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くまごろうのひとりごと

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窓の話17『ガラスの破損と熱割れ』

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ガラスと言えば簡単に割れるこわれものの代表のようなもので、最近ではあまり聞かないが、昭和の頃は少年たちが道路や狭い公園で野球をやってご近所の窓ガラスをよく壊したものだ。

ガラスは圧縮応力には比較的強いが引張り応力には弱く、例えば野球のボールがガラスに当った場合、ボールの当ったガラスの外側表面には圧縮応力がかかるので耐えられても、裏側表面にはたわみによる引張り応力がかかり、この応力が裏側表面にある目には見えない微細な傷に集中してガラスが裏側表面から破損する。この微細な傷は製造過程で溶融したガラスが他の物体と接触して生じるが、もしもガラス表面の微細な傷が皆無なら、ガラスの引張り強度は鉄よりも高いと言われている。

ペアガラスの窓では、外側のガラスにボールなどが当って破損する時、外側のガラスが飛来した物体の運動エネルギーを吸収するため、内側のガラスは割れないことが少なくない。この場合断熱性能などは損なわれるため、ガラスパネルを交換しなければならないが、交換までの間雨風をしのぐことは出来る。

割れやすいガラスを割れにくくした強化ガラスがある。普通の板ガラスをその溶融点に近い約700℃に加熱した後急冷することにより、ガラスのすべての表面にあらかじめ圧縮応力を付加し、何らかの理由で発生する引張り応力を緩和することが出来る。このような強化ガラスは同じ厚さの通常のガラスに比べ4倍程度の強度がある。また強化ガラスは割れる際に破片が粒状となり、通常のガラスのような鋭利な端部が発生しないため危険性がない。

強化された窓ガラスでもバットなどで叩けば割れるが、防犯用には2枚のガラスの間にプラスチックのシートをはさみ接着した合せガラスが使用される。ガラスの厚みや中間のプラスチックフィルムの厚みにより高い防犯機能を発揮させることが出来る。なおこのような合せガラスは割れても破片が飛散しないため、自動車や鉄道などのウィンドシールドにも広く使用されている。

なお、網入りガラスは防犯機能があるように見えるが、火災などでガラスが高温にさらされた時、ガラスが割れて脱落することを防ぐために金属製の網が入っているのであり、防犯性能は網のないガラスと大差ない。余談だが網入りガラスの網はガラス切断面では露出しているため、これが水分に触れると錆をおこし、それが原因で割れることがある。これを網入りガラスの錆割れと言う。

建物が破壊するような地震に対しては窓ガラスだけ耐えても意味がないが、窓ガラスの耐震性については板ガラス協会による昭和40年の駿河湾沖地震や昭和53年の宮城県沖地震に関する窓ガラス破損データがある。これによればスチールサッシュのパテ止め固定窓がもっとも危険だと言う。ガラスをサッシュに固定しているために建物の震動が直接伝わりやすいためで、アルミサッシュに柔軟性のあるシリコンシーラントを使用すれば、窓ガラスの耐震性は格段に向上する。

ガラスの中心部温度が周辺部に比較して高いと、中心部の膨張が周辺部に応力となって負荷され、この応力がその部分の強度を越えるとひび割れを生じるが、このようなガラスの破損は熱割れと呼ばれる。熱割れが発生しやすい条件はガラス中心部と周辺部の温度差が大きくなる天候であり、寒い冬の日の夜、寒い冬の日のとても天気の良い日中、とても日差しの強い夏の日中などがこのような条件となる。また室内側にカーテン、ブラインドなどがガラスの近くにあると、中心部と周辺部の温度差をより大きくする傾向があるため、熱割れを起しやすくなる。熱割れを起したガラスでは破壊線(ひび)がガラスの端部では直角になるのが特徴で、破壊線が途中で分岐しない非分岐破壊は熱応力が比較的低い場合であり、破壊線が枝分かれする分岐破壊は熱応力が高い場合に発生する。窓ガラスが割れたとき、破壊線がガラス端部で直角になっていない場合はその原因は熱割れではなく、投石やボールが当るなどの機械的な衝撃によると考えられる。防火用の網入りガラスは切断する際にガラス端部に傷が付くことによって周辺部の強度が低下し、普通のガラスに比較して熱割れを起しやすい。
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ロボット兵器

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ロボット兵器
2009年12月のブログルにロボット兵器のことを書いたが、昨日のNew York Times電子版に軍事用無人機に関する記事が掲載されている。

