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- 今年の読書(137)『いとみち』越谷オサム(新潮文庫)
バツイチ女性<エリコ>が中学生の娘<エリコ>を育てながら、三味線の世界にのめり込んでいく 『ぎっちょんちょん』 も面白かったですが、この『いとみち』の主人公<相馬いと>は、祖母の教えのもと三味線のコンンクールで賞を取ったことのある16歳の高校1年生です。
人見知りを治すために<いと>が選んだバイトは、青森市にある「メイドカフェ」ですが、定番の台詞「おかえりなさいませ、ご主人様」が「おがえりなさい、ごスずん様」になるという祖母譲りの伝統的な津軽弁が抜けなく、ドジばかりを繰り返しています。
この祖母<ハツエ>は77歳ながらも、<ヴァン・ヘイレン>なども三味線でこなし、文中の台詞は「〇☆●ДИ・・・」などのように記号で表現され、なかなか個性豊かな脇役でした。
カフェの店長、アルバイトの子連れの<幸子>や漫画家志望の<智美>といった家族的な雰囲気のなか、突然オーナーが薬事法違反で逮捕されてしまいます。
先行きの経営があやふやな中、常連客の銀行員<青木>の算段で融資もうまくいき、リニューアルオープンで、<いと>は『津軽じょんがら節』の演奏を引き受けることになります。
「いとみち」というのは、抑える爪にできる弦の溝のことですが、主人公<いと>の名に通じ、それぞれの登場人物たちとの糸が絡み合うような人生の綾をも表現している表題です。
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