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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(60)『星落ちて、なお』沢田瞳子(文藝春秋)

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日本画家<伊藤若冲>の生涯を描いた著者<沢田瞳子>の『若冲』は、京都を舞台に秀逸な構成の作品でしたが、本書『星落ちて、なお』は、鬼才「河鍋暁斎」(天保2年4月7日〈1831年5月18日〉~明治22年〈1889年〉4月26日〉を父に持った娘「暁翠」の女絵師としての激動の時代を生き抜いた数奇な人生を描いています。

不世出の絵師、「河鍋暁斎」が亡くなります。残された娘の「とよ(暁翠)」に対し、早くから養子に出されたことを逆恨みしているのか、腹違いの兄「周三郎」は事あるごとに難癖をつけてきます。

「暁斎」の死によって、これまで河鍋家の中で辛うじて保たれていた均衡が崩れてしまいます。兄はもとより、弟の「記六」は根無し草のような生活にどっぷりつかり頼りなく、妹の「きく」は病弱で長くは生きられそうもないのでした。

物語は59歳で亡くなった「暁斎」の葬儀の夜から始まります。偉大な人物をなくすと、あとに残された人たちは大変です。「暁斎」が引き受けていた絵の依頼はどうするのか、多数の弟子たちの面倒はだれが見るのか、家や財産の問題も絡んできます。画業に没頭する兄「周三郎」との確執を抱えながら、「とよ」は現実に向き合い、父の画風を守ろうともがくのでした。

時代は明治から大正、急速に近代化・西洋化が進み、日本画壇も変化にさらされる。「過去の人」となった「暁斎」の画風を、「とよ」、「周三郎」はどう受け継いでゆくのか。日清・日露戦争、関東大震災を経て、日本社会はめまぐるしく変わっていく中、天才の影に翻弄されながらも、懸命に生きる女性の姿を描き出しています。
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今年の読書(59)『草笛物語』葉室麟(祥伝社文庫)

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<葉室麟>の本書『草笛物語』は、第146回直木三十五賞を受賞、2014年に映画化(監督:小泉堯史)されました『蜩ノ記』に始まる豊後「羽根藩」を舞台とするシリーズの第5作目にあたりますが、2~4作目は『潮鳴り』 ・ 『春雷』 ・ 『秋霜』と続きますが、『蜩ノ記』の主人公「戸田秋谷」にまつわる物語ではないため、本書『草笛物語』が実質的な続編となっています。

羽根藩江戸屋敷に暮らす少年「赤座颯太」は、両親が他界したことにより、国元の羽根藩の伯父「水上岳堂」に引き取られ親友の薬草園番人を務めている「秋谷」の娘「薫」を妻とする「檀野正三郎」のもとに預けられます。

国元では藩の家督をめぐり、「颯太」の朋友である世子「鍋千代」改め「吉道」を押す派閥と日の輪様と呼ばれる横暴な「三浦左近」を後見人と見立てようする一派との対立が顕著になってきます。

『蜩ノ記』で「戸田秋谷」が切腹しての16年後に、「颯太」は国元に戻った藩主「吉道」の小姓として仕えますが、「秋谷」にまつわる複雑な人間関係を伏線に、泣き虫「颯太」の男として、武士としての成長を描き、武士社会の理不尽さを絡めながら、著者ならではのすがすがしさで、物語を終えています。

本来なら、「颯太」のその後を描いた「羽根藩」シリーズ第6作目が読みたいところですが、著者は2017年12月23日に66歳で亡くなられていますので、かなわぬ希望なのが残念でなりません。
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今年の読書(58)『十三階の血』吉川英梨(双葉文庫)

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<吉川英梨>の本書『十三階の血』は、『十三階の女』『十三階の神』に続くシリーズ第3作として、2019年11月に刊行、2021年6月13日に文庫化されています。

警察庁の「13階」にある公安の秘密組織が『十三階』とよばれていますが、この組織は国家の異分子を排除すためには、ときに非合法な捜査も厭いません。この世界に、破天荒な女性捜査官「黒江律子」を主人公に据えたシリーズですが、本書ではその上司である「古池慎一」が主人公ともいうべき立場で〈驚愕〉の内容で、読者を最後まで楽しませてくれます。

