異端で美麗の東敬大学助教授の<蓮丈那智>を主人公に同じ研究室の助手<内藤光國>が活躍する<フィールドファイル>シリーズとして、 『写楽・考』 を既に読んでいますが、本書は、シリーズ一作目に当たり、密度の濃い短篇が5篇納められています。 蓮丈の研究室に、一通の調査依頼の手紙が届き、興味を抱いたふたりは、現場に出向きます。調査の先々で殺人事件に遭遇する二人ですが、民俗学の知識を駆使して謎を読み説き解決していきます。 どの短篇も史実や学説を織り込みながらの構成でフィクションとは思えない力強さを秘めています。自由発想の民俗学者<蓮丈>の面目躍如が楽しめました。
<妖談>シリーズとして『妖談かみそり尼』 に次ぐ第三巻目が本書です。 深川の三十間堀にかかる橋を満月の夜に四人で渡ると一人の影が消えて見えなくなり、数日のうちに死ぬという事件が相次ぎました。 なぜ、一人だけの陰が消えるのか、南町奉行所の<根岸>は、家来の<宮尾>と同心の<椀田>とともに調べ出します。 いつものごとく、大きな事件と共に市井の怪異な事件が並行して解決され、黒猫が白猫になった事件や、ヒモの<雲次>の悪だくみを暴くなどをこなしながら、抜け荷のカラクリを暴き出しますが、首領が意外な人物でした。 同心<椀田>の謹慎もとけ、次作から動きやすい立場になりそうです。
<妖談>シリーズとして、『妖談うしろ猫』 に次ぐ二巻目が本書です。 高田馬場近くの竹林で、カミソリで切りつけられたと思われる若旦那の死体が発見されます。竹林には、二十代後半の美人の尼が人生相談を無料で行っていました。 やがて相次いで、竹林の周りで死体が発見され、南町奉行所の<根岸>は、部下の<宮尾>や同心の<椀田>、<椀田>の姉<ひびき>のkyぷりょくのもと、事件の解明に乗り出します。 今回も<ねぎし>の若かりし頃のとばく関係で知りあった、<スリの銀二>の話題などが事件と並行して描かれ、<根岸>の人間性の奥深さが楽しめました。
l南町奉行所の根岸肥前守を主人公とする「耳袋秘帖」シリーズは、『王子狐火殺人事件』 や 『八丁堀同心殺人事件』 などの<殺人事件>シリーズがあり、本書は、<妖談>シリーズとしての一冊目に当たります。 商いの評判のよかった瓦問屋のもろこし屋の主人がころされ、現場近くでは、「かのち」と書置きを残して失踪した大店の若旦那が目撃されますが、事件の裏側は複雑怪奇でした。 若いころは無茶えおしてきた<根岸>ですが、<鉄造>と呼ばれた若いころの名残の赤鬼の彫り物があり、家来の<宮尾>と、旗本の息子を手荒くあしらったということで、謹慎中の同心<椀田>を直近におき、市井に起こる怪しげな事件を解決しながら、本筋の事件を解いてゆく構成です。 タイトルにある「うしろ猫」は、<根岸>が飼っている猫の名前ですが、人前では顔を見せず、後を向いているところから名付けられていますが、最後にに大きな伏線だったことが分かります。
キリンビール派であり、ウイスキーは昔から、 「ジョニ黒」 一辺倒ですので、あまり、サントリーとのお付き合いはありません。 <開高健>や<山口瞳>を輩出した社風は面白そうだなとは見ていました。 本書は、現在の<サントリー>の創業者<鳥居信治郎>が、14歳で薬種問屋に奉公に出たところからはじまります、一代記です。 「赤玉ポートワイン」の販売で大成功を治め、「やってみなはれ」精神で、本格的な国産ウイスクーの礎を気づいていく果てなき兆戦の過程が面白く読めました。
本日は、<渥美清>(1928年3月10日~1996年8月6日)の没後20年に当たります。 食堂のテーブルでご一緒させていただく<カラサワ>さんは、映画好きで入院中は話しが合いました。娘さんが『寅さんのむこうに』の写真集を手土産に見舞いに来られ、運よく貸していただきました。 長年に渡る<寅さん>ファンとして、<山田洋二>監督や歴代マドンナの回想録、面白く読めました。
<湊かなえ>は、『Nのために』 ・ 『少女』 ・ 『蝕罪』 などの作品で、ミステリー作家としてのイメージが強いのですが、本書は趣きが異なり少し戸惑いました。 丸福デパートに努める「律子」は29歳。同僚の「由美」は上司と不倫、医者の妻である姉から山登りに誘われた「希美」は翻訳の仕事をしていますが親のスネをかじっています。帽子デザイナーの「柚木」は、以前の彼の面影を引きずっています。 まじめに、正直に、懸命に生きてきた彼女たちがそれぞれ経験する登山を通して、女性心理を丁寧に描きこんだ連作短篇小説でした。 各登山ルートの描写もこまかく、山岳小説としても楽しめました。
(三) に続き完結篇となる(四)です。 第(二)巻では、壮絶な地上戦の連続でしたが、ようやく村上水軍の本領発揮する海上戦が開始されました。 <景>は。著者んp想像の人物ですが、登場する人物たちが、史実に基づくだけに、現実感を以ってせまってきます。 泉州の海賊<七五三兵衛>との結着もつきひと安心したところで終わり、<景>のその後の人生が気になる終わり方でした。
前作 (一) ・ (二) の発売から、一ヶ月間を開けて(三) ・ (四) の続刊の発行です。 (二)では、信長軍と一向宗の門徒たちとの壮絶な地上での戦いが描かれていました。 家名を守るために戦う武士たちと勘定で物事を考える<景>は、序文は、戦に向いていないことを自覚それでも、りふじんな小田軍団にはむかっていきます。 時遅しの感がありますが、毛利家・村上家の軍船も参戦、英知を掛けた軍船での戦いが始まります。
警察官が拳銃を奪われ、その銃で殺される事件が発生。犯人は、同じ京都府警の刑事だと断定されるが、逃走。 被害者の息子<隆司>と容疑者の息子<伸人>は親友だったが、この事件を契機に決裂してしまいます、 この事件を境にそれぞれの家族は、悲惨な生活を強いられますが、<伸人>は映画撮影の小道具係として人生を歩み、<隆司>は事件の信じ湯を求めて警察官のなっています。 事件の真実がわかり、免罪事件だとわかったあとも、<伸人>の父は闇の組織から命を狙われていて息子との再会がかないません。 それぞれの苦難をのりこえながら、真の友とは何かを問う重たい内容でした。