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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(64)『氷獄』海堂尊(角川文庫)

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本書『氷獄』は、2019年7月に単行本が刊行され、2021年7月25日に文庫本として発売されています。

表題作を含む4篇が収録されていますが、圧巻はやはり表題作の『氷獄』でした。

全体的に過去の作品の登場人物やエピソードが絡んできますので、<海堂尊>ファンとしてはとても面白く楽しめましたが、さて、本書が初めてという方には、意味が分かりにくいかもしれません。

『氷獄』では、37歳にして弁護士になった「日高正義」が、手術室で行われた前代未聞の連続殺人事件『チーム・バチスタの栄光』(2006年2月・宝島社)での「バチスタ・スキャンダル」の被疑者「氷室」医師の国選弁護人となった活躍が描かれています。

有罪率99.9%を誇る検察司法の歪みに、「日高正義」が正義のメスを入れるのですが、ここで海堂作品でおなじみの厚生省技官の「白鳥圭輔」が絡んできます。

医療と司法の正義を問うエンタテインメントとして検察と対抗する弁護士としての「日高正義」がいいキャクターで描かれていましたが、最後に「氷室」が東日本大震災に紛れて仙台拘置所から脱走してしまいます。
刑務所内での健康診断と偽って、「氷室」に青酸カリの錠剤を渡した正体不明の女医も不明のままで、まだまだこれから続編が楽しめそうな伏線で、物語は終わっています。
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今年の読書(63)『羊の目』伊集院静(文春文庫)

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本書『羊の目』は、2008年2月に単行本が刊行されています。(文春文庫)での著者<伊集院静>の作品としては、『星月夜』『悩むが花』を読んでいますが、最近では、サントリーの創業者<鳥井信次郎>の生涯を描いた『琥珀の夢(上・下)』が印象に残っています。

本書は、昭和8年、牡丹の「刺青」をもつ夜鷹の女は、後に日本の闇社会を震撼させるひとりの男児を産み落とします。自分が見初めた男気のある浅草の侠客「浜嶋辰三」の女の家に捨て子として託します。児の名は「神崎武美」。女は病気のために亡くなりますが、その後「浜嶋辰三」に育てられた「武美」は、「親分」で育ての親である「浜嶋辰三」を守るため幼くして殺しに手を染め、稀代の暗殺者へと成長していきます。

実の「親」よりも、ヤクザ世界で出会い結ばれた「親」に絶対的価値観を見出し、これをかたくなに生を全うする男の一生が描かれていきます。

やがて縄張り争いで対立する組織に追われ、ロスの日本人街に潜伏した「武美」は、潜伏先の母娘に導かれてキリスト教に接するのでした。高潔で、寡黙で、神に祈りを捧げる、目の澄み切った殺人者でした。アメリカのマフィアのボスの庇護を受け、刑務所内で安全に25年大人しく過ごしていた「武美」は、25年ぶりに出所日本に戻った「武美」でした。

冒頭の、牡丹の「刺青」が全編を通しての大きな意味を持つ伏線となっており、夜鷹となる前の女が、破戒僧に生娘から僧の女にとなり、突然の僧との別れが、後半につながる壮大な構想に圧倒される、稀代の殺人者の生涯を描いた深い余韻を残す(443ページ)の大河長篇でした。
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今年の読書(62)『永田町小町バトル』西條奈加(実業之日本社文庫)

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著者<西條奈加>の作品として初めて手にしました。「第164回直木賞」で気になっていた作家です。

本書『永田町小町バトル』は、2019年1月31日に単行本が刊行、2021年6月15日に文庫本として発行されています。

日本の国会運営の状況や子育て環境の問題等、娯楽作品を超えた社会問題を丁寧に描き、ある意味教科書的に面白く読み切りました。

主人公「芹沢小町」は、〈現役〉キャバクラ嬢で小学生の女の子を持つシングルマザーという経歴で、「夜の銀座」のホステスさんたち専門の夜間の託児施設を立ち上げた行動力を買われて衆院選に出馬、元キャバクラ嬢として国会議員に見事当選します。

