今年の読書(50)『神戸25メートルの絶望』西村京太郎(中公文庫)
Apr
14
少し息抜きの意味を込めて、タイトルに「神戸」が付いている西村京太郎の推理小説です。
観光会社の企画した「日本の異国」という神戸の街を巡る豪華ツアーに参加した6人の参加者の内、異人館巡りの観光中にひと組の夫婦が姿を消し、二日後に夫が半径25メートルの円の中心で「公開処刑」され、続けて妻も同じ状況の中で殺されてしまいます。
ツアーの参加者はみな阪神・淡路大震災で被害を受けている人たちばかりで、犯人の動機は倒壊した瓦礫のなかに両親が埋まり、通りがかった夫婦に助けを求めたが無視されたという逆恨みでの犯行なのですが、神戸市民としては違和感を覚えてしまいました。
あの状況下の中で、逆恨みを持つような心情は考えられず、やはり被災者でない作家の机上の発想だなと、いい印象は持ち得ませんでした。
限られた登場人物のなか、参加者の連絡先を知りえる立場と、仕事中のアテンダントの女性が異人館観光中に恋人に電話をする場面を重ね合わせますと、すぐに犯人が読めてしまう組み立てもいただけませんでした。