これまでにロボット兵器を使用したことが知られているのはアメリカ、イギリス、イスラエルだが、現在、軍事用無人機はアメリカだけではなく、中国およびイスラエルが積極的に開発しており、更にロシア、インド、イランなども開発中で、既に50カ国以上が偵察用または攻撃用無人機を所有しているとのことだ。先月23日に打上げられた日本のH2Aロケット19号も北朝鮮のミサイル発射を監視するために開発され、その目的は地上60センチの物体を判別出来る偵察衛星なので、日本もこの50カ国に含まれているのだろう。

オバマ大統領は就任以来、イラクやアフガニスタンでのアメリカ人兵士の死傷者を減らすためにロボット兵器の開発を促進してきたが、アメリカは現在7,000機の偵察用および攻撃用ロボット兵器を所有しており、今ではアメリカ空軍は戦闘機や爆撃機のパイロットの養成よりも無人機のパイロット養成に力を入れている。

先週ボストンの若者が、爆発物を搭載した模型飛行機による連邦議会議事堂の攻撃を計画した罪で逮捕されたことは記憶に新しい。また先月イエメンでアルカイダのナンバー2であるアメリカ国籍のアンワル・アル・アウラキが無人機の攻撃により殺害された。イラクやアフガニスタンでは無人機による攻撃は日常的に行われ、パキスタンでも2,000人以上の敵兵を殺害している。

ラジコンヘリコプター愛好家のくまごろうとしてはリモコン模型が兵器に使用されることは悲しいことだが、所詮戦争とは殺し合い、兵士が発射したミサイルと無人機による殺傷に違いはない。鉄腕アトムの世界のように、ロボットは決して人に刃を向けない世の中になってほしいものだ。
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窓の話16『木製窓に使用される木の種類』

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窓の話16『木製窓に使用される...
窓の話3『窓枠とサッシュの材質』で述べたが、現代の住宅用窓に使用される材質としては木材の他にもアルミ、塩ビ樹脂、ファイバーグラスなどがある。今回は窓の話題とは少し離れるが、住宅用窓としてはもっとも優雅な木製窓に使用される木の種類について見てみよう。

あらゆる天候に耐えるシェルターとしての住宅の機能を考えると、窓の強度や熱的性能に加え、雨や紫外線などに対する耐侯性も重要である。、ログホームやシダーホームのようなエクステリアにも木を重視した住宅では、マホガニーやダグラスファーのような比較的耐侯性の高い樹種の窓枠やサッシュに塗膜の薄いクリアコートやステインを塗布することにより木目のある窓を楽しむことが可能である。しかし窓に広く使用されているパイン材の窓ではクリアコートやステイン仕上げでは過酷な環境に対し十分な保護膜とはならないため、以前はペイント塗膜による保護が必要であった。最近では10-15年に一度ペイントを再塗装しなければならないメンテナンスを避けるために、アメリカでは焼付け塗装したアルミニウムをはり付けたアルミクラッドの木製窓が量産されている。

窓の屋内側に目を転じると、ドアや家具などと共に窓もインテリアの一部であり、特に木製フローリングや木製ドアを用いた住宅には木の窓枠やサッシュが持つ温かみは捨てがたい。
木製の窓枠やサッシュといっても使われる樹種によりインテリアに与える印象は異なる。

写真③はアメリカ製の木製窓では一般的なウエスタンパインで、その淡い黄色味を帯びたまっすぐで均質な木目の美しさと加工性の良さが特徴である。窓にはパインのフローリングやパネリングなどとは異なりほとんどふしのない板目のものが窓に使用され、クリアコーティング仕上げではニュートラルな印象を与える。一旦乾燥させると湿度変化による影響を受けにくく寸法安定性が高いため、正確な木組みが必要な家具や窓の材料として広く使われてきた。その表面は適度に硬く、不注意にかたいものをぶつけても他のソフトウッドほど傷にはならない。また伸縮が少ないため、割れ、反り、曲りが少なく年月を経るに従って美しさを増す。個性を強く主張しないためウェスタンパインに濃い色のステインを塗布すると、より荘重な雰囲気のチェリーやアルダーにもよくマッチさせることが出来る。

写真④はダグラスファーで、ファー(もみ)と呼ばれるがもみではなく、日本では米松と呼ばれるが松でもない。正式にはとがさわら(つが)に近い。アメリカ大陸の西北部が主たる生産地であり、心材の明るい赤褐色はまっすぐの美しい木目模様によって引き立てられ、光にさらされると次第にその濃さを増す。ダグラスファーは機械的強度が高く、ツーバイフォー住宅の構造材としても広く使用されるが、窓に使用するものは柾目で鋭利な刃を用いた機械加工により滑らかで光沢のある表面が得られる。

