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本書(旧題『夏の光』)が単行本として刊行されたのは2007年7月、加筆修正されて本題の『青い約束』に改題、2012年8月に文庫本として発刊されています。
文庫本発行から3年経過しているにも関わらず、今年の新聞広告で「男がなける小説」というコピーが記憶に残っていました。
銀行系列の証券会社で債券部門のチーフアナリストとして過酷な日々を送っている<宮本修一>は40歳、偶然20数年前高校3年生のときに起こった「ある事件」を機に音信を絶っていたボクシング部の同期<有賀新太郎>と再会します。
本書は高校生時代の<宮本>の恋人<純子>と<有賀>を巡る青春時代の回想と、「人が幸福になれる経済の仕組み」を夢に描いて金融業界に身を投じた現実とのはざまに揺れ動く男心を見事に描き、中年に差し掛かる男が誰しも抱く喪失感を漂わせながら、読者に「親友」とは何かという基本的な問題を投げ掛けながら、人生後半に向けての再生と希望の物語で、確かに涙する場面が多々ありました。
著者自らのボクシングの経験と、日本経済新聞社の現役記者という強み生かして日本金融界の現状を細かく分析、骨太な大人の青春小説として感動の一冊でした。
<吉永南央>といえば、珈琲豆の小売りと陶器の販売を兼ねている「小蔵屋」を76歳で始めた<杉浦草>を主人公とした<紅雲町珈琲屋こよみ>シリーズが面白く、(文春文庫)として現在第三作目の 『名もなき花の』 までを読んでいます。
本種はシリーズ第一作目 『萩を揺らす雨』 に次いで文庫化(2012年2月刊行)され、短篇5篇を収録していますが、<杉浦草>シリーズでないので読み飛ばしていました。
本書を読み終り、改めて著者の力量に深く感動、面白く読み終えることができました。
納められている作品の主人公たちは、何気なく過ごしていた日常から、ある日不安を駆り立てられる世界へと引き込まれてしまいます。
5年間連れ添ってきた妻がある日姿を消す表題作の『オリーブ』をはじめ、一日早く退院したら家は妻の昔の彼のために家を売却されていた夫、野心家の彼が、自分の作品を個展に出していたことを知る作家、ある日夫を急性心不全で亡くした妻等、日常に潜んでいる出来事を通して苦悩する主人公たちを丁寧に描き出し、一抹の希望を与える終わりかたでまとめられています。
タフでクールな女性刑事<雪平夏美>シリーズとして、『殺してもいい命』 に次ぐ第4作目が本書です。
今月5日(土)には本シリーズを原作とし、<篠原涼子>を<雪平>役にした劇場版第3作目の映画『アンフェア the end』が公開され、人気を博しているようです。
前作で<雪平>は、腕と腹部に3発の銃弾を浴びた場面で終わり、気がかりな終わり方でしたが、本書では左腕が動かせなくなっていますが、無事に手術を終えています。
捜査一課から監察室に配属された<雪平>は、上司の<島津>管理官夫婦が殺害される場面に遭遇、左腕が使えない状況でまたもや負傷してしまいます。
連続するように、小児科医・小学校教師と殺され現場には「ひとごろし、がんばりました」とのメッセージが残されていました。
<雪平>は体の心配をする捜査一課当時の部下<安藤>共に、事件の捜査を進めていきますが、平行して娘<美央>の親権問題を抱えています。
劇場版では「the end」ということで映画としては最後のようですが、本書では愛娘との問題を残したままですので、シリーズとしての続巻に期待しています。
来る9月27日(日)は、今年の「中秋の名月」に当たりますが、満月は9月28日です。
多くのかたが「お月見」をされると思いますが、一献呑むとすればやはり日本酒が向いているようです。
MOOK版の雑誌ですので<今年の読書>に含むのはどうかなと躊躇しましたが、日本酒研究書として位置づけ「精読」しました。
関西版ですが最近の日本酒の傾向がよくわかり、関西の24種類をはじめ、全国119種類の飲むべき酒が掲載されています。
また居酒屋・立ち呑み屋情報もあり、前ページカラー版ですので、視覚的にも楽しめました。
主人公は25歳の<長瀬正志>、派遣先の会社が倒産し、その翌日には5年間同棲していた<香織>に貯金を持ち逃げされ、「どうでもいいや」と自殺しかけたところ、巨漢のオカマ<桂木泉>に助けられます。
<泉>は、新小岩にあるシェアハウス「枝豆ハウス」に<正志>を連れて行き、そこの一員として引っ越してきます。
そこは、年齢・性別・国籍の違う20代から50代の個性的な面々が住まい、「お金が無く、貧しくても自分の好きなことができれば」という感覚で暮らしていました。
捨て子として両親を知らない<正志>は、それでも彼らの考え方とは同調できずに、「お金」への執着が捨てきれず、ある日養護施設時代の仲間<八木士郎>と出会い、投資話でお年寄りをだます詐欺グループの仕事に関わり始めます。
