《 鎌倉市指定天然記念物“黄梅” 鎌倉瑞泉寺 ❖ 2023/02/28 ❖ 》
梅は、栽培起源が分からない程、遠い昔より親しまれている花木。
弥生時代前期頃から栽培され始め奈良時代には各地広まったと伝わる。
用途は、薬用・食用・観賞用と色々だが梅干し作りが多かったようだ。
大別すると、果実を収穫する実梅(みうめ)と観賞用の花梅(はなうめ)2種類。
新品種に関しては江戸時代以降、増え続け今では400種以上にも登る。
早咲きには、2月から花咲く冬至、寒紅梅、大盃(おおさかずき)等々。
ウメはアンズ(アプリコット)やスモモと同亜属、此等との交雑種も多い。
地元、鎌倉に’黄梅(おうばい)’と呼ばれる変わった容姿の梅の木がある。
花名の通り花が黄色っぽい而して小花、樹勢も弱く幹も細いのが特徴的。
この梅の木、鎌倉市の瑞泉寺(ずいせんじ)に江戸時代からあると伝わる。
日本植物学の父と称される牧野富太郎博士が’黄梅(おうばい)’と命名した。
本堂前庭に七本あるが、そのうち本堂右前(向かって左前)の古木一株が、
「オウバイ」として鎌倉市指定天然記念物に指定されている。
一般にいうオウゴンバイと別品種なのか別系統の同品種なのか等は不明。
見てみると、”咲き終わり花弁が散り黄ばみ始めた”状態に見えもする。
其の様に思い素通りする人が多い。が、間近で観察すれば満開状態と分かる。
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「黄梅」と云えば円覚寺塔頭の黄梅院(おうばいいん)が頭に浮かぶ。
黄梅院は、瑞泉寺の開山、夢窓疎石(むそうそせき、1275-1351)の塔所。
(実際の墓所は京都嵐山の臨川寺)
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瑞泉寺の”黄梅”が何かを表しているのだろうか、個人的には想い膨らむ。
黄色く熟した梅の実が悟りに喩(たと)えたのか。
中国の禅の聖地である黄梅県に関係しているのか、
黄色い梅の花(植栽の意図は不明)が、夢窓疎石を思っての植栽か等々。
寺社という場所は、文化の殿堂、と思うがゆえにである(私的感慨)。
オウゴンバイ・・オウバイ!?!
花弁が退化(雄蕊化)して小さめになった、それ故花も小さい(小輪)。
やや淡い黄色で咲き進むと色薄まると資料にある。
花弁が薄黄色、開花しても花中心部の雄蕊はくるりんと丸まった状態。
花弁が完全に退化してなくなった’酈懸梅、別名’茶筅梅’と同様、珍しい梅の木。
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「花壇地錦妙」(1695年)に黄梅、きうめ、おうばいとは別種とある。
黄金梅とは、花弁は普通で、葯の黄色が目立つものを言うに由。
鎌倉市指定天然記念物の瑞泉寺「黄梅」が有名すぎて本黄梅と言われもするが、
古くに記載されている「きうめ」なる表現を定着させてほしく思う。
「令和陸年(皇紀2684年)3月1日、記」