- Hashtag "#読書" returned 1796 results.
2007年に刊行された『松島・作並殺人回路』を、第一作目とする<私立探偵・小仏太郎>シリーズの第四作目が本書です。
元警官であり、東京都葛飾区亀有に<小仏探偵事務所>を構える<小仏太郎>を主人公とし、元チンピラの<イソ>こと32歳の<神磯十三>、今回チラシの求人募集で新しく加わった41歳の<シタジ>こと<下地公司郎>、24歳の事務員<エミコ>たちが市井の事件を解決していきます。
今回は中学教師44歳の<友阪周平>からの依頼で、教え子の15竿の<鳥羽奈月>とホテルから出てくるところを女性刑事だと名乗る<成田>に穏便に済ませるからお金を用意しろという脅しをかけられた調査から、事件は発展していきます。
そのころ高尾山の森林で女性の死体が発見され、また<石津智広>から妻<咲恵>の素行調査の依頼がありデートクラブに所属していることが判明しますが、その調査の過程で<成田>に関する接点を見出していきます。
<奈月>の複雑な家庭環境を絡めながら、重苦しい事件は解決していきますが、<奈月>の新しい人生のスタートが、読者に少しばかり安心感を与えてくれる終わり方でした。
旅行作家<茶屋次郎>シリーズは、1990年の『梓川 清流の殺意』で始まり、本書で切りのいい20作目になります。
『女性サンデー』に<名川シリーズ>を連載している<茶屋>は、遅い夕食を食べに出向いた際、自宅近くで火事に遭遇、飛び出してきた女性と入れ替わるように誰かいないかと屋内に入り、取り残された老人<島森>を助け出すのですが、なぜか<島森>は女性のことも助け出されたことも記憶していないと言い張ります。
<茶屋>は警察から放火犯と疑われ、<島森>が引っ越してくる前に住んでいた京都に出向き、自らの無実を証明しようと、「保津川」の取材を兼ねて出向いていきます。
地元「京洛日報」の記者<有吉沙知>と一緒に調べていきますと、<島森>の周辺では、お手伝いの19歳の<長沢小花>が保津川で水死体で発見、それ以前には<小花>の母親も行方不明になっていることが分かり始めます。
<茶屋>の女性スタッフである<サヨコ>と<ハルマキ>、『女性サンデー』の編集長<牧村>などの脇役もおとぼけで、気軽に読める旅情ミステリーでした。
日本海に面した海岸に制服を着用した海上自衛官<桐生直也>一等海尉の死体が上がります。
彼は前任の舞鶴基地から、小さな規模の浜松基地に所属している機雷掃海艇「おおしま」の乗員として、赴任してきた技術官でした。
捜査一課の26歳の新米刑事<溝口>は、捜査を命じられ自衛隊の警務隊の<柘植>と共に調べ始めます。警察も自衛隊も自殺として処理を進める体制に疑問を感じる<溝口>は、報告書の作成を伸ばしながら一人で基地周辺の聞き込みをはじめ、<桐生>以外にも、不審な自殺事件を突き止め、また同時に聞き取りを行った自衛官二人が死亡する事件が起こります。
<桐生>の未亡人<幸>との男女の関係に陥りながらも、自殺に見せかけた自衛艦の事件は<小寺>二等海曹が犯人だと突き詰めていきますが、彼は逃亡を図る途中機雷の爆破で亡くなり、事件の真相は闇に包まれてしまいます。
物語が終る最後の7行で未亡人<幸>との思わぬ展開が用意されており、「ん?」の疑問と共に<第一部>は終了です。
新刊本や番号が打たれたシリーズモノは、順番に読んでいればその著者の作品が順に読むことになりますが、書き下ろしでない文庫本の場合、必ずしも過去の発行順でなない場合が大様にしてあります。
この著者の場合 『新小岩パラダイス』 で「第三回角川春樹小説賞を受賞して作家デビュー、本書が2冊目になりますが、文庫本になったのは本書が先でした。
世界放浪の旅から帰国した30歳の<蔵川楽観>は、日本に着くなり早々、酒に酔って荷物を失くし、無料クーポン券付きのチラシに惹かれて阿佐ヶ谷のバー<ラプソディ>にたどり着くところから物語は始まります。
バーには自称発明家のマスター<八村>がいて、バーテンの経験を買われてその日から住み込みで働くことになります。
バーには、東大出身の34歳の自称作家の<川島>や歌手を目指す<リリー>など風変わりな常連客がいますが、<楽観>は彼らと共に阿佐ヶ谷で行われようとしている再開発反対の行動を起こしていきます。
<命に別状なければ、なんも問題がない>という心情の<楽観>と、個性的な登場人物たちとの交流をコミカルに描き、人生は捨てたもんじゃないという著者のメッセージがよく伝わる一冊で、奇想天外な進行でありながら楽しめました。
著者<伊集院静>としては、珍しく殺人事件を扱った推理小説は初めてだとおもいます。
浅草寺境内に年に一度開かれる行方不明の相談所に、岩手県から<佐藤康之>が23歳の孫娘<加菜子>の相談に訪れるところから物語は始まります。
そのころ島根県出雲市では、素封家に嫁いだ<滝坂由紀子>の元鍛冶屋職人の85歳の祖父<佐田木康治>が姿を消していました。
やがて東京湾の埋め立て地海岸で、若い女性と老人の遺棄死体が発見され、<加菜子>と<康治>だと判明しますが、二人の繋がりが分からず、疑わしき人物として<加菜子>の高校の先輩<高谷和也>が浮かび上がりますが、アリバイがあり捜査は難航を極めていきます。
片や宇部高専の同級生<宋建侑>・<乾康次郎>・<金本美智子>の人間関係が随所に盛り込まれ、殺人事件の背景が浮かび上がってきます。
