり、金もうけを企み自ら「花合せ」の場にその朝顔を持ち込みますが、「親木・出物」といった専門用語についていけずに長屋に持ち帰るのですが盗まれてしまいます。
預かった<濱次>は、消えた朝顔の鉢と鉢を預けた見知らぬ娘の正体を探るべく、自らが謎解きのために動き出します。
<濱次>の座元<森田勘弥>、師匠の<有島仙雀>、料理屋の女将<お好>などの脇役の設定も面白く、一件落着のあとに思わぬ展開があるなど楽しめました。
著者自身の自伝的な行動録の(今のところ唯一の)「エッセイ」ながら、三人称で綴られているので、読み手は「これは小説か」と間違えそうな構成でした。
<登美彦>は勤め先(註:国立国会図書館)の同僚<鍵屋>家の所持する荒れ放題の竹林をきれいにしようと思い立ち、大学の友人<明石>氏と二人で果敢に「竹」の伐採に挑戦し始めます。
全編「竹」に関する<登美彦>の妄想と、京都大学農学部時代の学生生活や作家生活の回想を織り込み、最後は荒れ果てた竹林の手入れを足掛かりとしてMBC(モリミ・バンブー・カンパニー)設立へ夢は膨らんでいきます。
タイトルの『美女と竹林』は、美女がいて竹林があるという意味ではなく、美女と竹林が灯火関係にあることを示しています。
憧れの女優<本庄まなみ>さんとのエピソードも面白く、深く考えることなく著者の人世の一コマが面白く読み切れる一冊でした。
21世紀後半、アメリカ合衆国で起きた暴動をきっかけとして多くの核弾頭が飛び交い放射能で汚染された<大災禍(ザ・メイルストロム)>が起こり、従来の「国」は崩壊、新たな統治組織として「正府(ヴァイガメント)」が誕生、人間は健康と幸福の福利厚生社会を築き上げていました。
そこでは、<個人用医療薬精製システム>が各家庭に常備され、病気にかかることなく生活が送れます。
女子高校生の<ミァハ>は自己意識を憎悪する社会に対して反感を持ち、自ら自死を決行、友人の<キアン>と語り手こと<トァン>を残して消え去ります。
13年後、<トァン>はWHO螺旋観察事務局の上級監察官として働いていましたが、禁止されている飲酒・喫煙が露見し日本に送還、再開した<キアン>が昼食時に自殺を図り目の前で亡くなってしまいます。
全世界規模で意識を洗脳させる行為が行われている現状をみて<トァハ>は、犯人の思考が<ミァハ>と同じことに気づき、一人で真実を突き止めようとします。
健康で病気にならない人類社会をベースに、人間の意識と幸福はなにかと問い詰めていく課題は大きく、読み手に「人間」とは「人間社会」とはを語りかける重さのある一冊でした。
主人公<夏目栞>が、10年ぶりに故郷の小学校を訪れ、自分が4年2組で過ごした一年を振り返る物語で、「第18回椋鳥十児児童文学賞」の受賞作品です。
<栞>は、「ち」と「き」の発音がうまくできずに特別授業として『ことば教室』に通い、定年間近の<佐山先生>に指導を受けていますが、日常生活の出来事を通じて、わかりやすい言葉で<栞>にモノの見方や考え方を諭してくれます。
ある日校庭にそびえ立つ大きな「セコイヤ」の樹が伐採されることになりますが、クラスメートと伐採反対の署名運動に協力したり、奉仕委員としてプルトップを集めたりとの生活を通して、人生の「幸せ」について学んできた過程が回想的に描かれていきます。
「ボクシング・デー」とは、クリスマスに祝えなかった人たちが、一日遅れでプレゼント(Box)を開けることを意味していますが、「遅れたとしても、誰にでも必ずいいことは巡ってくるんだよ」という人生の暗示をそれとなく感じさせてくれる一冊でした。
料理写真家<星井裕>を主人公とするシリーズも、2008年8月に刊行された第一作目の 『京都 大文字送り火 恩讐の殺意』 に始まり、本書で10作目になります。
秋の行楽シーズンの京都に<星井>は、助手の<小林健>といつも通り『ルネッサンスジャパン』の料亭特集の取材に東京から出向いてきますが、途中ですれ違った女性が直後に京阪電車に撥ねられて死亡してしまいます。
死亡したのはフードライターの<松木洋子>で、関東の料理業界から土俵の違う関西に移り、あまり料理業界では評判が良くありませんでした。そんな中、グルメガイドブック『アンジェロイド』を発行する会社の重役が、自動車事故で亡くなる事故が起こります。
今回も<星井>は、京都府警洛東署に勤務する別れた妻<安西美雪>の捜査に協力しながら、一連の事件の解明に乗り出します。
