本書は『癌だましい』と、『癌ふるい』の2編が納められています。
『癌だましい』の主人公は45歳の<錦田麻美>、老人ホームに努める介護士ですが、同僚からは古参でありながら仕事ができないことにより「職場のガン」と毛嫌いされています。
ある日体調に異変を感じ診察を受けると「食道癌」のステージⅣだと診断されますが、死を恐れることなく一切の治療を拒否、ただひたすら好物の惣菜やデザートを狭窄部で食べ物が通らないのを知りながら、吐き戻しても戻しても食べ続け、食べることのみしか関心がない生活が壮絶感を持って描かれています。
『癌ふるい』は、<米山千波>が食道癌と診断されたことを知人たちにメールで連絡、それぞれの返信の文面に対して、「プラス40点」・「マイナス20点」と変身された文面に対して採点を付けています。
返信者の年齢、立場、環境により、それぞれの癌患者に対する考え方が読み取れて、面白い構成でした。
『癌だましい』は、2011年の第122回文學界新人賞受賞作品で、受賞決定の知らせからわずか一か月後に著者は亡くなっています。
作中の主人公たちと同じ食道癌のステージⅣで、病床で書かれた『癌ふるい』は著者の没後に『文學界:七月号』に発表されていますが、単なる癌患者の闘病記とは一線を引いた重みがありました。
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Posted at 2015-01-19 13:06
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Posted at 2015-01-19 17:14
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