通常シリーズ物は、単独でも楽しめるのですが、本作はあえて第1作目から読んでいただかないと感動の面白さが違うと思います。今年上半期の一押し作品でした。

成田空港建設反対運動と沖縄辺野古の埋め立て反対運動の歴史を複線として、班長の「古池」は過激派「第七セクト」の内偵に奮闘していました。十三階の本部長(校長)の「藤本乃里子」に頼まれて外交パーティーに出向きますと、そこには『十三階の神』事件で退職したとされているドレスにスニーカーの女、「古池」の恋人であり部下だった「黒江律子」がいました。公安のスパイ同士の恋愛・結婚、欲望と裏切りの幕開けです。

あとはネタバレになりますので、是非一読をお勧めしたい作品で、終わり方も〈驚愕〉でしたので、続編が楽しみなシリーズです。
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今年の読書(57)『茶筅の旗』藤原緋沙子(新潮文庫)

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今年の読書(57)『茶筅の旗』...
乱読をしていますと割とつながりのある作品と出会う機会が多いようです。<藤原緋沙子>の本書『茶筅の旗』は、徳川と豊臣の大阪冬の陣・夏の陣あたりが時代背景ですが、<澤田ふじ子>の『蛍の橋(上・下)』は徳川家勝利の後の時代が舞台でした。共に茶人「古田織部」が関わってきます。

「千利休」や「古田織部」などの茶人を主人公に据えた茶道関連の作品は多いのですが、本書は茶の元になる「碾茶」を扱う江戸初期の宇治の名家の生産業者を舞台として、お茶師を引き継いだ「朝比奈綸」を主人公に据え、戦乱の世に凜として立ち向かう、女御茶師のひたむきな半生描いています。

茶人「古田織部」を叔父として慕う朝比奈家の一人娘「綸」は父の跡を継ぎ、極上茶を仕立てる「御茶師」の修業に励んでいました。そこへ徳川・豊臣決戦近しの報がはいります。納品先として大名と縁の深い御茶師たちも出陣を迫られます。茶園を守り、生き抜くにはどちら方につくべきなのか。表題の「茶筅の旗」は、どちらにもつかないという意思表示の茶商の心を表しています。

時代に翻弄されながら茶園主たちの駆け引きを通して「綸」の茶商として、女としての成長を、お茶の生産過程を詳細に織り込みながら、史実に沿いながら描く劇的時代長篇小説として、面白く読み切りました。
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今年の読書(56)『世界はゴ冗談』筒井康隆(新潮文庫)

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今年の読書(56)『世界はゴ冗...
<筒井康隆>は、わたしが高校生の頃に神戸市垂水区に引っ越されてきたこともあり、当時はよく読んでいました。

新潮社の「書き下ろしシリーズ」の『虚航船団』はサイン会でのサイン本として本箱の中に埋もれているはずです。

差別用語事件で「断筆宣言」をされたということで著者の作品としては『文学部唯野教授』が最後になったでしょうか。神戸から東京に引っ越してしまったというのも、読まなくなった要因の一つだと思います。

また言葉遊びとしての、ブラックユーモア・ギャグ・ナンセンス・駄洒落に疲れてしまったのが一番大きな要因かもしれません。

本書『世界はゴ冗談』は、2015年4月に単行本で刊行、2021年6月1日に文庫本として発売され、全10篇の短篇が収められています。

幕開けは、<信頼出来ない語り手>などをはるかに凌駕する <まったく信頼出来ない語り手> による衝撃の超認知症小説『ペニスに命中』。ある染色体の消滅から激変する人類の近未来を哀切に描く『不在』。太陽の黒点の異常増加、電子システムのダウン、「お風呂が沸きました」「バックします」等の電子音声の異常、炸裂する異常の連続を描いて捧腹絶倒の表題作『世界はゴ冗談』。<午後四時半>を討伐に向かった男がやがて、高気圧を操る国家プロジェクトに巻き込まれていく『奔馬菌』。メタフィクションの先にある、世界初のパラフィクションに挑んだ『メタパラの七・五人』。

著者の面目躍如といった『三字熟語の奇』は、三字熟語2352をただ単に19ページに渡り羅列しているだけです。道徳的錯乱なのか文学的進化なのか、どの作品も著者ならではの10編でした。
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今年の読書(55)『蛍の橋(下)』澤田ふじ子(幻冬舎文庫)

