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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(86)『薔薇を拒む』近藤史恵(講談社文庫)

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今年の読書(86)『薔薇を拒む...
両親を交通事故で亡くし、施設で育っていた17歳の<鈴原博人>は、3年間働くと大学の授業料の面倒をみるという条件で、同じ17歳の<樋野薫>共々和歌山県の山奥の屋敷に住み込みで働き始めます。

屋敷には雇い主<光林康雅>の後妻<琴子>と先妻の17歳の娘<小夜>を中心として、<小夜>の家庭教師<角倉>、家全般の面倒をみている<中瀬>達が住んでいます。

身よりのない苦学生をなぜ<光林>は援助するのかわからないまま、<鈴原>と<樋野>は屋敷の雑用をこなす日々が続き、二人は<小夜>に惹かれていきますが、<小夜>は<樋野>に気があるようで、<鈴原>は黙って見守るしかありません。

そんなある日、池に浮かんだボートの中に<中瀬>の刺殺死体が発見され、また<小夜>の愛犬<桃子>が行方不明になるという事件が続けて発生します。

屋敷に住む人たちの複雑な人間関係が明るみに出るなか、<角倉>まで包丁で何者かに襲われ、<光林>が東京から戻ってきた夜に屋敷は放火され、事件は思わぬ結末に導かれて行きます。
最後の一行で本書のタイトルの意味が理解でき、読者を驚愕させる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(85)『すかたん』朝井まかて(講談社文庫)

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今年の読書(85)『すかたん』...
以前に読んだ著者の 『ちゃんちゃら』 は、千駄木町の庭師一家を描き、豊富な植物の知識に驚くとともに、これはシリーズにならないかと期待していましたら、本書が(講談社文庫)の3冊目として発行されていました。

本書も植物と関係する大阪天満の青物問屋を舞台に繰り広げられる、江戸時代を背景とする物語です。

主人公<知里>は饅頭屋の娘でしたが、美濃岩村藩の江戸詰め藩士の<三好数馬>と夫婦になりますが、大阪の赴任先で<数馬>は突然の病で亡くなってしまいます。
後家となった<知里>は、手習いの見習いで長屋生活を始めますが、江戸の気風の違う大阪の世界に戸惑うばかりで、ある日泥棒に入られ、夫との思い出の花簪まで盗られてしまいます。
家賃を払うこともできずに途方に暮れているとき、青物問屋「河内屋」の若旦那<清太郎>に声を掛けられ、奥女中として<清太郎>の母<志乃>に仕えることになります。

若旦那の<清太郎>は遊び人で数々のトラブルを起こし、父親から廃嫡を言い渡される立場に追いやられますが、いつしか<知里>は若旦那の行動に惹かれていくのでした。
本書も蔬菜として地場の野菜が数々登場してきますし、小気味よい大阪弁の展開(著者は大阪生まれ)で、大いに楽しめた一冊です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(84)『サヴァイブ』近藤史恵(新潮文庫)

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今年の読書(84)『サヴァイブ...
プロのロードレースを舞台とした第1巻目の 『サクリファイス』 と第2巻目の 『エデン』 に続く<サクリファイス>シリーズとして第3巻目が本書で、前二作の前日譚と後日譚の短篇が6篇納められています。

チームの「エース」を勝たせるために、多くの選手は「アシスト」に回るという、団体競技としての妙技があるロードレースですが、やはり実力が物言うスポーツの世界として妬みが渦巻く世界でもあります。

本書には『サクロファイス』の主人公<白石誓(ちから)>のフランスやスペインでの出来事とともに、「チーム・オッジ」内における「エース」<久米>と25歳の新人<石原豪>との軋轢、それを見守る3歳年上の<赤城直樹>との人間関係が見事に描かれています。

過酷なロードレースの先に、各選手が人間として何を感じ何を目標としているのかが、ひしひしと心に伝わる人間ドラマが楽しめました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(83)『東京湾海中高校』青柳碧人(講談社文庫)

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今年の読書(83)『東京湾海中...
千葉県沖の東京湾に10年前まで海中都市があり、「海中高校」を舞台に繰り広げられる、近未来青春小説です。

