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2001年『プラナリア』で第124回直木賞を受賞後、最初に書かれたのが『アカペラ』です。
6年に渡る病床生活の後に書かれた、『ソリチュード』並びに『ネロリ』の3編が、文庫本に収められています。
少女小説出身者を思わせる内容の『アカペラ』で、直木賞というのも納得できますが、そのあとの2編を読む限り、文学的な筆致を感じさせる文体だと感じました。
『アカペラ』では、中学3年生の<たまこ>を中心に、家庭崩壊と中学校を舞台に、揺れ動く少女の心模様が描かれています。
『ソリチュード』では、18歳で家出した<春一>が、親父が亡くなったのを機会に20年振りに実家に戻り、20年間の自分の生き方を見つめ直します。
『ネロリ』では、難病を抱えた弟<ヒデ>の為に、独身を通してきた50歳の姉<志保子>を中心とする縦糸と、<ヒデ>の女友達である<ココア>を横糸に、複雑に絡み合う家族問題を描いています。
どこにでもあるような市井の生活を通して、人生を見つめ直す視線を感じ取らせてくれます。
郵政民営化を舞台として、銀行業界と国との関係、民営化の裏舞台をさらけ出した経済小説です。
著者自身がおおて監査法人でメガバンクや国営巨大公社などの完酒券を持つ公認会計士ですので、フィックションとはいえ現実感ある内容でした。
三友銀行の社長(頭取ではなく)の山内豊明は、たたき上げの銀行マンでしたが、それゆえ内部事情に詳しく、国の銀行政策に対して反論し続けます。
金融庁等に目を付けられた山内は、郵政民営化後の社長の座を引き受けならざる立場に置かれますが、「最後の社会奉仕」だとの信念で、民営化に絡む利権の数々をあばき、アメリカの日本経済への目論見をさらけ出してゆきます。
もはやマスコミ自信が目を向けなくなった民営化問題ですが、検証すべき問題は多々あるようです。
<食べること、歩くことも仏教の実践>という、宣伝文句に引かれて手にしてみました。
著者は、1961(昭和36)年大阪府生まれ、浄土真宗本願寺派・如来寺の住職さんです。
難しい宗教書というイメージはなく、関西弁で小気味よく書かれていますので、読みやすい内容でした。関西人特有の、自分自身に突っ込みを入れながらの文章ですので、肩を張らずに読めます。
大学教授でもあり、随所に思想家や評論家の引用があり、雑学の収集としても役に立ちました。
仏教(宗教)というものを、漫画『ちびまる子ちゃん』の会話や落語家の故桂枝雀と桂ざこばのやり取り、『がばいばぁちゃん』の登場と、多彩な分析で興味を持たせるなど、学生相手の授業のつかみどころかなと読ませていただきました。
結論がでないのが宗教、改めて認識させてくれる一冊でした。
今年の読書(71)では、乾ルカさんの 『夏光(なつひかり)』 にいたく感動を覚えました。
そんなこともあり、今回は<乾>続きで、この文庫本を手にしてみました。
作家 <有川浩> さんを、男性だと間違われる人がおられますが、この<乾くるみ>さんは男性です。
高校時代の同級生同志、所長の古谷謙三と、手伝いの通称<俺>の井上(読み終わってから、下の名前がない意味がわかります)が解決してゆく6つの事件が、連作短篇集として収められています。
浮気や素行調査といった業務ではなく、所長の古谷が安楽椅子探偵よろしく、謎解きだけを専門とする探偵事務所です。
特に<File 3>として収められている『兎の暗号』は、秀逸です。
数字がらみの暗号を解いてゆきますが、手の込んだ謎解きの構成、読みながらうなりました。
著者は静岡大学の数学科卒業というのを後から知り、「なるほど」と納得です。
『事件簿1』とありますので、これからのシリーズが楽しみになりました。
著者は1970年札幌市に生まれ、短大卒業後、銀行員や官庁の臨時職員を経て、2006年に短篇『夏光(なつひかり)』で第86回オール讀物新人賞を受賞後、作家デビューされています。
この『夏光』は6篇の短篇から構成されいます。
初めて著者の作品を読みましたが、どのようなコメントを書こうかと悩んでしまいました。
内容がないという意味ではなく、どの短篇も素晴らしく、圧倒的な面白さと人間観察力の目線のつけ方に、言葉が出ません。
解説者の<香川ニ三郎>氏は、<”恐怖(ホラー)の女王” 降臨!>と、解説文の一行目に書かれています。
確かにジャンル的には「ホラー」的な要素が強いのですが、軽いノリでの使い方は控えたいレベルの高さの構成力です。
