表題作の『マザコン』を含む、8編からなる短篇集です。
大人になった娘たちや息子たちから見た、母親へのさまざまな感情が交差する心の動きを描き、切ないまでの親子関係をさらけ出してくれています。
同性であるが故の母と娘の人間関係は、身体的な同一化が深く関わってていることを感じ取りました。この「母ー娘」の関係は、女性にしか描ききれないのかもしれません。
著者は各短篇の中で、その主人公たちが持つ母親というイメージを、徹底的にさらけ出してゆきます。
・・・おれと兄貴のランドセルなど、卒業アルバムだの、七五三の衣装だの、八年前に死んだ父親のネクタイの束など、そんなのどうでもいいものばかりがゴロゴロ出てきて、次第に気が滅入ってきた。
・・・潔癖症なうえ排他的で、猜疑心強く、人を信用せず、執念深い母の性質を、母の寝静まった台所で私たちは具体的に言い合った。そういう人が、慣習も常識も環境も違う場所で暮らしてゆけるはずがなかった
・・・私が結婚をしないのは母を見ていたからだった。結婚というものがいかに人を不幸にするか母にくりかえし教えられたからだった。
・・・私の母は週に一度電話をしてきては、定年後の父の立ち居振る舞いについて、放っておけば一時間は愚痴り、さらに放っておけば私に子どもを産む意思がないことを嘆き、自分の育て方が間違ってのかと言い募る。
それぞれの短篇に出てくる文章の一部ですが、どれもありふれた会話だと読み流してしまうのは、男性側からの目線でしかないように感じさせてくれる一冊でした。
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Posted at 2012-04-13 07:29
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Posted at 2012-04-13 23:34
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