物怖じしないキャラクターがメディアで話題となり、働く母親達を中心に熱い支持を集めています。
ひとり親家庭、貧困、埋まらない男女格差。国際的にみてもかなり遅れた〈ジェンダー不平等国〉日本に、「芹沢小町」は、子供の貧困問題にからめ少子化問題・待機児童問題・離婚家庭の問題・養育費未払いの問題等の解決のため起死回生の作戦で日本に風穴を開けるべく奮闘する姿が、楽しめた444ページでした。

日本の現状を考えるのに適したテキストとしても十分に読み応えのある、政治エンタメの一冊でした。
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今年の読書(61)『罪なき子』小杉健治(双葉文庫)

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本書『罪なき子』は、2018年6月に双葉社より単行本が刊行され、2021年6月13日文庫本として発行されています。

著者<小杉健治>には、弁護士「鶴見京介」を主人公とするシリーズ『結願』などがありますが、本書も弁護士「水木邦夫」を主人公に据えています。法曹界物の法廷内での検事側との丁々発止のやり取りはなく、被告人との接見を通して、事件の真相を求めていきます。

東京都美術館のホールで凄惨な通り魔殺傷事件が起こります。「片瀬洋平」が次々と人を襲い、男女二名を刃物で殺害し、警備員等二名を傷つけて逮捕されます。
「片瀬」は22年前に強盗殺人事件を起こし死刑が執行されている「宗像武三」の息子で、加害者家族への嫌がらせのため、生きる希望を失い「国家が代わって私をころすべきだ」と犯行に及んだと供述しているのでした。

「片瀬」の事件への動機に興味を抱いた「水木邦夫」弁護士は、{ひとは本当に死刑になりたいために他人を殺せるものなのか、ひとを平気で殺せる人間が、なぜ自分で死ぬことができないのか}と興味を持ち、国選弁護人を断っている「片瀬」の弁護を無償で請け負うのでした。

事の発端である22年前の強盗殺人事件と絡み合わせて、{死刑判決が確定したときに、何かを仕掛けるのではないか}という疑問が付きまとう「水木」弁護士の地道な調査が始まります。
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今年の読書(59)『草笛物語』葉室麟(祥伝社文庫)

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今年の読書(59)『草笛物語』...
<葉室麟>の本書『草笛物語』は、第146回直木三十五賞を受賞、2014年に映画化(監督:小泉堯史)されました『蜩ノ記』に始まる豊後「羽根藩」を舞台とするシリーズの第5作目にあたりますが、2~4作目は『潮鳴り』 ・ 『春雷』 ・ 『秋霜』と続きますが、『蜩ノ記』の主人公「戸田秋谷」にまつわる物語ではないため、本書『草笛物語』が実質的な続編となっています。

羽根藩江戸屋敷に暮らす少年「赤座颯太」は、両親が他界したことにより、国元の羽根藩の伯父「水上岳堂」に引き取られ親友の薬草園番人を務めている「秋谷」の娘「薫」を妻とする「檀野正三郎」のもとに預けられます。

国元では藩の家督をめぐり、「颯太」の朋友である世子「鍋千代」改め「吉道」を押す派閥と日の輪様と呼ばれる横暴な「三浦左近」を後見人と見立てようする一派との対立が顕著になってきます。

『蜩ノ記』で「戸田秋谷」が切腹しての16年後に、「颯太」は国元に戻った藩主「吉道」の小姓として仕えますが、「秋谷」にまつわる複雑な人間関係を伏線に、泣き虫「颯太」の男として、武士としての成長を描き、武士社会の理不尽さを絡めながら、著者ならではのすがすがしさで、物語を終えています。

本来なら、「颯太」のその後を描いた「羽根藩」シリーズ第6作目が読みたいところですが、著者は2017年12月23日に66歳で亡くなられていますので、かなわぬ希望なのが残念でなりません。
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今年の読書(57)『茶筅の旗』藤原緋沙子(新潮文庫)