写真②はオーク(なら)で、家具やフローリングの他にウイスキーやワインの樽としても広く使われている。個性の強いはっきりした木目が特徴であり、濃い色のステインを塗布すると重厚感がある。ヨーロッパやアメリカではフローリングの他にドア、キャビネットに加え額縁、まわり縁などのモールディング、更にはパネリングにも広く使われており、それらにマッチさせるために窓の室内側をオーク仕上げとすることも少なくない。

写真①はマホガニーで、寸法安定性に優れ狂いや割れが少なく心材は赤みを持った光沢があることにより高級家具や楽器に使われるが、世界の銘木と呼ばれるほど需要に対し供給が少ないため高価である。耐侯性が高いので、クリアコートまたはステイン仕上げによりダグラスファー同様屋外側にも使用出来る。

写真⑤はウォルナット(くるみ)で、マホガニーやチークと共に世界三大銘木のひとつである。中世のヨーロッパでは高級家具材として普及し、アメリカでもホワイトハウスやアメリカ議会の家具として多用されている。木質は重厚で狂いが少なく、強度と粘りがあり、加工性や着色性も良い。

これらの樹種に加え、アメリカの高級木製窓メーカーはメープル(かえで)、チェリー(さくら)、アルダー(はんのき)などのインテリアを持った窓も製作している。メープルは黄褐色で艶出し加工により美しく仕上がり、現代的な雰囲気があって、メタルやガラスの家具との調和も良い。チェリーは木肌が緻密で仕上がりが美しいため高級家具材としてヨーロッパやアメリカで長く愛用されており、高級住宅では床材、パネル材、ドア材などにも使用される。アルダーは貧乏人のチェリーと呼ばれ、美しく仕上げられたアルダーはチェリーに似た高級感がある。

日本人は古来より木に対するこだわりがあったはずだが、こと木製窓に関してはあまり注意を払ってこなかったように思える。日本でもアメリカのように、特に高級住宅ではフローリング、ドア、モールディング、キャビネット、更には家具とマッチした樹種の窓を楽しむようになってほしい。
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窓の話15『ペアガラスの耐久性』

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窓の話15『ペアガラスの耐久性...
1枚ガラスの窓では割れなければガラスの寿命はあまり気にすることはない。中世に作られたヨーロッパの大聖堂のステンドグラスなどは数百年経った今でも窓ガラスとしての役割を果たしている。それに対しペアガラスの寿命はずっと短い。

窓の話その5『ペアガラスの構造』で述べたように、ペアガラスは2枚のガラスと一般的には金属製のスペーサーによって構成され、ガラスとスペーサーの接合にはメーカーによりポリイソブチレン、ポリサルファイド、ポリブチレン、ポリウレタン、シリコンなどの合成接着剤が使用される。ペアガラス内部にはシリカゲルやモレキュラーシーブなどの乾燥剤による乾燥した空気が封入されているが、ガラスとスペーサーの接合が不十分だと外部から水蒸気が侵入し、あるいは接着剤によっては水蒸気の透過性が十分低くないために、時間の経過と共にペアガラス内部に水蒸気が侵入することもある。更に接着剤によっては時間の経過による紫外線などによる劣化もペアガラス内部への水蒸気の侵入を許す。一旦このような現象が起こるとペアガラス内部の水蒸気は気温の変化などにより凝縮して結露がおこり、ペアガラス内部が曇ってガラスの透明性が低下する。この現象をペアガラスの内部結露と呼ぶが、写真は内部結露を起こしたペアガラスで、このようなペアガラスは補修することは出来ないのでそっくり交換しなければならない。

ペアガラスには内部結露しやすいものとしにくいものがあるので、ペアガラスの窓を選ぶ時には次のような点に注意する必要がある。

1)スペーサーがスチール製の場合、ガラスとスチールの熱膨張係数の差がガラスとステンレススチールの差よりも大きいので接着剤に大きな応力がかかり、その結果気密性が低下しやすくなる。

2)スペーサーのコーナー部分が直角につき合わせられていると、コーナーが湾曲した形状のスペーサーよりも熱膨張による集中応力が大きくなり、その結果気密性が低下しやすくなる。