海流発電とシーコンクリートの技術の実用化の実験的な都市として海中都市が作られ、高校2年生の<木口夏波>は、海中都市で生まれ育ち、自分の故郷として愛情を持ちながら高校生活を楽しんでいました。

ある日エコと考えられていた海流発電が、東北沿岸の漁業に悪影響を出しているとの報道があり、<夏波>は信じたくなく、1年先輩の秀才<牧村光次郎>に問うと、それだけではなくイネ科の「ベアット」から採れるバイオエタノール「ベアトール」の残留物質が、海中都市の要であるシーコンクリートを溶かしていると教えられます。

本書は<夏波>の高校時代の話と、10年後に化学教師になっている<牧村>を校内新聞の記事のためにインタビューする<三原亜紀>との昔話で構成されており、先輩<牧村>に対する<夏波>の淡い恋心と、当時を追憶する<枚村>の想い出話しが交互に語られていきます。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(82)『盤上の夜』宮内悠介(創元SF文庫)

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今年の読書(82)『盤上の夜』...
文庫本のタイトルになっている『盤上の夜』にて、2010年第1回創元SF短編賞で選考委員特別賞(山田正紀賞)を受賞、第147回直木賞の候補にも挙がり、その後の短篇5作品を加えて2012年3月に単行本『盤上の夜』を刊行、本書はその文庫版になります。

本書には盤上遊戯・卓上遊戯にまつわる6つの物語が納められており、囲碁・チェッカー・麻雀・古代チェス・将棋に関して「わたし」というひとりのジャーナリシストの語り手の目線でもって、それぞれの競技や対局に臨む超人的な人物たちが何を考え、何を求めているのかを解き明かそうと試みられています。

表題作は中国で四肢を切り落とされた少女<灰原由宇>の囲碁の世界、チェッカープレーヤーとして40年間トップに君臨した<マリオン・ティンズリー>などの実話をもとに、また著者自らが麻雀のプロ試験の補欠になりながらプログラマになる経歴がありますが、見事なまでの麻雀の真理の追究など、麻雀や囲碁を嗜むわたしにとっては、史実に基づいた部分を散りばめたフィクション(SF)として、感動ものの展開が楽しめる中身の濃い一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(81)『名もなき花の』吉永南央(文春文庫)

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今年の読書(81)『名もなき花...
大きな観音像が建つ北関東の紅雲町で、珈琲豆と和食器の店<小蔵屋>を営むのは、65歳半ばでお店を始めた主人公<杉浦草(そう)>です。

<紅雲町珈琲屋こよみ>シリーズとして第1巻目の 『萩を揺らす雨』、第2巻目の『その日まで』に次ぐ第3巻目が本書です。

6短篇の連作で物語は語られ、第1話では珈琲豆を仕入れている「ミトモ珈琲商会」が先代社長が会長に付き、娘の<令>が社長になると聞き、今後の仕入れ値が心配でやきもきする<草>の話しからはじまり、新聞記者の<萩尾>の仕事を手伝って以来、彼が興味を持つ民俗学の恩師である<勅使河原>、その娘<ミナホ>、恩師の研究会の<藤田>達のギクシャクした関係に<草>は持ち前の好奇心を働かせて、何があるのかを突き止めていきます。

同時に、幼馴染の足の悪い<由紀乃>の体調を気にしながら、<由紀乃>の今にも崩れ落ちそうな隣家に住む元芸者<貴美路>のことを気遣い、紅雲町に起こる日常からも目が離せない<草>の面目躍如が楽しめる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(80)『この部屋で君と』朝井リョウ・他(新潮文庫)

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今年の読書(80)『この部屋で...
本書はひとつの住居を舞台に、二人で暮らすそれぞれの生活が8人の作家によって書かれているアンソロジーです。

納められている短篇作品は、<朝井リョウ> ・・・ 『それでは二人組を作ってください』  
<飛鳥井千砂> ・・・ 『隣の空も青い』   <越谷オサム> ・・・ 『ジャンピングニー』    <坂木 司> ・・・ 『女子的生活』      <徳永 圭> ・・・ 『鳥かごの中身』       <似鳥 鶏> ・・・ 『十八階のよく飛ぶ神様』   <三上 延> ・・・ 『月の砂漠を』  
<吉川トリコ> ・・・ 『冷や市し中華にマヨネーズ』 の8篇です。

