今年の読書(37)『花酔ひ』村山由佳(文春文庫)
Mar
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<麻子>は父<宗助>が病気になり30歳半ばで呉服店の『浅草ゆうき』を継ぐために会社を退社、祖母の残してくれたアンティーク着物を商売とする『遊鬼』を開店させます。
<麻子>は時代物の着物を買い取るべく<正隆>と知り合いますが、妻<千桜>とは違った女の性を感じ取った<正隆>は強引にもホテルの部屋に<麻子>を連れ込みます。
片や<誠司>は、ほの暗い過去の性癖を持つ<千桜>に初めて性の快楽を感じ取り、底深い官能の世界におぼれていきます。
4人が4人ともお互いに納得しての関係ならば、単なる夫婦交換の三文小説に終わるのですが、<麻子>一人が4人の関係を知ることなく、軽くなりがちな不倫小説に一抹の未来を感じさせる役割が光っていました。
<麻子>の祖母<トキ江>がいい脇役として登場、着物の衣装や作法、京都らしく貴船神社や安倍清明などの話題も散りばめられ、泥沼になりがちな男女間の心の機微の舞台として、うまく登場させていました。