京都生まれの著者らしく、『ミシュラン』のような星の格付けに対して、「京都の店をかくづけするなんて、とんでもないこと」と批判されていますが、素材から調理、客の接待に至るまで、奥の深い京料理の世界だけに、簡単にランクづけしてほしくない」と言う気持ちは、よくわかります。
元町商店街にあります老舗書店「海文堂書店」に、12月1日から4店舗の古書店が集まり、2階店内の一角に古本コーナー「元町・古書波止場」がオープンしています。
以前より、県内の古書店とタイアップして「古本市」を定期的に開催されていましたし、1階にはわずかながらの古書のコーナーがありました。
元町商店街には、気難しい親父さんの「黒木書店」をはじめ、特色ある古書店が多くありました。
今では2軒だけになり、淋しい思いをしておりました。
掘り出し物を探す楽しみが増え、嬉しい限りです。
薬種問屋「鳳仙堂」の<貞吉(のちの利兵衛)>は、丁稚奉公の末、主人<喜兵衛>の一人娘<おみよ>の婿養子となり、地道に商売を続けていましたが、長男<利一郎>は賭場の借金で勘当され、今は<伊佐次>と名を改め代貸として賭場を仕切っています。
ある日偶然に<伊佐次>が見かけた父<利兵衛>は元気がなく、気になりながらも声をかけずに通り過ぎた翌日、父は大川で水死体となり発見されます。
事故か事件かわからないまま、葬儀の当日「鳳仙堂」に10年ぶりに出向いた際、店を継いでいる弟<栄次郎>から「龍氣散」なる薬を「天命堂」から押し付けられていることを知り、父の死の原因ではないかと動き出します。
父と子、兄と弟、面倒を見てくれている貸元の<弥平>のかかわりを通して、己の人生を見つめ直す<伊佐次>の心の機微が、鮮やかに描かれている一冊でした。
著者は、<公安捜査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ>・<新公安捜査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ>と公安警察関連のシリーズを重ねてきていますので、この分野の小説として安心して読める作家の一人です。
国交省のエリート官僚<伊藤正志>が射殺される事件が起こり、現場に駆け付けた強行犯三係の<鹿取伸介>は、すでに公安部の幹部が集まっている場面に遭遇します。
この事件の裏側には公安関係の事案が絡んでいるのかと、強行犯三係の同僚<児島要>と捜査に乗り出します。
それぞれに敵対する警察と公安の関係を対比させながら、事件解決に導く地道な捜査が楽しめる一冊でした。
トクサ村では何十年に一人、角の生えた子供が生まれその子は「霧の城」に捧げられる「生贄(ニエ)」として13歳になると、「霧の城」に出向かなければいけません。
角のある子供として生まれた<イコ>は、自分の両親ではなく<村長(むらおさ)>と<継母(ままんか)>に大事に育てられ、神官の到着を待っていましたが、仲のいい<トト>が一緒に「霧の城」に出向こうと待ち伏せして先行して村を飛び出しましたが、北の禁忌の山で石と化した村を見つけ、そこで『光輝の書』を手に入れて持ち帰ります。
この『光輝の書』は、「霧の城」の城主である女王に対して力を発揮する紋様が続荒れており、<イコ>はその図柄の服を身に着けて「霧の城」に向かうのでした。
「霧の城」に出向いた<イコ>は16歳の女王の娘<ヨルダ>を助け出しますが、なぜ「霧の城」は(ニエ)を求めるのか、古からのしきたりの持つ意味はと、「知」と「勇気」をたぎらせながら、<イコ>は「霧の城」の女王と対決していきます。
解説でわかりましたが、本書はテレビゲーム「ICO」のノベライズ版だそうで、なるほどファンタジー小説ながら、戦闘的な場面が多いのに納得がいきました。
放送作家として朝日放送(ABCテレビ)の『探偵ナイトスクープ』のチーフライターを務めている著者ですが、処女作 『永遠の0(ゼロ)』 で小説家としてデビュー、本書『輝く夜』(『聖夜の贈り物』を文庫化に際して改題)が2冊目の作品になります。
本書には5篇の短篇が納められており、どれも「クリスマスイブ」を舞台として書かれています。
それぞれの作品に登場する主人公は女性たちで、一人で寂しく過ごす「クリスマスイブ」に起こる奇跡とも思える出来事により、幸せな経験をする心温まるお話しばかりで、読み手に希望と夢を与える語り口には、ほろっとさせられました。
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