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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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パイオニア詩人

thread
図書館には詩集がある
私の至福の時間を棚から選ぶ

有名な詩人の詩と対談が書かれたもの
分厚い本を抱え明るい場所へ向かった

そこには
サービス精神たっぷりの
とても素晴らしい文字が繋がり

プロの詩人がいるもんだ
関心するばかり

私が感じたのは芸術でない詩
エンターテイメントな詩
そんな印象だった

詩はくだらないもの

詩人の言葉には愛情が見えている
生きた世代の照れという美しさがあり
私にはない時代の色に感銘した

自分の父親と被る面影
職人の現役詩人に会えた幸せ

そして
どんな言葉で締めくくるのだろう
そこに興味が唆られるのは
不謹慎なことでしょうか

いや
そこは聞き逃してはいけない

#詩

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昭和の図面書き職人(東京編)

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あっし(あたし・わたし)は外の空気が吸いくなりまして、設計事務所を抜け出しタバコを吸っていたのであります。そこへ、課長さまがいらっしゃって「仕事が詰まってんだから、事務所に戻ってとっとと書け」なんて、申しましてあっしのくわえていたタバコをつまんで、ポイって投げてしまうのですから、いただけない話で。課長さまは図面も書かずにひとの尻しか叩くことしかできない、へっぽこ野郎でございます。あっしが会社のためどれだけ身を粉にして働いているのかなんて、雲の上の話なのでしょう。広尾ガンガンヒルズのサッシ(窓枠の建材)を全棟、あっしが全て徹夜して線を引き続けたというのに、課長さまは「取引先へ行ってくる」と、おっしゃりパチンコへ行かれてしまうのですから、間尺に合わないことでございます。あの方が課長さまなのですから、あっしはもうこの会社にたいそう呆れちまった次第で。課長さまの頬に一発、食わらせていただき会社からさよならいたしましょう。そりゃ、スキッとするにちげえねえ、なんて思うのでございます。

まあ、あっしもこの業界で食っていかなきゃ生きていけねえ身、チンピラみてえなことはしたくはございません。なんせコブシが汚(けが)れるってえのは、いただけねえことと思いますし、この手は大事な商売道具ですから、課長さまを殴るにはもったいないでございます。なにかぎゃふんと言わせる企てはないかと考えたのです。そんなわけで、図面の締め切り三日前に仮病を使い会社を休むという流れになりまして。今、てえへん(たいへん)大きな仕事が入っていまして、その図面を書けるのはあっしだけ、同じ課の連中には無理なわけです。それで課長さまがあたふたすんのを想像しますと楽しくなったのでございます。

案の定、課長さまから電話が来まして。
「おい、齋藤くん、具合はいかがかな、お見舞いはバナナかい、メロンかい?」
なんて、手のひら返すようなこと課長さまがおっしゃり、あっしは僭越ながら言葉を返したのでございます。
「そうですね、きれいなお姉ちゃんがメロンをあーんと食べさせてくれたなら、治るかもしれませんが」って。
そしたら課長さまが、ほんとうに網目のついた大きなメロン数個とお姉ちゃんの裸の本を、えっちらおっちらと持ってやって来るのですから、おったまげたわけで。どんだけ、他力なんですかね。自分で図面ぐらい書きゃ済むのですから。けど、課長さまの書いた図面は現場のでいく(大工)から「ヘッタクソな図面だな」って、ほざかれるくらい使えねえ代物で。線もろくに引けねえ課長さまは、口だけは金魚みたいにパクパクしてしゃべり続けるのだから、滑稽で憐れにも思えてきやした。なんで、やっこさん(あの方)が課長さまになれたか、とんと理解できませんで。まあ、べっぴんさんのあの本をめっける(見つける)才だけは、右に出るものはございませんが。

結局、締切日も出勤しませんで、こんな会社なんて辞めようと思ったのです。それでもまた課長さまから電話がかかって来まして 、「具合はどうだ。もう、大丈夫なんだろう。頼むから、締め切りに間に合わせてくれ。今月分の給料は、少し色つけてもらうから、なあ、出勤できるだろ」って申します。
「するってえと、指五本分になりますかね」
あっしはぶっきらぼうに発しました 。
「んっ、二本が限界だ」
「あいたた、また頭が痛くなって」
「わかった、わかった、では三本出そう」
「四本。ここは、譲れませんよ」
「ふぅ〜、わかった四本な」
それで、事務所に行き特急並みの速さで図面、書きました。するってえと、課長さまがニタニタ顔してあっしの手を握りやがったもんだから、情けねえ男だねえ、なんて思ったのです。その後がさらによろしくございません。課長さま、あっしに爆弾を投げたもんですから。給料を指四本分の上乗せ、ってことだったのですが、一本は一万円ではなく、千円札を四枚上乗せた給料を渡してきたんですから、たまげてしまい、あっしの頭がドドンっと爆発したわけで。

