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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(51)『あなたへの想い』矢口敦子(ハヤカワ文庫)

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今年の読書(51)『あなたへの...
札幌の大学に通う4年生の<関根真一>は、同じ大学の<篠崎明>とのデート中に、59歳の母<律子>が亡くなったことを携帯電話で知らされます。

呆然とする<真一>が心配で<明>も一緒に横浜の実家に戻りますが、そこは<律子>の弟の家で、22数年前に離婚して祖父母に<真一>の養育をまかせっきりの状態で、彼は母から疎まれていると感じながら育ち、大学生活中には一度も実家に帰省していません。

<律子>は暮らしていた離れで心筋梗塞を起こし孤独死でしたが、ノートパソコンに生前の気持ちをメモ書きしているのを<真一>は見つけます。「あいしている もういちどあいたい しんじ」という母が最後に残した名前は、離婚した夫<真彦>でもなく、自分でもありませんでした。再度母との距離を感じながら、東京に住む<明>の伯母である<宮下亜貴子>の部屋にノートパソコンを置き忘れて札幌に戻ってしまいます。

<亜貴子>は<律子>と同年齢で、やはり22年前に年下の<如月高輔>と別れ、予備校の英語の教師として独身を貫いていますが、残された<律子>のメモ書きを読み始め、自分の人生と見比べると共に「しんじ」が誰なのかを突き止めようとします。

母と子の重たい関係が主軸ですが、それぞれの登場人物たちの人生模様が描かれ、最後には「しんじ」の謎が解け、<真一>が前向きに人生の一歩を踏み出すラストに、一抹の明るさが見いだせました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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