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- 今年の読書(135)『漂砂のうたう』木内昇(集英社文庫)
本書は2011年第144回直木賞の受賞作ですが、著者は2013年の『櫛挽道守』で、今年度の「第9回中央公論文芸賞」・「第27回柴田連三郎賞」・「第8回親鸞賞」を同時受賞しているということで興味を持ちました。
文明開化に踊る明治10年、根津遊郭にある「美仙楼」を舞台として物語は始まります。
武士の次男として生まれた26歳の<定九郎>は、厳格な武士としての教育を受けながら大政奉還により身分を失い、「美仙楼」の<立番>として客引きをしていますが、自分の将来が定まらない中、日々をやり過ごしています。
廓という閉鎖的な社会を舞台に、人気花魁の<小野菊>、噺家の弟子と称する<ポン太>、討伐を志願する賭場の用心棒<中公>など、複雑な人間関係が絡み、明治に始まる「自由・民権」の意識が芽生える社会を背景に、それぞれの人間模様が鮮やかに描かれている作品でした。
特に<美仙楼>を守る「妓夫」<龍造>の、履物の下駄を通しての人間観察眼が素晴らしく、まさに「足元を見る」という言葉がぴったりでした。
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