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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(31)『日本農業への正しい絶望法』神門善久(新潮新書)

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今年の読書(31)『日本農業へ...
昨年、<真山仁>の 『プライド』 を読み、なんとなく今の日本の農業政策に疑問を感じていましたので、興味を持って読み始めました。

農作物を作らなくても、補助金が貰えるシステム自体に疑問を持ち、本当にいい農作物を作ろうとする農業家が育つのかと訝っておりましたが、まさにその疑問に答えてくれる一冊でした。

「エコ」や「有機栽培」、「製造者の顔写真」等の安易な宣伝を信用する消費者の行動を、かなり手厳しい口調で戒める内容です。
経済優先が横行し、安易な農地転用で利益を上げるシステムを作り上げる補助金行政の現状分析など、よく調べられています。

本来の野菜等の味が分からなくなった消費者に対する警告書として、意義ある一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(30)『あるキング』伊坂幸太郎(徳間文庫)

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今年の読書(30)『あるキング...
仙醍(せんだい)市を本拠地とする、万年最下位のプロ野球チーム<仙醍キングス>の熱狂的なファンの父と母のもとに、男児<王求(おうく)>が産まれますが、その日は<仙醍キングス>の監督がなくなった日でもあります。

0歳児から野球の英才教育を受けてきた<王求>は、高校時代までホームランバッターとして名を馳せますが、自分が暴行を受けた相手を<父>が殺してしまい、「人殺しの子」と噂される中、高校を中退せざるを得ません。

紆余曲折の生活の中、偽名を使い<仙醍キングス>にプロテストで入団、数々のホームラン記録を塗り替えてゆきますが、「人殺しの子」が活躍する姿に嫉妬を覚える監督がとった行動で、<王求>は・・・。

キーワードとしてシェークスピアの『マクベス』の言葉が散りめられ、同作品に出てくる魔女三人がいい味を添えています。

なんとも荒唐無稽な場面もあるのですが、ひとつのエンターティナメントとして楽しめました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(29)『何もかも憂鬱な夜に』中村文則(集英社文庫)

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今年の読書(29)『何もかも憂...
文庫本にして190ページ程の小説ですが、非常に重たい内容の一冊でした。

施設で育った<僕>は施設長の教えを心に刻みながら、高校を卒業後刑務官として働いています。
施設で一緒だった<恵子>と関係を持ち、同級生が高校卒まじかに自殺してしまう心の傷を背負い、また実在するか分からない「弟」のことに関して心を痛めています。
そんな<僕>は、夫婦二人を殺害し死刑判決を受けた18歳の<山井>を担当していますが、控訴期限が迫る中、どこか過去の自分と似ていることが気がかりになり、<山井>に対して自ら接していきます。

人間の本質とは何か、生きていくということはどういうことか、犯罪者の気質とは等、人間の存在そのものに問いかけながら、読者に迫ってきます。

生きてゆく上では必ず苦しくて「憂鬱な夜」はありますが、必ず明日が訪れるのも自明なことで、どんな時にでも希望は捨てるなという応援歌として読み切りました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(28)『恋する空港 あぽやん2』新野剛志(文春文庫)

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今年の読書(28)『恋する空港...
2013年1月17日からTBS『木曜ドラマ9』で放送されている、ドラマ化原作の2冊目です。
著者は立教大学社会部卒業後、旅行会社に6年勤務したあと、突然周囲に無断で失踪し、3年間ほどホームレス生活を経験しています。

<あぽやん>というのは、あぽ(APO)=「空港(Airport)」の略語から派生した旅行業界用語で、旅行代理店に籍はありながら、空港の案内係に移動した人々を指しています。
<あぽやん>について文中著者は、<ツアーの国内最後の砦となる空港所で、あらゆるトラブルを解決してゆくスーパーバイザーを、賞賛をこめてそう読んでいたが、いまでは空港でしか使えない社員、とでもいうような、見下した意味合いで使うことが多い>と、書かれています。

大航ツーリストに勤めるスーパーバイアーの<遠藤慶太>は、グァム支社から移動してきた新人<枝元久雄>の上司として受付業務を訓練させていますが、空港ならではのトラブルに巻き込まれながら業務をこなしてゆく姿が、連作の物語として6話収められています。

主人公の「僕」という表現と、<遠藤>という名前の使い分けが分かりづらい所もありましたが、著者の経験を生かした業界モノとして楽しく読めました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(27)『野蛮なやつら』ドン・ウインズロウ(角川文庫)

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今年の読書(27)『野蛮なやつ...
来月3月8日(金)から日本で公開されます映画『野蛮なやつら/SAVAGES』の原作本で、監督は<オリバー・ストーン>です。

親友同士の<ベン>と<チョン>は、カリフォルニアのラグナ・ビーチを拠点に大麻栽培で大成功を収め、幼馴染の<オフィーリア>となかのいい三角関係で結ばれています。

そんな折、主人の跡目を継いだメキシコの密売組織「バハカルテ」の女首領<エレナ>から、事業提携の話が舞い込みますが<ベン>と<チョン>は拒みます。
<エレナ>は部下の<ラド>を使い<オフィーリア>を拉致して、脅しをかけますが、<ベン>と<チョン>は策を練り<オフィーリア>を取り戻すために動き出します。

筋立てとしては、よくあるクライムノベルズですが、書かれている文体が「ラップ」ミュージックのごとく躍動感ある文章で引き込まれてしまいました。
原語で読めばおそらくスラングと略字のオンパレードで、これを訳された東江一紀氏の力量に敬意を表します。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(26)『ボーダー』大門剛明(中公文庫)