調べますと、この短篇集を含めてまだ5冊の著作しかないようですが、今後確実に頭角を現してくる作家だと感じました。
推理小説の短篇が、6篇収められています。
本格的な長編の推理小説ではなく、登場人物のセリフなどにユーモアがある掛け合いと、ギャグを織り込んだミステリーに仕上がっています。
主人公は、国立署に勤める<風祭警部>32歳で、「風祭モータース」の御曹司で、銀色のジャガーを乗り回しています。
部下には<宝生麗子>が「宝生グループ」のお嬢様の身分を隠して刑事として働いています。
この二人を中心として、密室トリック重視の殺人事件に臨むという設定ですが、事件を解決するのは、<宝生麗子>の執事役の<影山>です。
タイトルの『謎解きはディナーのあとで』は、捜査を終えた<宝生麗子>が食事をしながら、執事の<影山>に状況を説明、謎解きが完成するという流れで作品が仕上がっています。
本格的な警察小説のたぐいではありませんが、<謎とフェアープレーの精神>は守られており、ヒントは文中に隠されていますので、推理小説に慣れた人には、謎解きがしやすいかもしれません。
著者自らが「ベタ甘ラブロマ」という言葉で表現されている通り、男女の恋物語の短篇6篇が収められています。
しかも、この6編はどれも国防を預かる「自衛隊」を舞台に繰り広げられており、<自衛隊ラブコメシリーズ>の第一弾です。
表題の「クジラ」とは、海上自衛隊の潜水艦を表す言葉で、隠密行動で、一度出航しますと何カ月も帰還することなく、家族にも連絡が出来ない中での恋愛を、上手くまとめあげています。
どの作品も、片方か両方が「自衛隊」の立場の人間で、特殊な生活環境の中での恋愛を、ラブコメディータッチで面白く読ませてくれる一冊でした。
MCI(Mild Cognitive Impairment)、日本語訳では軽度認知機能障害の患者を相手に、記憶を取り戻す治療を手助けをしている作業療法士の<星純也>24歳と、紅茶専門店に勤める2歳下の<吾妻夏陽>の二人の恋愛物語です。
紅茶専門店「ブローニュ」に、彼が紅茶を飲みに来るのをきっかけに、恋人同士として付き合いが始まりますが、彼自身が「MCI」を発病してしまます。
自分の愛する人の記憶がなくなってゆく中で、夏陽はけなげに記憶を取り戻すべく手助けをしてゆきますが、ある日突然と彼は姿を隠してしまいます。
主治医や同僚、弟と複雑な人間関係を絡ませながら、ベタな純愛小説とは一味違う構成力で持って、一気に最後まで読ませてくれました。
後半部分で明らかにされてゆく二人の運命的な出会いの結末は意外性をもたせ、この先二人はどうなるのかは、読み手側にゆだねられています。
一冊の書物を手にするには、偶然という場合も多々あります。
著者には悪いのですが、この一冊もそうでした。
わたしの早とちりで、ソフトバンクの<孫正義>氏の分析本かと思い手にしたのですが、なんと「孫(まご)」に関する内容でした。
これも何かの縁かなと、読んでみました。
著者は、ニホンザルやアイアをはじめ野生動物の研究者ですので、自分の孫の成長を、同じ手法で観察した貴重な記録が綴られています。
動物学者らしく、孫と祖父母の関係は、単なる生物学的な関係を超えた。社会的・文化的な意味合いを分析されています。
少しばかりお孫さんの自慢的な記述も感じますが、目に入れても痛くないという孫の存在、単なる「子ども」として一段下に見るのが間違っているという考え方には、共感を持ちます。
作品自体は1959年に発行された警察(推理)小説ですが、<幻の傑作、新訳決定版>ということで読んでみました。
ストックフォード警察署長の<フェローズ>を主人公に、3人ほどの部下を引き連れて難事件を解決する、シリーズの第一作目です。
不動産会社が、金庫の現金は盗まれずに、賃貸契約書のファイルだけが盗難に遭い、やがて同社の管理する貸家から胴体だけの女性の柄死体が発見されます。
殺された女性の身元の確定もできず、これこそはと思われたわずかな手がかりも実ることなく、捜査は難航を極めます。
理論派の部下と対照的に、<フェローズ>はわずかな証拠に基づき、推理を重ねてゆくタイプとして、最後まで捜査を諦めません。
著者自らが述べているように、<謎とフェアープレイの精神>で書かれていますので、読み終わりますと「なるほど」と納得します。
小説の第1ページに出てくる挿絵としての「カレンダー」の意味が、ラスト3行のどんでん返しに絡んでくるのは、さすがとしか言いようがありません。
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