3)接着剤に関するある試験データによれば、ペアガラスで重要な水蒸気の透過性についてはポリイソブチレンが最も低く、ポリサルファイドはその約10倍、ポリシリコンは約100倍である。

アメリカのCardinal社が行った紫外線による劣化などを加味した接着剤の気密性能の加速試験によれば、もっとも長期間にわたり結露しないペアガラスはポリイソブチレンを1次シール、シリコンを2次シールとしたダブルシールを採用したコーナーが湾曲したものであり、同じダブルシールの接着剤でもコーナーが直角の突合せスペーサーでは寿命が前者の20%、ポリイソブチレン・ポリウレタンダブルシールやポリイソブチレン・ポリサルファイドダブルシールでは10%しかない。同じ試験ではポリサルファイドシール、ホットブチルシール、ポリイソブチレンシングルシールなどはそれよりも更に寿命が短い。

アメリカ複層ガラス製造者協会は協会員であるメーカーが製造した約50,000本にわたるペアガラスの内部結露をアメリカの14都市で15年間にわたり追跡調査したデータ(SIGMAデータ)を発表しているが、このデータによれば15年経過したペアガラスの9.5%が内部結露を起こしており、このデータより25年前後で50%以上のペアガラスが内部結露すると予想されている。すなわち一般的なペアガラスの寿命は15-30年程度と思われる。

Cardinal社は、前述の加速試験でもっとも耐久性の高かったポリイソブチレンを1次シール、機械的強度に優れたシリコンを2次シールとしたダブルシール、更にコーナーが湾曲したステンレススチールスペーサーを採用したペアガラスを製作しているが、アメリカ複層ガラス製造者協会のテストでは15年後の内部結露の発生率が0.1%であり、このテストデータを延長すると100年後でも僅かに1%前後の発生率を示している。このような高耐久性ペアガラスはアメリカの一部の木製窓メーカーに採用されている。

余談だが内部結露したペアガラスを交換する際には交換用ペアガラスのメーカーに注意を払う必要がある。十分な技術と知識を持っていないメーカーの交換用ペアガラスの寿命がわずか数年しかないことも珍しくない。
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窓の話14『窓のその他の性能』

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これまでに述べてきた断熱性能、遮熱性能、気密性能、水密性能、耐風圧性能などの他に、窓としての性能には、遮音性能、紫外線遮断性能、透視性能などがある。

遮音性能: 一般的に地下鉄の車内は90デシベル、交通量の多い街の騒音は80デシベルであるが、室内で快適な生活と感じられる騒音は40デシベル以下と言われている。音はデシベルで表される強さの他に周波数(高さ)により感じ方が異なる。JISでは屋外の騒音レベルから窓の遮音性の数値を差引いたものがおおよその室内での騒音と規定し、周波数ごとの遮音性によりT-1からT-4の4種類の等級を規定している。T-1は500ヘルツより高い周波数の遮音性が25デシベル、また遮音性が最も高いT-4では40デシベルとなっている。1枚ガラスの窓ではT-1のレベルに達しないものが多いがペアガラスの窓ではT-1を超え、窓のタイプによってはT-4レベルのものもある。日本では、防音性を考えた住宅と呼ばれているものでは通常T-1の性能の窓が使用されているが、これでは交通量の多い街では室内が40デシベル以下とはならず、静寂とは言えない。
 アメリカでは遮音性能をSTC(Sound Transmission Class)にて表示することが一般的だが、これは異なる周波数における遮音性能の加重平均であり、STC10は屋外騒音の50%が通過することを示し、STC20、STC30、STC40は屋外騒音のそれぞれ25%、12.5%、6.25%が通過することを示している。アメリカの高級木製窓メーカーの製品はSTC30を超えるものが一般的である。
 窓の遮音性能を高めるためには、きわめて薄いプラスチックフィルムを貼り付けたラミネートガラスを使用する、1枚ガラスよりペアガラスとする、ペアガラスより3重ガラスとする、ペアガラスの場合2枚のガラス厚みを異なるものとする、ペアガラスの2枚のガラス間距離を大きくする、などの方法が効果的である。