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今年の読書(55)『蛍の橋(下...
『蛍の橋(上)』に続く『蛍の橋(下)』です。当初の単行本での刊行では分冊されていないのが、小気味よい展開で進んでいきますのでよくわかりましたが、読み終りの結末にはがっかりしてしまいました。

本書では、美濃焼の再興を夢見る陶工の「平蔵」とその許嫁の「お登勢」との関係と、徳川家に屈した豊臣家の元家人たちが、浪人40万人を結集させて徳川幕府に謀反を企てる人物たちとが交錯してゆく展開なのですが、読み手としては、標題にもなっています『蛍の橋』の意味は文中で理解できるのですが、「平蔵」と「お登勢」の恋物語は皆無といってよく描かれていません。

当時の茶の湯の状況や焼き物の状況は面白く読めましたが、「平蔵」の陶工としての結末を期待していただけに、肩透かしを食らった感で読み終えました。滋賀県の「湖東焼き」を扱った時代小説として、<幸田真音>の『あきんど 絹屋半兵衛』(2006年)は、丁寧な「湖東焼き」の歴史書としても秀逸でしたが、本書は、徳川幕府初期の時代背景が主体な感じで、陶工としての生き様を期待していただけに残念な終わり方でした。

許嫁の「お登勢」のその後の人生が、気になります。
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今年の読書(54)『蛍の橋(上)』澤田ふじ子(幻冬舎文庫)

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今回の『蛍の橋(上・下)』は、1999年11月に単行本として刊行され、2002年8月に文庫化にあたり(上・下)の2分冊として発売されています。

大阪夏・冬の陣が結末を迎え、豊臣側の敗北で徳川の治世が始まった頃。名工「蔵右衛門」の孫「平蔵」は恋人の「お登勢」に支えられ、新しい美濃茶陶を復興させる夢をもって修行に励んでいました。

「平蔵」は許嫁の「お登勢」が奉公する京都の「久々利屋」を通じ、京都に陶芸の修業に出向く際、道中で「東庵」という謎めいた僧侶と出会い、強い信頼を感じます。

しかし、「東庵」には、徳川側に滅ぼされた「真田幸村」の嫡子〈大助〉であるという隠された顔がありました。『板倉籠屋証文』から浮かび上がった意外な新事実を元にして<澤田ふじ子>の目線で見つめる徳川幕府の政治体制、作陶芸術にかける男の野心、恋が描かれる予兆は感じ取れました。

著者の故郷である滋賀県の「湖東焼き」を扱った時代小説として、<幸田真音>の『あきんど 絹屋半兵衛』(2006年)は感動的でしたが、それにも勝る焼き物の世界が楽しめそうな幕開けを感じさせる上巻でした。
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今年の読書(53)『女副署長 緊急配備』松嶋智左(新潮文庫)

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今年の読書(53)『女副署長 ...
前作『女副署長』に続く2作目として『女副署長 緊急配備』が文庫描き下ろしとして2021年6月1日に発行されています。前作の完成度の高さに続編を期待していましたが、本作も前作の主人公「田添杏美」を据え期待通りの面白さで、緻密な構成の伏線も良く楽しめた作品です。

前作で起こった署内での不祥事で「田添杏美」副所長は、凶悪事件が長年起きていない、佐紋署に母を一人残して単身赴任で転任してきます。赴任早々、山間部で農協で詐欺横領事件で4年間刑務所に入っていた元組合長の「衣笠鞠子」が殺される殺人事件が発生します。おりしも緊急配備の最中。ほぼ同時刻、さらに事件が発生。被害者は尾行中の警官でした。18年ぶりの殺人事件の初動捜査に当たるのは、殺人事件の捜査が初めての彼らの地道な働きは事件解明につながっていきますが、帳場の指揮を取るのは、前作でも登場した県警本部の刑事「花野司郎」が登場、事態は思わぬ方向に展開していきます。

地方の小都市ならではの地元名士たちの協議会と警察の関係、農協と漁協の対立、「田添」警視と警官になりたての頃の駐在所勤務の上司「伴藤」巡査部長との確執、痴呆の父親の介護やシングルマザーなど様々な悩みを抱える警官たちの現状を背景としながら、署長代理の「田添」の存在感が光る一冊でした。