殺人事件を扱う推理小説としては、刑事の活躍が主体になる作品が多いなか、地道な作業を続ける鑑識課の<葛西>巡査部長、捜査一課の<畑江>警部補の分析など、脇役の立場に回りいい味を出していました。
事件に隠された悲しい人間関係を主軸として、男と女の切ない友情と恋愛の交錯を根底に置き、読み終えた後でも登場人物たちそれぞれの叙情感がいつまでも心に響く作品でした。
アンソロジーとして、本をめぐる不思議な物語が8篇納められています。
アンソロジーのよさは、その作家独自の語り口や切り口を知ることができ、手軽にまだ読んでいない作家を知るには都合がいいので助かります。
本書には<栞が夢をみる>という副題が付いていて、<大島真寿実> ・ <柴崎友香> ・ <福田和代> ・ <中山七里> ・ <雀野日名子> ・ <雪舟えま> ・ <田口ランディ> ・ <北村薫> の短篇が収録されていました。
数人の作家が、「本」という形態が無くなった近未来を舞台にしており、預言めいたことが遠からず実現しそうで、本好きとしては悩ましい感じで読み終えました。
絵双紙本屋『紀の字屋』を舞台とする<切り絵図屋清七>シリーズとして、2011年7月に 『ふたり静』、同年10月に 『紅染の雨』 が文庫書き下ろしで発刊されていますが、第三弾を期待しながらそのままになっていました。
第三弾の本書が2013年2月に出ていたのを見逃したようで、ようやく読む継ぐことができましが、現時点で4作目はまだ発刊されていないのを確認しています。
『紀の字屋』に身を寄せている<おゆり>の幼友達<冴那>の勘定定所勤めの主人<坪井平次郎>が何者かによって闇討ちに合い、前作で勘定組頭の父<長谷半左衛門>も刺客に襲われましたが、何やら飛騨の御用材木に関して不正が行われている様子が、殺された<平次郎>の残した書置きでわかり、<半左衛門>は役目がら飛騨の調査に旅立ちます。
『紀の字屋』の売り子である13歳の<忠吉>の出生に関わる謎も解け、相も変わらず義兄<市之進>は長谷家の長男としての自覚が無く、妻の<織江>は実家に戻り、<半左衛門>は<清七>を正式な次男として届け出ます。
勘定組頭として<半左衛門>の不正取引の調べの結末、<清七>と<おゆり>の今後の関係等を残したまま、次巻に興味を残して読み終えました。
2011年3月、著者<三上延>により『ビブリア古書堂の事件手帳』が発刊され、第1巻 「~栞子さんと奇妙な客人たち~」、第2巻 「~栞子さんと謎めく日常~」、第3巻 「~栞子さんと消えない絆~」と、どれも連作短篇形式で物語は続いています。
神奈川県北鎌倉の簡素な住宅街でひっそりと古書店を営む美麗の<栞子>を主人公とし、客が持ち込む古書にまつわる謎を、博識の知識でもって謎を解決していきます。
本書は、上記のそれぞれの連作短篇に登場する実在の書籍の抜粋を、12冊分集めたアンソロジーです。
社会人になってから久しく読んでいない<夏目漱石>や<太宰治>・<宮沢賢治>など、懐かしく読み返しました。
面白いことに『ビブリア古書堂の事件手帳』は(メディアワークス)の発行ですが、本書は(角川書店)の企画であり、解説は著者の<三上延>が担当、表紙のイラストもシリーズと同じ作家の<起島はぐ>さんが担当されています。
<猫弁>シリーズとしてあと先になりましたが、第3作目の 『猫弁と指輪物語』 の前に出ている第2作目が本書です。
今年2月に第4作目、今月9月に本シリーズの完結篇となる第5作が文庫本で出ていますので、また順次読んでいきたいと考えています。
シリーズの逆読みですが、第3作目に続く全体構成の流れが登場人物たちの設定と共に、「なるほど」とわかる場面が多々ありました。
今回は「透明人間」と名乗る人物から<杉山>と名の付けられた「タイハクオウム」を助けくれというメールが届き、お人好しの弁護士<百瀬太郎>は相変わらずのマイペースで対処していきます。
本書で主人公である弁護士<百瀬>の経歴や、婚約者の<大福亜子>との関係がよくわかり、人情味あふれる内容で、最後まで楽しく読める一冊でした。
最後の最後まで作者の企みにはまり込んで読み終り「んん?」と考え込んでから、冒頭の「序章」の<正明はひたすら念を送る。テレパシーで会話が出来たらいいのにと思う>の意味が閃き、「おお!!」と唸る大きな余波に包まれる一冊でした。
語り部は<里谷正明>26歳です。高校を卒業後家具製作会社に勤める工員ですが、先輩の<紀藤>に誘われてスキーに出向いた際、大学院生の23歳の<内田春香>と知り合い、交際をするようになります。
デート中に見知らぬ中年の男から<春香>のことを<美奈子>と間違われ、男との会話から<パブ&スナック『シュリール』>に<美奈子は勤めていることを知り、気になり出向いて見ますと、確かに<春香>とそっくりな<美奈子>が降りました。<正明>は<美奈子>から、<春香>は一卵性双生児で生まれたときに離れ離れになった姉妹だと聞かされるのですが、<正明>は<春香>とは正反対の天真爛漫な<美奈子>に惹かれていく自分を恐ろしく感じ始めていきます。
最後の最後で読者は、<春香>との失恋で<正明>が自殺していたことに気づき、文中に<春香>が「霊媒が見える」と言った言葉の伏線が行かされる最後の場面に、感心すると共に戸惑いを隠せませんでした。
- If you are a bloguru member, please login.
Login
- If you are not a bloguru member, you may request a free account here:
Request Account