紫外線遮断性能: 窓際に置かれたカーテンや家具は月日と共に退色することがあるが、これは太陽からの有害な光線のためである。太陽光線はその波長により300-380ナノメートル(1ナノメートルは10⁻⁹メートル)が紫外線、380-760ナノメートルが可視光線、760-2,500ナノメートルが近赤外線と称される。この中で家具などを退色させる有害光線の波長は300-600ナノメートルであり、特に波長が380ナノメートル以下の紫外線がもっとも有害である。ガラスはその性質によりごく普通の透明ペアガラスでも約40%の有害光線を遮断するが、ペアガラスでは80%の紫外線遮断効果は一般的である。更に高い紫外線遮断効果が必要な場合には、ペアガラスの1枚にきわめて薄いプラスチックフィルムを貼り付けたラミネートガラスを使用することにより99%の紫外線遮断も可能である。

透視性能: 窓の話その2『窓の役割』に述べたように、採光だけが目的で外部からのぞかれない不透明ガラスの窓を除いては、美しい野外の景色をながめる眺望は窓の重要な機能のひとつである。窓に使用されているソーダライムガラスは、その特性として表面で可視光線を反射するため、透視性はガラス1枚当たり8%低下し、ガラスを2枚使用したペアガラスでは透視度は84%となる。断熱性や遮熱性を高めるためにローイーコーティングを行うと透視度は更に低下し、その程度はコーティングの材料や厚さによる。透視性の低下を少なく抑え、かつ高断熱性、高遮熱性を保つためには宇宙開発で発展した真空蒸着による極めて薄いコーティングの技術が必須である。アメリカの高級窓メーカーでは高断熱・高遮熱でかつ透視性が70%の窓を生産している。透視度が70%というのは一見低いように見えるが、ローイーコーティングされていない3重ガラスでは76%であり、また遮熱の目的で主に商業ビルなどで使用されるティントガラス(着色ガラス)では45%程度であるのに較べると、それほど低い数字ではない。
 余談だが、日本ではビルディングに取付けられたガラスは外から見ると鏡のように景色を映しているが、アメリカではビルディングのガラスに映る景色は歪んでおり、高速道路沿いの建物に映る景色を見ていると船酔いのような感じとなることがある。これは日本の板ガラスの方がガラス表面の平滑度が高いこと、建設会社がガラスパネルを取付ける際に景色の歪に配慮しているなどによる。しかし映った景色が歪んで見えるアメリカのガラスでも、建物の室内側から外の景色を見れば歪んで見えることはない。

アメリカではこれらの窓に関する性能の他にも防犯性能が要求される場合がある。これはForced Entry/Bullet Resistanceと呼ばれ、犯罪多発地区やハリケーンが頻繁に襲来する地域で考慮される。窓の話その13『耐風圧性能』でも述べたインパクトテスト http://www.youtube.com/watch?v=TL_j8sp8Vx8 と呼ばれる重さ5キロの角材を時速56キロで発射して窓にぶつけるテストなどに合格しなくてはならない。これらの窓やパティオドアに使用されるガラスは通常の焼きなましガラスはもちろん、焼入れした強化ガラスでも十分な強度がないため、プラスチックの薄膜をサンドイッチした積層ガラスが用いられる。またガラスだけでなくガラスの窓枠へのはめ込み方、窓枠の強度、窓枠の建築躯体への取付け方なども必要な強度が発揮出来る方法が取られていることは言うまでもない。
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窓の話13『耐風圧性能』

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住宅は人を自然から守るシェルターであり、そのような住宅の重要な構成要素である窓も自然環境に耐えうる強度が必要である。自然環境の中で窓が第一に考慮しなければならないものは風である。毎年フロリダ半島を襲うハリケーンは風速が毎秒70メートルに達することがあり、一旦住宅のひとつの窓を破壊すると室内に入った風は屋根を引きはがし、外壁を外側に押し倒すエネルギーを持っているので、このような地域で使用される窓やパティオドアはハリケーンによる風圧や飛来する破片にも耐えられなければならない。

1枚のガラスの耐風圧強度はガラスが厚いほど高く、また同じ厚みでは面積が小さいほど高い。またガラスに作用する風圧は風速の2乗に比例し、更に地上からの高さが高いほど大きくなる。日本の建築基準法では室戸台風の最大風速63メートル/秒を基準とし、地上からの高さ15メートルにおける許容風圧は186 Kg/m2となっている。また許容荷重=許容風圧xガラス面積の関係があり、ある試験データによれば厚さ3ミリのフロートガラスの許容荷重は180 Kgなので0.97 m2以下の面積のガラスが許容範囲となり、これより大きい面積のガラスを使用するにはより厚いガラスを使用しなければならない。因みに前述の試験データでは3ミリのペアガラスの許容荷重は230 Kgなので、このペアガラスは1.23 m2の面積まで使用出来る。