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今年の読書(26)『ボーダー』...
副題に<負け弁・深町代言>とありますように、弁護士を主人公に据えた法廷ミステリーです。

テレビでも人権派として有名な弁護士<深町代言>(38歳)は、自分の担当したある刑事事件をきっかけに東京を去り、司法修習生時代にお世話になった三重県伊勢市の弁護士事務所に腰を落ち着けます。

志は高いが裁判ではなかなか勝てない<松月>を所長とする外宮法律事務所ですが、新人の弁護士である姪の<中里実花>が、派遣会社の事務員を殺害した事件を担当することになります。

<深町>は、刑事事件から遠ざかるように民事事件で事務所の売り上げを伸ばしてゆきますが、新人の<実花>の一途な頑張りに、やがて手助けを行いながら事件の真相に迫ってゆきます。

伊勢市という弁護士の過疎化地域を設定しているのは、著者の出身地であるのが大きいようですが、伊勢神宮がらみの話題も入り、肩を張らずに読み終えれました。
<負け弁・深町代言>はシリーズ化され4冊出ているようですが、これはその第一作目に当たる文庫本書き下ろし作品です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(25)『プラ・バロック』結城充孝(光文社文庫)

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今年の読書(25)『プラ・バロ...
第12回(2009年)日本ミステリー文学大賞新人賞を、受賞した作品です。
神奈川県警機動捜査隊の女性刑事<クロハユウ>を主人公とする、警察小説ですが、また新しいヒロインの登場を予感させる作品でした。

港湾地区の埋め立て地に置かれた冷凍コンテナの中から、14人の男女の凍死体が発見され、睡眠薬を飲んだうえでの集団自殺と判明しますが、また別の冷凍コンテナから同様の凍死体が発見されます。
合同の捜査本部内の同僚の嫌がらせやを受けながらも、独自の発想と協力者のもと、事件の真相に迫って行きます。

物語の要となるのは、ネット上の自殺サイトの掲示板であり、また主人公<クロハ>自身が参加しているヴァーチャルな空間との絡みがリンクしており、ナイフでの連続殺人事件と並行しながら、悲しい結末を迎えます。

同じ<クロエ>を主人公の続編も出ているようで、<誉田哲也>の<姫川玲子>シリ-ズに続く女刑事として、目が離せません。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(24)『不連続の世界』恩田陸(幻冬舎文庫)

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今年の読書(24)『不連続の世...
主人公の<塚崎多聞>は 『月の裏側』 (200年3月刊行)以来の再登場で、5話の短篇からなる構成が組まれています。
小説をあまり分類するのは好みませんが、「ミステリー」の範疇なのですが、なんとも不思議な世界が広がる物語が展開しています。

<トラベル・ミステリー>との言葉が出てきますが、特定された地名や建物名称は出てきませんが、「ああ~、あれだな」と分かります。物語の重要な位置を占めるものでもないだけに、あえて伏せる必要性が感じられませんでした。

タイトル名の作品はなく、5話の共通性として著者の「不連続」に込められた意識が感じ取れます。

「不連続」という言葉に含まれている、当たり前に見ている視点や目線の断点や裏側を、意識させてくれる一冊です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(23)『暴力団』溝口敦(新潮新書:434)

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今年の読書(23)『暴力団』溝...
一般人(カタギ)としては馴染みのない世界ですが、高倉健や鶴田浩二などが主演した任侠映画やヤクザ映画などの影響で、暴力団を見る目に国民的感情として甘さがあるのは拒めませんが、やはり撲滅させるべき団体には違いありません。

著者は暴力団などを取り締まる窓口となる第四課などが無くなると、警察も困るとの皮肉を込めていますし、また「組織犯罪処罰法」は、暴力団の存在を認めたうえでの法律であると訝っています。

日本の暴力団だけでなく、アメリカの「マフィア」、香港の「三合会」、台湾や中国の「流氓(リュウマン)」等にも触れ、現在の状況を分析されています。
また警察は対象とはしてはいませんが、「半グレ」の団体として、暴走族上がりの関東連合OBなどの挙動にも一目置かれています。

この構造不況と諸法律等で暴力団は将来性がないと著者はみなしていますが、表社会から消え失せてしまうのかは、まだまだ確証が持てません。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(22)『トギオ TOGIO』太郎想史郎(宝島社)

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今年の読書(22)『トギオ T...
2002年から創設されたノベライス・コンテストの「このミステリーがすごい!」大賞も、昨年度まで11回を数えていますが、『トギオ』は2009年第8回の大賞受賞作です。

ミステリーというよりは、近未来のSF小説といった趣があり、謎解きを期待する人には馴染めない物語ですが、なんとも不思議な世界を味わえた一冊でした。

口減らしのために捨てられた<白>を家に連れ帰る主人公は、家族ともども村八分に遭い、学校でもいじめに遭います。
<白>の姉は、酌婦として売られていく状況は、100年前の日本を思い起こさせますが、「オリガミ」などという電子マネーや情報端末機としての先進的な道具が物語の鍵として登場したりして、読み手は年代設定を訝りながら物語を読み進まなければいけません。

「トギオ」は大都会「東暁(とうぎょう)」を表し、まさに映画『ブレードランナー』を想わせる貧富の格差の激しい象徴として比ゆ的に登場させ、唐突な結末に終わるのですが、印象に残る文章力で最後まで読まずにはおられませんでした。

荒削りなところあり、説明不足な印象もぬぐえませんが、作者の次作を期待してしまいます。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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