25歳という多感な年齢の<正志>の金銭感覚と、人生の目的とを対比させながら描かれた本書は、若者への応援歌として面白く読み終えれました。
物語の舞台は、デモや暴動が世界的に激増する2020年代が設定され、各国は銃規制を緩和、日本にも銃火器が密輸されている社会環境です。
警視庁は対テロ対策として「特別武装強行犯捜査係」を新設、係長に「鉄砲塚」と呼ばれ銃器類に精通している<塚田志士子>を任命、渋谷で起きた自爆テロや浜松町での射殺事件の捜査に乗り出します。
<塚田>には、自爆テロを行う少年に対して射殺してしまうという暗い過去がありますが、それを跳ね除ける精神力で新たに起こる自爆テロを阻止していきます。
「武装強行犯捜査係」のメンバー達も個性ぞろいで、FBIからの出向者<ジョシュ時任>も、最後まで不審な立場として描かれていましたが、最後は納得の納まり方でした。
警視庁捜査一課の刑事<真崎航(わたる)>は、捜査事件を巡り不正を隠蔽した上司に暴力をふるい、処分されます。
しかし<真崎>の正義感と捜査能力を惜しんだ<天野勇司>刑事部長の計らいで、捜査範班に属さずに直接部長の命令で操作する「特命警部」となります。
ある日池袋署管内で内偵調査をしていた刑事<逸見淳>が2発の銃弾を受けて射殺される事件が発生、<逸見>は警察官の査察業務を担当しており、<真崎>は元刑事で今はやくざの<野中>を相棒として捜査に乗り出します。
半年前には、週刊誌に警察署内の裏金作りをリークした会計業務担当の<三橋>もクラブホステス<かすみ>とホテルで心中事件を起こしていましたが他殺とわかり、<真崎>は二つの事件が絡んでいると睨み、根気よく二人の周辺を洗い出していきます。
単独で行動する<真崎>の緻密な操作手順や、やくざの<野中>の強引な駆け引きが楽しめる、シリーズになりそうです。
主人公は、前作 『撃てない警官』 と同じ37歳の<柴崎命司>警部です。
前作で、警視庁総務部企画課係長職から部下の不祥事で綾瀬署の警務課課長代理に左遷されていますが、春の人事異動でキャリアの女性署長として36歳の<坂元真紀>警視が着任してきます。
現場経験の乏しい署長の考え方と、現場の刑事たちの考え方との擦れ違いが生じる職場環境の人間関係が面白く、本書には4話が納められていますが、タイトルにある表題作は4話目で、前半3話の事件を踏まえながら総集編的なまとまりを見せる構成で、第4話だけでも200ページを超え、読み応えのある内容でした。
署長を筆頭に、脇役陣として56歳の副署長<助川>、<浅利>刑事課長たちの振る舞いも人間的で、刑事でもない<柴崎>が現場に赴き、推理を働かせながら犯人逮捕に至る経過と共に、警察組織自体の人間ドラマにも興奮させられました。
女性署長<坂元>と現場の刑事たちとの軋轢の中、一人奮闘する<柴崎>との物語は、シリーズとしてまだまだ読み続けたい警察小説です。
「マミーポルノ」(=マミポル)という言葉を耳にして、主婦が読む官能小説のブームが世界的規模で起こっており、我が国にも波及していると聞き、それではと『ベアード・トゥ・ユー』(上・下)を読んでみました。
舞台はニューヨーク、SDSU(サンディエゴ州立大学)を卒業した24歳の<エヴァ・トラメル>は、広告会社に就職しますが、その会社のビルのオーナー<ギデオン・クロス>と初出社日に運命的に出会います。
彼は28歳で大富豪、誰もが振り返る美男子で彫刻のような肉体美の持ち主です。
共に過去に忌まわしい性的な経験がある<エヴァ>と<ギデオン>は、何かに取りつかれたように場所を選ばず、お互いを求め合います。
脇役として<エヴァ>にはバイセクシャルの同居人<ケアリー・テイラー>がおり、かたや <ギデオン>には<マクダン・ペレス>や元婚約者の<コリーヌ・ジル>などが登場、嫉妬と独占欲で揺れ動く男と女の心情が大胆に描かれていました。
主人公は19歳の<沢方佳人>、父親を早くなくし双子の弟妹のために大学進学を諦めて酒屋でアルバイトをしています。
勤めに出ており母親の代わりに、料理を始め家事全般をそつなくこなして生活をしていました。
ある日子供の頃からお世話になってた「小助川医院」がリノベーションをして、「シェアハウス小助川」となり、57歳で引退した二代目医院長<タカ先生>は母屋に住んでいます。
<佳人>は大家の<タカ先生>を始め、年齢も職業も違う男女6人との生活を通して、それぞれの人生に抱えている悩みに接しながら、自分自身の目的を見つけて「シェアハウス小助川」を、仲間に祝福されながら飛び立っていきます。
大家の<タカ先生>と居住人との間を取り持つうちに、<佳人>が大きく成長してゆく過程が、ほのぼのと描かれていました。
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