窓やパティオドアの耐風圧強度はガラスの強度だけでなく、窓枠・ドア枠の強度、ガラスの窓・ドアへの取付け法、更に窓枠・ドア枠の躯体への取付け法にもよる。窓の耐風圧強度は日本ではJISの、またアメリカでは窓・ドア製造者協会(WDMA)の基準がある。これらの基準は単位面積あたりの風圧で示されているが、よりわかりやすい風速で示すと下記のようになる。

JIS等級    風速    WDMA等級
S-1    36.0m/秒
      42.2m/秒    R-15
S-2    45.3m/秒
      48.9m/秒    R-20
S-3    51.1m/秒
      54.1m/秒    R-25
S-4    56.4m/秒
      60.6m/秒    R-30
S-5    63.1m/秒
      64.4m/秒    R-35
S-6    68.4m/秒
      68.9m/秒    R-40
      76.9m/秒    R-50
S-7    77.3m/秒
      84.4m/秒    R-60

WDMA等級はハリケーン地域向けのために更にR-80まで規定されている。日本では一般住宅用窓の耐風圧強度は1階ではS-1、2階ではS-2、3階ではS-3として設計されているが、アメリカの高性能窓メーカーの場合はR-40、すなわちJISのS-6以上の性能が標準となっている。

余談になるが、ハリケーン地域であるフロリダ州マイアミ・デード郡の窓・ドアの基準は厳しいことで有名だが、ハリケーンの際の飛来物規準についてはインパクトテストと呼ばれ、重さ約5キロのツーバイフォーの角材を時速56キロで発射してガラスにぶつけても破損しないことが求められる。このテストは http://www.youtube.com/watch?v=TL_j8sp8Vx8 で見ることが出来る。

またアメリカの高級木製窓メーカーでは144m2の住宅でのマグニチュード6.7の地震に耐える窓・パティオドアのテストを http://www.youtube.com/watch?v=q21pMDf6Wwo に示している。
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SONY

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2/8/2011付ブログルにくまごろうは親子3代にわたるSONYファンだと記した。このブログルではSony Exchange Programによりわがやの不具合のあるテレビを新品の液晶テレビに交換してくれたことに感激し、今後もSONY製品を愛用してゆくことを宣言した。

今年5月号の文芸春秋に立石泰則氏の『さよなら!僕らのソニー』という記事が掲載されており、これを読んで愕然とした。

ソニーは創業者である井深大氏と盛田昭夫氏が『他人のやらないことをやる。』と『他人真似はしない。』をモットーに独自の技術開発を続けてきた。トランジスターラジオ、トリニトロンテレビ、ビジネスとしては失敗したがベータ方式のビデオレコーダー、現在のディジタルカメラの元となったマビカ、ウォークマン、最近ではブルーレイディスクレコーダーやロボットなどソニースピリットは最先端技術商業化のシンボルでもあった。われわれ消費者の目に触れる機会は少ないが、映像放送分野や軍需産業でもソニーブランドは活躍している。

その後のSONYはものづくりだけではなく、音楽、映画、ゲームなどの業界に進出したが、このような他分野進出はソニー製品の販路拡大のためであり、ソニーの中心はあくまでもものづくりであった。それがストリンガー会長体制になってからソフトやコンテンツが中心にあって、ハードウェアはその周辺に位置付けられた経営が行われているという。ストリンガー会長はオープンテクノロジーを支持し、独自技術による製品開発を否定している。そのため冷遇された異質な才能を持った優秀な技術者がソニーを離れ、韓国や台湾の企業に移っているという。

この記事はソニーを永年追い続けてきたノンフィクション作家によるものであり、恐らく内容は正確だろう。45%の株主が外国人であり、会長は1年の大半をニューヨークで過ごすアメリカ人のソニーは世界企業であることは確かで、くまごろうや多くのソニーファンが想像していたものづくりにこだわる日本企業では全くない。

1970年代までのソニーのコーポレートスローガンは『日本が生んだ世界のマーク』だった。現在は『make.believe』だそうだ。この記事を読んで次にエレクトロニクス商品を購入する時、くまごろうはSONYを選ぶか自信がなくなった。
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窓の話12『気密性能と水密性能』