本作で登場した父親の介護のために残業の無い総務課勤務の「甲斐祥吾」と「野上麻希」巡査長が無事に刑事任用試験に通り、刑事として活躍する続編に期待していますが、今後もこの『女副署長』は続編が楽しみなシリーズになりそうです。
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今年の読書(52)『鏡の背面』篠田節子(集英社文庫)

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今年の読書(52)『鏡の背面』...
本書『鏡の背面』は、2018年7月に集英社より刊行され、2019年「吉岡英治文学賞」を受賞した作品で、2021年5月25日に文庫本(1188円)として発行されています全一巻650ページの大作です。

同年代の作家ということもあり、『アクアリウム』をはじめ、『仮想儀礼』など実に緻密な構成で、背景に潜む社会問題、人間心理の描写に優れていますので、楽しみな作家の一人です。

本書も分厚い文庫本として、楽しみの時間が持続するかなと読み始めたのですが、いまひとつ着地点がはっきりしないまま読み終えました。

薬物やDVDや性暴力によって心的外傷を負った女性たちの施設「新アグネス寮」で発生した火災で、「先生」と呼ばれる「小野尚子」は2階に取り残された薬物中毒の女性「瀬沼はるか」と赤ん坊「愛結」を助けるためにスタッフの「榊原久乃」共に笑止してしまいます。スタッフがあまりに献身的な聖母と慕われた「小野尚子」にふさわしい最期を悼むなか、警察から遺体は「小野尚子」ではなく、連続殺人犯と疑われた「半田明美」だったとの衝撃の事実が告げられます。

10年ほど「新アグネス寮」にスタッフとして勤めていた「中富優紀」は、過去に「小野尚子」を取材したことのあるライター「山崎知佳」とともに、おそらく入れ替わったであろう20年前のすべての始まり、「1994年」に何が起こったのかを調べ始め、かつて連続殺人犯として「半田明美」を追っていたゴシップ記者「長嶋剛」にたどり着きます。

人間的に癖のある「長嶋」ですが、記者としてはすぐれており、彼の資料を基に「山崎」は、「小野」と「半田」の接点を求めてボランティアとして出向いていたフィリピンの教会まで出向き、「なりすまし」の真実を追い求めていきます。

老舗出版社の社長令嬢、さる皇族の后候補となったこともある優しく、高潔な「小野尚子」と連続殺人犯の希代の毒婦「半田明美」がなぜ「聖母」とまで言われる身代わりを20年間も演じ続けていたのかとの関係を追い求めるサスペンスが展開されていきます。

「半田明美」の誕生年著者と同じ昭和30年に設定しているだけに、事件の背景や社会情勢がリアルに描写されている印象でした。
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今年の読書(51)『地獄への近道』逢坂剛(集英社文庫)

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今年の読書(51)『地獄への近...
著者<逢坂剛>といえば、公安警察を舞台とした『裏切りの日日』(1986年7月・集英社文庫)に始まる『百舌』シリーズが、まず思い浮かびます。7作目となる『墓碑なき街』の次に完結篇として『百舌落とし』が(2019年8月)に単行本刊行されていますが、文庫本化を待っています。

さて本書『地獄への近道』は、かって小学校の同級生だった「斉木斉」と「梢田威」を主人公とするシリーズとしてお馴染み御茶ノ水署生活安全課保安二係の迷コンビがおりなす連作短篇が4篇納められています。

『影のない女』では、神保町に新たにできたバー「ブライトン」に、見回りと称してビールを飲みに入ったら、怪しげな女に遭遇、魅かれて後を付けると薬物取引の疑惑が突如浮上してきます。
『天使の夜』では、ラーメンブームにまつわるタウン誌の集金トラブルに始まる、女房を横取りされたヤクザの親分親子のトラブル劇。
『不良少女M』では、女子高生の夜の街での不審な行動をもとに、著者の将棋好きの一面が生かされた〈将棋ガール〉=<絵夢>との顛末、

最後は標題にもなっています『地獄への近道』、著作権の切れたノワール映画の上映にまつわる話題で、映画ファンとしては面白いネタふりに感心しました。

人気ユーモア・ミステリシリーズが5年ぶりにいきなり文庫化された第6弾でした。「笑撃の警察小説です!」が帯のコピーでしたが、<誉田哲也>の重厚な『国境事変』を読んだ後の警察小説としては、軽薄感が拭えない一冊でした。
#ブログ #文庫本 #読書

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