本書が刊行されたとき(2004年12月)は、上下二巻の単行本でしたが、文庫本化に際して、(上) ・ (中) 、そして本書の(下) と三分冊になっています。
『日暮らし』(中)では<湊屋総兵衛門>の妾であり、<佐吉>の母<葵>が何者かに首を絞められて殺されてしまい、下手人が分からずじまいで終わっていました。
本書(下)では、関わりのある「湊屋」の人間関係があらわになり、また煮物屋の<お徳>を手助けする料理人の<彦一>、夜逃げした<おせん>などの人間関係が絡み合い、下手人探しは難航しながらも利発な<弓之助>の推理で事件は思わぬ方向に向かい、無事事件は解決していきます。
市井の生活を機微に描きながら、<平四郎>が、「一日一日積み上げるように。てめえで進んでいかないと。おまんまをいただいてさ。みんなそうやって日暮らしだ。それはとても易しいことのはずなのに、ときどき、間違いが起こるのは何故だろう」とつぶやく場面がありますが、平々凡々の日々の生活の中に幸せが隠れていることに誰も気づかないことを知らしめようとする、著者のメッセージが込められた物語でした。
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