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窓の気密性能とはすきま風がどの位侵入するかを示すもので、室内外の気圧差をある設定値にした時のすきま風の量を示し、アメリカでは窓・ドア製造者協会(WDMA)の基準がある。この基準では室内外の気圧差を75パスカル(1気圧は101,325パスカルまたは101.3キロパスカル)とした時のすきま風の量が5.486 m3/m2-hr以下となっている。また日本ではJISのA-1、A-2、A-3、A-4基準があり、気圧差が75パスカルの条件ではそれぞれ750 m3/m2-hr、220 m3/m2-hr、60 m3/m2-hr、15 m3/m2-hrのすきま風に相当する。すなわち日本の最も厳しいA-4基準でもアメリカ基準の約3倍のすきま風を許容することになる。ちなみに75パスカルの風圧は風速に換算すると約11m/秒に相当し、気象庁の定義では木枯らしは風速8m/秒なのでやや強い木枯らしの条件と言える。

先にその9『結露』で示したように150㎡の平均的な住宅の居住空間を375㎥とすると、面積が6.25㎡のJIS A-3基準の窓があると1時間で室内の全空間に匹敵する量のすきま風が入ることになる。実際には窓の全面積はもっと大きいので、A-3基準の窓では隙間だらけということになる。日本製の窓やパティオドアは開け閉めがとても軽く操作が楽だが気密性が十分ではなく、これがアメリカに日本製の窓やパティオドアが輸出されない理由のひとつと思っている。反対にアメリカ製の窓の操作が重いという苦情をよく聞くが、これはアメリカ基準の気密性を達成するためにやむを得ない面もある。

窓の水密性能とは強風雨の際の室内への雨水の浸入を防ぐ性能を示すもので、試験方法は若干異なるもののアメリカのWDMAでは1時間に204ミリ、日本のJISでは240ミリの雨量における風速によって示す。なお、日米の水密テストにおける雨量がほぼ同じであることは、強風雨の際は降雨量については集中豪雨ほどの量には達しないという事実に基づいているためである。日米の基準と風速の関係を下記に示す。

JIS等級     風速     WDMA等級
W-1       12m/秒    R-15
W-2       16m/秒    R-25
W-3       20m/秒    R-35
W-4       24m/秒    R-50
W-5       28m/秒    R-70

一般的に市街地住宅用にはW-3、強風地域住宅用には環境によりW-4またはW-5 基準を満たす窓やパティオドアが望まれる。

1990年代に日本でアメリカからの輸入住宅がもてはやされた頃、十分な知識のない業者によりアメリカ西海岸の比較的温和な地域向けの窓が日本に多く輸入され、台風の時に雨水が室内に侵入してアメリカ製の窓やパティオドアは性能が劣ると大騒ぎしたことがあったが、住宅を建設する土地に必要な窓の等級を確認していればこのような問題は避けられただろう。しかしアメリカ製の窓やパティオドアは性能が劣ると喧伝されたことにより、その後日本への輸出が激減したことは高性能なアメリカの窓メーカーとしては心外なことである。
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窓の話11『快適な窓』

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アメリカでのある実験データによれば、外気温が氷点下12℃の時、1枚ガラスの窓では室内側のガラス表面温度は氷点下9℃であり、たとえ室内温度を21℃になるよう暖房を設定してあっても16℃に設定してあるように体に感じられる。窓ガラスは部屋の冷熱源となり、特に露出した腕や足がひやっとして不快に感ずる。これは輻射伝熱現象により温かい皮膚表面から冷たいガラスに熱が移動するためである。輻射伝熱は通常のカーテンやブラインドでは防ぐことが出来ない。

このような部屋で暖房の熱源が窓から遠いところに設置されていると、暖められた空気が天井付近に上昇した後、冷たい窓ガラスで冷却され床に下降して足元が冷えるという、不快なコールドドラフト現象を引き起こす。暖房熱源を冷たい窓ガラスの下部に設置して冷気が床に流れないようにするのはコールドドラフト現象を防止する方法のひとつである。

先の実験データによれば単なるペアガラスの窓の場合、前例と同じ条件では室内側ガラス表面温度は7℃となって1枚ガラスよりかなり改善され、室内設定温度が21℃だと体感室内温度は19℃となる。しかしこの場合でも窓に近づくとひんやりして快適ではなく、また暖房器具の置き方によってはコールドドラフト現象が発生する。

高性能なローイー(低輻射性)アルゴンガス封入ペアガラスの場合、同じ条件では室内側ガラス表面温度は20℃となり、室内設定温度が21℃では体感室内温度は20℃となる。また窓に近づいても不快感はない。