各短篇の最初のページには、住所や面積・家賃・築年数・方位などのデーターと共に「平面図(間取り図)」があり、共同生活者たちの室内の動きを感じ散ることができるのに興味を持って読んでみました。

彼ができたということで取り残された女性、仕事で男二人で出向いたホテルは、なぜかツインの部屋だった先輩と後輩、女装趣味の果てに女子と住んでいた男、突然妖怪に住みつかれた在宅勤務者、13年の腐れ縁を清算した女等、ひとつ屋根の下で繰り広げられる物語が展開する一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(79)『ビブリア古書堂の事件手帳<3>』三上延

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今年の読書(79)『ビブリア古...
鎌倉の片隅にある古書店の美人店主<篠川栞子>を、主人公とする<ビブリア古書堂の事件手帳>シリーズも好評のようで、書店をのぞきますと現在6巻まで出ているようです。

興味ある古書にまつわる世界が舞台ですので第1巻目 ・ 第2巻目と読んできおり、暫く間が空きましたが第3巻目の『ビブリア古書堂の事件手帳<3>~栞子さんと消えない絆~』を手にしました。
この間に2013年1月~3月にかけ、フジテレビ系で<栞子>役を<剛力彩芽>としてテレビドラマ化されているとは、テレビを観ませんので知りませんでした。

本書も3篇の連作で、古書を中心に物語は進んでいきますが、やはり10年前に失踪した<栞子>の母<智恵子>との関係を伏線としながらも、古書にまつわる話題が満載です。

失踪した<智恵子>や、<栞子>とアルバイト店員<五浦大輔>との微妙な関係が、この先も気になるシリーズです。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(78)『卵町』栗田有起(ポプラ文庫)

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今年の読書(78)『卵町』栗田...
主人公<サナ>は、入院中の母<サラ>から「私が死んだら、ある人に知らせてほしい」との遺言通り、その相手<シイナ>が住むと教えられた「卵町」に会社を辞めて出向きます。

「卵町」は名称通り楕円形をしており、町の中は終末期を迎えた患者のための医療施設と、その従業員たちが静かに住んでいました。
個人情報の守秘義務が徹底されており<シイナ>の情報が判明せず、<サナ>は<シイナ>のことを探すために、女家主<スミ>のアパートに腰を落ち着けます。
散歩中に彫刻家の<エイキ>やその友達の<クウ>と知り合い、<クウ>の妻が昔お世話になった介護士が<シイナ>だとわかり、無事に母の遺言通り対面することができます。

いまはカウンセラーになっている<シイナ>から、看護師として働いていた母の過去を知り、わだかまりのあった母に対する気持ちが薄らいでいきます。

生命力あふれる<卵>という隠喩を用い、生と死をファンタジーの世界に取り込んだ一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(77)『インタビュー・イン・セル殺人鬼フジコの真実』真梨幸子

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今年の読書(77)『インタビュ...
本書は、前作の 『殺人鬼フジコの衝動』 を引き継ぐ内容で構成されていますので、刊行順に読まないとこのシリーズの面白さは半減してしまいます。

月刊グローブの編集室に、男女7人をリンチの果てに殺した罪で起訴された<下田健太>の母親<茂子>が独占インタビューに応じるという代理人と称する人物から連絡が入ります。
<下田健太>は裁判で無罪を言い渡され、内縁の妻<藤原留美子>は無期懲役の判決を受け拘置所内で自殺を遂げてしまいます。

検察側も2週間のあいだに控訴をしなければ<下田健太>の無罪が確定してしまうなか、月刊グローブ編集部の<井崎智彦>・<村木里佳子>、そして作家の<吉永サツキ>の3人で<茂子>の自宅に出向くのですが、なかなかインタビューに応じない<茂子>でした。

殺人罪ですでに死刑になっている<藤子>を中心とした複雑な血縁関係が絡み合い、前作の出来事を下敷きとしてマスコミの取材の裏側を垣間見せながら、驚きの結末に読者を引きずり込む一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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