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今年の読書(57)『茶筅の旗』...
乱読をしていますと割とつながりのある作品と出会う機会が多いようです。<藤原緋沙子>の本書『茶筅の旗』は、徳川と豊臣の大阪冬の陣・夏の陣あたりが時代背景ですが、<澤田ふじ子>の『蛍の橋(上・下)』は徳川家勝利の後の時代が舞台でした。共に茶人「古田織部」が関わってきます。

「千利休」や「古田織部」などの茶人を主人公に据えた茶道関連の作品は多いのですが、本書は茶の元になる「碾茶」を扱う江戸初期の宇治の名家の生産業者を舞台として、お茶師を引き継いだ「朝比奈綸」を主人公に据え、戦乱の世に凜として立ち向かう、女御茶師のひたむきな半生描いています。

茶人「古田織部」を叔父として慕う朝比奈家の一人娘「綸」は父の跡を継ぎ、極上茶を仕立てる「御茶師」の修業に励んでいました。そこへ徳川・豊臣決戦近しの報がはいります。納品先として大名と縁の深い御茶師たちも出陣を迫られます。茶園を守り、生き抜くにはどちら方につくべきなのか。表題の「茶筅の旗」は、どちらにもつかないという意思表示の茶商の心を表しています。

時代に翻弄されながら茶園主たちの駆け引きを通して「綸」の茶商として、女としての成長を、お茶の生産過程を詳細に織り込みながら、史実に沿いながら描く劇的時代長篇小説として、面白く読み切りました。
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今年の読書(56)『世界はゴ冗談』筒井康隆(新潮文庫)

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今年の読書(56)『世界はゴ冗...
<筒井康隆>は、わたしが高校生の頃に神戸市垂水区に引っ越されてきたこともあり、当時はよく読んでいました。

新潮社の「書き下ろしシリーズ」の『虚航船団』はサイン会でのサイン本として本箱の中に埋もれているはずです。

差別用語事件で「断筆宣言」をされたということで著者の作品としては『文学部唯野教授』が最後になったでしょうか。神戸から東京に引っ越してしまったというのも、読まなくなった要因の一つだと思います。

また言葉遊びとしての、ブラックユーモア・ギャグ・ナンセンス・駄洒落に疲れてしまったのが一番大きな要因かもしれません。

本書『世界はゴ冗談』は、2015年4月に単行本で刊行、2021年6月1日に文庫本として発売され、全10篇の短篇が収められています。

幕開けは、<信頼出来ない語り手>などをはるかに凌駕する <まったく信頼出来ない語り手> による衝撃の超認知症小説『ペニスに命中』。ある染色体の消滅から激変する人類の近未来を哀切に描く『不在』。太陽の黒点の異常増加、電子システムのダウン、「お風呂が沸きました」「バックします」等の電子音声の異常、炸裂する異常の連続を描いて捧腹絶倒の表題作『世界はゴ冗談』。<午後四時半>を討伐に向かった男がやがて、高気圧を操る国家プロジェクトに巻き込まれていく『奔馬菌』。メタフィクションの先にある、世界初のパラフィクションに挑んだ『メタパラの七・五人』。

著者の面目躍如といった『三字熟語の奇』は、三字熟語2352をただ単に19ページに渡り羅列しているだけです。道徳的錯乱なのか文学的進化なのか、どの作品も著者ならではの10編でした。
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今年の読書(55)『蛍の橋(下)』澤田ふじ子(幻冬舎文庫)

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今年の読書(55)『蛍の橋(下...
『蛍の橋(上)』に続く『蛍の橋(下)』です。当初の単行本での刊行では分冊されていないのが、小気味よい展開で進んでいきますのでよくわかりましたが、読み終りの結末にはがっかりしてしまいました。

本書では、美濃焼の再興を夢見る陶工の「平蔵」とその許嫁の「お登勢」との関係と、徳川家に屈した豊臣家の元家人たちが、浪人40万人を結集させて徳川幕府に謀反を企てる人物たちとが交錯してゆく展開なのですが、読み手としては、標題にもなっています『蛍の橋』の意味は文中で理解できるのですが、「平蔵」と「お登勢」の恋物語は皆無といってよく描かれていません。