外気温が氷点下12℃というのは北海道でもない限り少し極端な条件だが、窓の話-その9『結露』で述べたように外気温が0℃の場合、1枚ガラスの窓の室内側ガラス表面温度は5℃程度なのでこれでは快適な窓とは程遠い。快適性という点でも高性能なローイー・アルゴンガス封入ペアガラスを選択する意義はある。

夏の強い日差しについてはどうであろうか。1枚ガラスの窓では室内側ガラス表面温度は38℃に、また単なるペアガラスの窓では室内側ガラス表面温度は32℃に達するが、高性能なローイー(低輻射性)アルゴンガス封入ペアガラスでは28℃程度である。、夏の窓を通しての熱移動はほとんどが太陽からの輻射伝熱によるものであり、室内側ガラス表面温度が上昇することと共に射し込む輻射熱によっても不快に感じる。アメリカ空調技術者協会(American Society of Heating, Refrigerating & Air Conditioning Engineers, ASHRAE)では、その基準55にて新陳代謝率、着衣の断熱性、温度、輻射熱、空気の流速、湿度などを勘案した居住者が快適に感ずる夏の環境条件を規定しているが、この基準によれば室内の空調を25℃に設定していても1枚ガラスの窓の部屋では68%の人が不快に感じる。また遮熱性の高くない単なるペアガラスの窓の部屋では56%の人が不快に感じペアガラスは遮熱にはあまり貢献しない。

これに対し遮熱を目的とした高性能なローイーアルゴン封入ペアガラスの窓を取付けた部屋ではわずかに15%の人が不快に感じるだけである。ここに述べたように、エコと言うことだけではなく快適性を得るためにも高性能なローイーアルゴン封入ペアガラスの窓は重要な役割を担っている。
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東北地震と原子力発電

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今度の三陸沖を中心とした大地震は自然の驚異をまざまざと見せつけた。地震に耐えた家屋も津波にはあっけなく流され、鉄骨やコンクリート造りの建物も甚大な被害を受けた。いつものことではあるが、自然の猛威の前では人の力が及ばないことをつくづく思い知らされる。被災された方たちに深く同情すると共に、亡くなられた方々の冥福を祈るばかりである。

アメリカで見るテレビニュースでは津波に襲われ瓦礫の山と化した町や、避難所での不便な生活を伝えているが、救援物資を届けるために大勢の人たちが努力しているので、避難している人たちは希望を持ってもう少しだけがんばって欲しい。輸送ルートが復旧し、通信が回復すれば日本中の人たちが被災者を支援することを確信している。

福島第一原子力発電所の事故については、原子炉およびその周辺建屋がこのような甚大な地震に耐えたことは評価すべきだが、報道によれば海に隣接して設置されていた非常用電源設備が津波の被害で消失し、原子炉冷却および燃料棒貯蔵設備のための給水が不可能になって、現在、きわめて憂慮すべき状態になっているようだ。

元石油化学プラント設計の技術者として最初に思ったのは、なぜ非常用電源設備がもっとも津波の被害を受けやすい場所に設置されたのか?という疑問だ。バックアップ設備は一朝ことある時に稼動するものであり、あらゆる天変地異においてもっとも安全な場所に設置すべきものである。原子炉建屋よりも内陸側に設置されていれば今回の事故は防止出来たのではないだろうか。

また今日のニュースで東電が給水ポンプを復旧するために今日から発電所電源の回復を図る、と発表していたが、ヘリコプターで水をまくことを考えるより電源の回復の方がはるかに優先順位が高く、もっと早く計画されるべきではないだろうか。

現場の状況がわかっていないのにあえてコメントすれば、まもなく開始される予定の警視庁の機動隊による燃料棒貯蔵プールへの放水よりも、このプールへの通常の給水ラインに接続して給水した方が確実に思える。放射能レベルの高さによりこの給水ラインへの接続が困難、あるいは給水ラインのバルブが閉じていて給水不能な状態なのであろうか。

今回の原子力発電所事故により、世界中の多くの人々が原子力発電に否定的になることを憂える。確かに福島第一原子力発電所では甚大な事故となったが、隣接の東北電力女川原子力発電所は設計通りに停止している。十分な安全設計がなされた原子力発電所は今回のような大震災でも耐えられることを強調すべきである。環境に悪影響のある化石燃料消費を削減するためにも原子力発電、さらにはもんじゅのような増殖炉による発電は重要である。今回の事故を政治問題とせず、原子力発電が純粋に技術的に議論されることを望んでいる。
#PC #テクノロジー #ネット

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