けっきょく、課長さまの顔はもう拝みたくないと会社は辞めまして、あっしは自営で設計屋を始めたってわけです。それでも、課長さまが懲りずにまたあっしに仕事を依頼してきやがるのには、開いた口が塞がりません。そりゃ、あっしでないと書けない難しい図面で、札束を目の前にちらつかせて来るのですから、ここまで来ると尊敬してしまうのでございます。結局、あの手この手で、ひとにやらせて仕事を納めてしまうのですから、たいした玉ですわ。そこに課長さまが出世したわけがちらりと見えたわけです。けど、やっこさんを、いやいや課長さまをひととして認めたわけじゃありませんぜ。

「まあまあ、そう言わずお代は弾むから」
「図面、一枚を三千円の二十枚以上なら」
「二千円 が限界だな」
「仕事には困ってないので、ほかをあたってくださいな」
「なら、二千五百円でどうだ」
「それでは、即払い、ってことでおねえげしますぜ」
「わかった、助かる。では、やってくれるんだね」
「ガッテンでやんす」
それから、課長さまとは二十年の付き合いっていうのも、腐れ縁ってことですかね。七面倒くせえ付き合いをこなすのも、黒っぽい(プロの)稼業でやんすかね。

#詩

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輝ける場所を

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やっと見つけた
僕が輝けると思える場所

だけど今は少し違って

表現者にとって舞台がなくては
寂しささえも演じられない
落ち着かない足取りで
綴ってみればそれは孤独の詩(うた)

上手く言えないんだけど
僕は振り出しに戻ったようだ
あの孤独な詩作の日々

いや、一周まわって来たはずだから
ひとりで次の階段を上れるはずなのに
なぜだろうこんなに寂しいのは

僕が求めていたのは
詩作上のスキルアップなんかじゃなく
詩を介して湧く情の目覚めと紐づけ

励ましだったり

繋がりだったり

志しの同行者がいる安心感の
癒しだったのかもしれない

でも、さよなら大好きな場所
僕はもう背中を押され次の階段へ
向かっているのだから

乗り越えなくては
次の輝こう場所も現れやしない

それが孤独の詩作であろうと
僕は詩を綴り続けなければ容易く
崩れてしまうのだから
思いに思いを焦がし
吐き出す言葉は詩的に連を重ねよう

まだ見えぬ次の場所
恩恵だけは忘れずにやはり詩を綴り続ける

僕にはそれしかなく
それしか出来ないのだから

#詩

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はぐれ雲

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はぐれ雲


はぐれ雲は高層ビルに隠れ
僕の様子を想像している

あれは夢ではなかったはず
孫悟空のように君に乗っていた

君は僕の指笛から逃れようと
抵抗してじっとしている

それなら驚かしてやろう
ガラス張りに写るしのび足で微笑み
高層ビルの角まで進んでみる

僕を乗せてどこへ行くんだい
それで君が解放されるのだから

さあ、僕を乗せて……

あれっ、一面の青空
雲ひとつない眩しさを浴びる

ああ、僕がはぐれ雲だったんだ
自分に諦めた時、君とはぐれたんだ

僕はいつしか追いつくだろうか

心が雲に乗るだろうか


#詩

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息子へ

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何もせず
自分はどうにかなる、大丈夫
って、のは逃げだからな。
世間は上手く出来ていて、
そういうのをすべて知っているから。
努力に勝るものはなく、
突き詰めていけば努力は充実になり、
楽しみになる。
当たって砕けろ!
まずは当たって行かなくちゃな。

#詩

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着ぐるみ公園

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たなびくアリの黒波
とても大人達に似ているね
黒基調の衣をまとい
行ったり来たり
休み返上で働いている
お疲れさんですね

日曜日の公園
解放された
時間と固まった表情

僕らはここで
いろんな衣をまとう

サルのように
手を叩き笑い

カラスのように
ブランコで宙を舞い
カァ カァ 鳴く

ジャングルジムのてっぺんから
楽しいですよ
お天道様へ
ハトになって手紙の配達

ガオッ ガオッと
ライオン
子どもたちを追いかける
ケラケラ笑いながら
逃げてゆくバンビ
それを見ている風神さま
本気になってはいけませんよ
大きなうちわをひとふりして
大人だけに
くるりんと弾みをつけて
風を起こすのさ