当時の茶の湯の状況や焼き物の状況は面白く読めましたが、「平蔵」の陶工としての結末を期待していただけに、肩透かしを食らった感で読み終えました。滋賀県の「湖東焼き」を扱った時代小説として、<幸田真音>の『あきんど 絹屋半兵衛』(2006年)は、丁寧な「湖東焼き」の歴史書としても秀逸でしたが、本書は、徳川幕府初期の時代背景が主体な感じで、陶工としての生き様を期待していただけに残念な終わり方でした。

許嫁の「お登勢」のその後の人生が、気になります。
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今年の読書(54)『蛍の橋(上)』澤田ふじ子(幻冬舎文庫)

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今年の読書(54)『蛍の橋(上...
今回の『蛍の橋(上・下)』は、1999年11月に単行本として刊行され、2002年8月に文庫化にあたり(上・下)の2分冊として発売されています。

大阪夏・冬の陣が結末を迎え、豊臣側の敗北で徳川の治世が始まった頃。名工「蔵右衛門」の孫「平蔵」は恋人の「お登勢」に支えられ、新しい美濃茶陶を復興させる夢をもって修行に励んでいました。

「平蔵」は許嫁の「お登勢」が奉公する京都の「久々利屋」を通じ、京都に陶芸の修業に出向く際、道中で「東庵」という謎めいた僧侶と出会い、強い信頼を感じます。

しかし、「東庵」には、徳川側に滅ぼされた「真田幸村」の嫡子〈大助〉であるという隠された顔がありました。『板倉籠屋証文』から浮かび上がった意外な新事実を元にして<澤田ふじ子>の目線で見つめる徳川幕府の政治体制、作陶芸術にかける男の野心、恋が描かれる予兆は感じ取れました。

著者の故郷である滋賀県の「湖東焼き」を扱った時代小説として、<幸田真音>の『あきんど 絹屋半兵衛』(2006年)は感動的でしたが、それにも勝る焼き物の世界が楽しめそうな幕開けを感じさせる上巻でした。
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今年の読書(53)『女副署長 緊急配備』松嶋智左(新潮文庫)

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今年の読書(53)『女副署長 ...
前作『女副署長』に続く2作目として『女副署長 緊急配備』が文庫描き下ろしとして2021年6月1日に発行されています。前作の完成度の高さに続編を期待していましたが、本作も前作の主人公「田添杏美」を据え期待通りの面白さで、緻密な構成の伏線も良く楽しめた作品です。

前作で起こった署内での不祥事で「田添杏美」副所長は、凶悪事件が長年起きていない、佐紋署に母を一人残して単身赴任で転任してきます。赴任早々、山間部で農協で詐欺横領事件で4年間刑務所に入っていた元組合長の「衣笠鞠子」が殺される殺人事件が発生します。おりしも緊急配備の最中。ほぼ同時刻、さらに事件が発生。被害者は尾行中の警官でした。18年ぶりの殺人事件の初動捜査に当たるのは、殺人事件の捜査が初めての彼らの地道な働きは事件解明につながっていきますが、帳場の指揮を取るのは、前作でも登場した県警本部の刑事「花野司郎」が登場、事態は思わぬ方向に展開していきます。

地方の小都市ならではの地元名士たちの協議会と警察の関係、農協と漁協の対立、「田添」警視と警官になりたての頃の駐在所勤務の上司「伴藤」巡査部長との確執、痴呆の父親の介護やシングルマザーなど様々な悩みを抱える警官たちの現状を背景としながら、署長代理の「田添」の存在感が光る一冊でした。

本作で登場した父親の介護のために残業の無い総務課勤務の「甲斐祥吾」と「野上麻希」巡査長が無事に刑事任用試験に通り、刑事として活躍する続編に期待していますが、今後もこの『女副署長』は続編が楽しみなシリーズになりそうです。
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