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- 今年の読書(45)『次の電車が来る前に』越谷オサム(新潮文庫)
『陽だまりの彼女』や『いとみち』の著者の2019年11月に刊行されています『四角い光の連なりが』が改題され、2022年7月1日に『次の電車が来る前に』として文庫版が発売されています。
本書には、共に「鉄道・電車」にまつわる5篇が収められています。
『やまびこ』は、三代目の写真館を継ぐことなく東京へ飛び出した息子が、父の葬儀のために故郷へ戻る新幹線の中での出来事をとおして人生を振り返るともに父への思いが描かれています。
『タイガースはとっても強いんだ』は、タイガースファンには「わかる・わかる」とうなづくこと必至の内容で、大阪の地下鉄や阪神電車の様子がよくわかる関西を舞台としていますのでぜひ読んでいただきたい一篇でした。
『二十歳のおばあちゃん』は、若いころに乗っていた路面電車に乗りたいという祖母のために、その電車が譲渡されまだ走行しているという豊橋まで東京から連れて行く孫の「美羽」との道中が描かれ、「路面電車に乗りたい」という祖母の秘められた思いを、ファンタジー的な構成で描いています。登場する鉄道オタクが、いい味を出していました。
『名島橋貨物列車クラブ』は、貨物列車をめぐる小学六年生の友情と小さな冒険を、作文調の構成で、ほのぼのと綴っています。
『海を渡れば』は、真打になった落語家「匂梅亭一六」の四国愛媛県から師匠に弟子入りした人生記を落語調でまとめています。
人生の縮図の例えとして鉄道や駅はよく使われますが、まさに出会いと別れの人生の機微や心のつながりを描く全5話、鉄道ファンでなくとも十分に楽しめる一冊だと思います。
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