アリの時に浴びる
向かい風とは
まったくべつもので
心地よいのさ

ああ
ひとやすみ
ひとやすみ
ベンチに座ってしまうと
ナマケモノのように
だらりんこ

コトリがチュンチュン
袖を引っぱって
遊ぼう
遊ぼう
さえずっている

パオーンーと
短い鼻に腕をあてがって
ゾウは答えるのさ

楽しい時間は
チーターよりはやく
薄暗くなると
コウモリになる
パタパタ
パタパタ
夜の不気味な演出で
子どもたちを
巣に促すのさ

家路をなぞる
カメの親子
まだ終わらないで日曜日
ゆっくり
ゆっくり
歩くのさ

ただいま

おかえり

あら 三人とも
カバみたいに
泥だらけね
先にお風呂
入ってちょうだいね

はーい
はーい

はい

#詩

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幸せだにゃん

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幸せだにゃん

平和について考える時
まず猫ちゃんのまったり主義を
知ろうとすることが大事だ

猫じゃらしがわざとらしく動く

好奇心が強く
自分の安全を見極めながら手を出す
夢中になってしまっても
よく見てカラダは反応する

ちょっと疲れたらカラダをひいて
腹ばいになり目はキョロキョロ

右、左、上、あっち

左、右、上、手前

ここぞ、というところで突進
猫じゃらしをしっかり目で追い
ジャンプしてゲット

表情ひとつ変えないで
猫じゃらしを咥えて秘密基地へ

そして、猫ちゃんはまったり
無防備で眠っているけれど
ちょっとした音で目が開くのさ

防衛本能とうまく付き合い
口元からは吹き出しが現れて

幸せだにゃん

そう書いているんだから
猫ちゃんは平和の象徴なんだな

#詩

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チェロ × 2

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小刻みに揺れる始まり
淡々とアンダンテで破壊され
最上の精度で新生される俺

リズム
旋律
2挺のチェロがエッジを効かせ
仕掛けてくる

徐々に
弦を激しく弾く弓
粘度を失った松脂が飛び散り
奏者1の息づかいは
俺を切り離してゆく魔王の吐息
未来に飛ばされた頭
過去へ歩き出す足
心は笑気を吸わされたまま
リズムの脈を打つ

旋律はセレンディピティを持たせ
遠くにいる少年に入り込む
いつかどこかの懐かしさに癒されると
クールな微笑みを見せる奏者2

意表をつく変調
プレスト

力強いスタッカートは蒸気機関車の機動力
その振動に揺られる心地よさ
リズムの速さと真逆に
俺は車窓から
緩やかな旋律に乗って麦畑を見ている
懐古趣味に浸り
知らぬ農婦に手を振る

2挺のチェロが奏でる安定感
旅は永遠に続く安らぎ
終わらない風景
終わらない夢のように

そして
ふたりの奏者は目を合わせ
浅く頷く

突然の霹靂
打ち込まれた光
痺れる俺

さらに
リズムは剛腕による最速
荒馬の尻尾は弾き踊る

トレモロ奏法の早弾きで旋律は目覚める
クラシカルな風景は一転して
ハードロックな都会に突っ込む

俺は振り飛ばされそうになった瞬間
弓は短く切られた

旅は終わりを告げた

音なきホールが
目的地に着いたことを気づかせる

ひと呼吸の時間を与えられ
現実に戻された

ブラボー

俺は
旅の続きを熱望して
いつまでも
手を叩き続けた


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香ばしき秋

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ビルの谷間では見えぬ稲
乾き始めた風に実りの秋は
色づいてきただろうか

轍を上手に跨ぎ
イナゴの上をトンボが飛んで
雲の向こうにはくれないの夕日

僕は少し早めに出勤し
職場近くの公園
目を閉じ香ばしき風の匂い
贅沢なひと時にほっこり

今日の素晴らしい始まり
幸せの風を感じながら

#詩

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黒と白のスパイラル

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ピアノの響きを突き刺してくれ

小心者の繰り返しに終止符を
クレージーな早弾きで

都会の景色が奏でられると
コーヒーカップを手にしたまま
街が歩き出し僕を置いてゆく
口をポックリ開けてここに佇むしかない

目の前の奏者は我が世界の中で
芸術の衣に身を任せ
僕をその世界へ手招きしている
ピアノの周波数は僕のこころに反響すると
奏者への尊敬なんてどこかへ消え
素敵な集中の顔に見惚れてしまい

だんだんピアノの音が深く突き刺してくる
もう奏者がピアノなのか
ピアノが奏者なのかわからないほど
一体化してゆく奏者とピアノ
そこから既成概念を鍵盤で
破壊してゆくエネルギーを発し
僕は孤独に落ちてゆく喜びに
ただカラダは冷めたく充実を得ている

現実の緊張は完全に奪われ
薄暗い小さな空間は
芸術のリズムが時間を止め
いつかどこかで感じていた安息の地に
ミルクのようにエスプレッソへ溶け込んでゆくようだ
脈打つ違和感さえもシナモンに変えて相乗してゆく喜び

日々の痛みを超えた先にある憩いは
僕のフラッシュバックを雨のように降らせて
カラダを包みながら
ピアノの響きは頭を突き抜けてゆく

深層にある豊かで冷たく輝く場所へ
そのクレージーな早弾きで

#詩

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